終了時間を守れないことは無能と心得よ (少々辛口)

人前で喋ることを仕事として20年ほど経った私ですが、デビューは婚礼司会でした。
婚礼司会というのは、文字どおり結婚式や結婚披露宴の司会のこと。婚礼司会専門の司会者さんが多いですが、私は専門ではないので、たくさんある仕事の種類の中の一つが婚礼という感じです。

私がデビューした当時所属していた事務所の社長や先輩からは『司会とは・・・』といったことをたくさん教わったわけですが、その内容は大変厳しいものでした。その全てが今の私を形成し支えてくれ、20年間仕事を続けていられるのもあの時の厳しい指導のお陰以外何ものでもないと断言できます。
その内容は大切なことばかりなのですが、その中で一つ。
「司会の仕事で一番大事なことって何ですか?」と質問をした時、当時の社長はこう答えてくださいました。

「時間を守ることよ」

打ち合わせや現場に遅刻をしないことももちろんですが、それよりも司会者として大切なのは『終わりの時間を守ること』なのだと。

人の名前や肩書き、日付などを言い間違えないことなどももちろん致命的で重要度が高いのですが、そんなものは『コーヒーを頼まれたのに間違えて紅茶は出さないでね』レベル。それよりも終了時間を守ることが最優先なのです。

実際にはイベントや式典は舞台監督やディレクターが仕切りますし、婚礼でもキャプテンと呼ばれる人が進行を仕切ります。
司会者はその人の指示で進めていくので、司会者だけが時間を守ろうと頑張ってもそうはいかない場合もあります。
しかし、当時披露宴のお開き(終了時間)が予定時刻より遅くなってしまった場合は、キャプテンと司会者両者の責任だと言われて注意されました。当時の私は、司会者の責任だなんて言われるのはなんだかなぁ・・・と感じていましたが、ある時、事務所の先輩司会者の披露宴司会を見学させていただいた時に気づいたことがありました。

その披露宴は進行内容が盛り盛りで、スピーチや余興や演出がたくさんでした。列席人数も100名近くの大所帯です。この2つの条件を聞いただけでも司会者の方なら「30分落ちだな」くらいの予想をすると思いますし、ここでいかに遅れを最小限にとどめるかが腕の見せ所です。
しかしその先輩司会者は・・・とにかくよく喋る・・・。司会者が喋る、たった何秒かも積み重なれば5分にも10分にもなります。
これは仕事できない人がやりがちなのですが、喋ろうと準備をしてきたコメントがあると、それを喋らないと気が済まない。捨てられないのです。だから時間が遅れていても喋っちゃう。司会者にも責任があるという、わかりやすい例でした。
結果お開きは40分遅れ。案の定この先輩司会者は終了後めちゃ怒られていました。

秒単位で喋らなければならないことも多いので、秒単位で「尺」を気にしてしまうのも育った環境と職業病でしょう。
そんな環境で育った私は、時間を守れないことには今でもまあまあな勢いで内心ビクビクしています。もちろん完璧な人間ではないので100%はできていません。

そしてこれは司会だけではなく、研修やセミナーも同様です。私の中では、終了時間を守れない研修講師は(自分も含めて)無能判定です。
お金を払って参加する側が遅れたり早く退出したりするのはご勝手になのですが、意識の低い講師がいとも簡単に時間を延長します。

理由は様々です。
・伝えたいことがたくさんあったが1時間しか時間がなくて内容が盛り盛りだった
・参加者が思いのほか盛り上がったので流れで予定外のことも話した
・せっかくなのでサービスで延長した
などなど。
この理由の全てが、無能です。

・1時間ならポイントを絞って構成し1時間で話せるように準備しておく
・盛り上がったから延長していい、は論理破綻
・勝手な延長はサービスではない

その後にどんな予定が入っているのかは人それぞれ。皆が自分ほどヒマなわけではありません。
時間は命です。他者の命を勝手に浪費する権利は誰にもありません。
1時間っつったら1時間。1時間にまとめられない自分が無能なのです。
挨拶スピーチの時間は5分でお願いしますと言われたのに10分喋ってしまう人は、そこに集まっている人全ての命を5分間無駄に奪うことになります。

時間を守れなくてもしょうがないよね、なんて思っているうちは永遠にアマチュアです。


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