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クレナズム『SAKURAドロップス/面影』ディスクレビュー

前作のEP『Touch the figure』でシューゲイザー、ドリームポップの系譜にJ-POPを急接近させ、ポップスの可能性を格段に広げた彼女たちが、今度は宇多田ヒカルの00年代を代表する『SAKURAドロップス』のカバーに挑戦。バンドの更なる変化を予感させる意欲作が、両A面Singleとしてリリースされた。彼らが得意とするシューゲイザーのエッセンスを漏れなく配合し現代版にアレンジした『SAKURAドロップス』のカバーも勿論魅力的なのだけれど、もう片方の新曲『面影』をここでは紹介する。

儚い心象風景が浮かぶ和やかなコーラスから始まるイントロ、Bメロでは萌映の感傷的な歌声をなぞるように動くベースライン。《ふわり触れた温もりがずっと 愛おしくて》と歌うサビで存在感を放つのは、喪失感が押し寄せる「僕」の心を優しく包み込むリバーブを効かせた幻想的なシューゲイザーサウンド。失恋した日、一人で過ごす夜に再生しようものなら、きっと涙なしでは聴けないと思う。男女の別れを歌った切ない曲だが、恋愛のみならず、ふとした時に大切な人を思い浮かべながら聴きたくなりそう。

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