小説「砂の器」を読む

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松本清張著「砂の器」を読んだ。

松本清張の代表作であり、ハンセン病に対する差別問題を扱った社会派ミステリー。

今までいろんな人がいいと勧めていた作品だけに期待して読ませて頂いたが、期待以上に素晴らしい作品だった。

今ではハンセン病は治療方法も確立されていて、後遺症を残すことなく完治できる病だが、昔は不治の感染病といわれ、顔や身体に症状が現れるため、病にかかった者は隔離され、家族を含め差別の対象となってきた。

このハンセン病の父の息子である男は、その宿命から逃れ、自らの運命を切り開くために、努力し、有名な芸術家になるのだが…。

読後はなんともやるせない気持ちになった。

2

自分が営む民間警備業の世界でもだいぶなくなってきたが今だに被差別の問題はある。

特に交通誘導は旗振りと馬鹿にされ、社会的に低く見られる傾向がある。

もちろん、ハンセン病患者の場合とは違い、いわれる側にも原因はあると思う。

例えば片側交互通行の誘導警備だと、態度が悪くいい加減な誘導をすれば、それだけ多くの車両運転者に迷惑をかけることにもなる。
だからそこらへんはキチンとしなければならないと思う。

でも、暑い日も寒い日も外で長時間立ち続ける仕事は見た目以上に過酷。
その上汚れやすい環境のため、時には泥だらけになりながらも、地域の交通環境のために命を削りながら誘導する彼らの意義をもっと伝えなければいけない。
それが警備業経営者としての仕事だと思う。

差別の根本には、無知と無理解からくるイメージによる偏見、“普通”でない者に対する不寛容、それに序列化や比較によって優位に立ちたい未熟な感情があると思う。

そういうものがなくなればよりいい社会になると思う。
地方の一警備業者として、微力ながらその実現の手助けをしていけたら、と思う。

映画版も名作名高いので今度見てみようかな。

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