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海水で身を清める【24.3.3】

・朝からまた雪が降り続いている。外に出ることを完全に諦め、ストーブにハードウッドを詰め込んで家を温める。

・新しく本を読み始める。「ゴールデン・スプルース」ジョン・ヴァイヤン(未訳)。ハイダグワイのゴールデン・スプルース伝説と伐採事件、失踪した犯人を追うノンフィクションだ。ハイダグワイを舞台にした作品なので、森や海といって自然の描写がとても勉強になる。

・ルームメイトのサシャは今日が誕生日だ。何をしたいかと聞くと「海に飛び込みたい!」とのこと。「海水でクレンジングしたいの」

・水着に着替え、暴風の吹き荒れるビーチに向かう。潮は引いており、海岸線はずっと向こうにある。ジャケットを脱ぎ、ふたりで海に走って飛び込む。肌に刺さるような冷たさだ。

・頭を一瞬浸すので精一杯。感覚の失われた両足でビーチを駆けてタオルを羽織り、サウナに走る。

・ルークの家のサウナには家を出る前に火を入れていた。ハードウッドが力強く燃え、サウナ室の室温は指数関数的に上がる。存在しているかもわからない足の指をじわじわと溶かしていく。

・35歳になった紗々に今年一年も目標を聞く。お金を貯める、歯科衛生士資格をとる。クロアチアにいく、とのこと。僕はビザを延長する、日々走る、本を出す、ということにしておく。

・一時間かけて3セットをまわし、十分に体を温める。

・晩御飯はフィッシュ・アンド・チップスにする。昼に解凍しておいたハリバット、タラ、サーモンをタロンがフライにし、僕はじゃがいもをひたすら切ってフレンチフライを揚げる。サシャはサラダ係。隣のルークとレイチェル、エレーナも誘う。

・ご機嫌なエレーナはずっと家の中を走り回り、サラダにドレッシングを大量にかけ、フライドポテトはまだかとひたすら捲し立てる。

・パンケーキミックス、IPAビール、チリパウダー、塩胡椒をまぜた衣は美しい黄金色であり、サクサク。一瞬で平らげる。エレーナも満足そう。

・レイチェルが作ってきてくれたブラウニーに太い蝋燭を突き刺し、ハッピーバースデーをうたう。エレーナが火を吹き消し、ブラウニーにチョコチップクッキーアイスをたっぷりのせていただく。あんなに魚フライとフライドポテトを食べたのに、甘いものはまだ入るから不思議。

・みな月曜日には仕事があるので、早めに解散。

・夜、一本映画を見る。「サーミの血」2017年のスウェーデン映画だ。来月にスウェーデン極北ラップランドを訪れるにあたり、先住民サーミ人の歴史を学んでおきたいと思い、鑑賞する。

・舞台は1920年台のスウェーデン。当時のスウェーデンでは北方先住民サーミ人は知能が低く文明に適応できないと考えられていた。子供たちは寄宿学校でスウェーデン語を学び、利用することを奨励されるが、「先住民は伝統的生活以外では絶滅してしまう」という謎理論で進学や就職を拒否され続けていた。そんな相反する政策のもとで、多くのサーミがアイデンティティ・クライシスに直面したのだという。

・サーミ人である主人公エレ・マリャは夏の間寄宿学校に通う。そこで目にしたスウェーデン人青年との出会いや、学校にやってくる人類学者の被験対象となるのを強要されることを通し、故郷を捨ててウプサラの高校に通うことを望むようになる。そんな彼女の逃避行を描く作品だ。

・スウェーデンの先住民政策は、もちろん日本のアイヌ・琉球民族に対するもの、カナダの先住民に対するものとは個々の政策において異なる。ただ根幹にあるのは「多数派による少数派への差別・同化・文化洗浄・文化盗用」だ。頭が痛くなる。

・今月末に飛び立つまで、もう少し時間がある。ちゃんとスカンディナヴィア極北についても勉強しておきたい。

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