幼子の夢

昔から良く夢に見ていたのは地獄と戦争の夢だった。真っ暗の中、恐怖と悲しみに押し潰されそうになりならが死体の横を歩いていく。当事者として、または空の上から見守るように、私の存在はそこにあった。死にゆく人が助けを求めてくるが、私には何もできず、私も泣きながら母の姿を探していた。久しぶりに戦争の夢を見た。何か集団就職か学校の行事であろう。私は木造の建物の中で見知らぬ(夢の中では友人のような)人と談笑をしていた、しかし、場面が変わるとそこには死体と傷を負った人たち、落ちてくるものを確認したわけでもなく、何か明確に"された"と分かるものはなかったが「原子爆弾にやられた」と理解した。
今思えば毎晩のように見る夢が戦争や地獄であったのは私の生活そのものを表していたのかもしれない。母に蔑まれ、兄に殴られ怒鳴られ冬であろうと、夜であろうと、使いパシリをされていたあの頃、生きていることが辛いと感じていたあの頃。
夢の中でさえ「助けて」といえなかった幼い私を誰かが抱きしめて「こわかったね」「つらかったね」と声をかけてくれるだけで、それだけで今の私は何倍も救われたのだろう。

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