2020年代の就職活動 (2) --就職サービスによる就活の民主化とこれから--
はじめに
この記事は勝手に僕が 2020年代の就職活動 としてシリーズにしている記事群の中の一つであり、今回は就職活動でよくお世話になるリクナビとか、マイナビとかその他の就職サービスについて考える。
上の記事で就職活動を進める上での色々な前提の確認をしたが、今回はから具体的な各論の検討を始めていこうと思う。
優秀な人材を探す、或いは、いい就職先を探すというのは古来からの人間社会の重要な課題であり、昔から色々な手段で人は働く人を探したり、就職先を探してきた。 恐らく就職活動をする新卒の学生さんたちが思うよりかなり真剣である。何より国がハローワークを運営して職業のあっせんをしてることからわかるくらい就職というのは人間にとって重要なことであり、それに伴いビジネスも必然的に大きなものになっていく。
今回は就職サービスの必要性、その巨大化と今後のありようについて考えてみようと思う。
まず最初にいくらか論点を上げておこう。
日本の就職サービスというのは就職活動の効率化という観点から発生するべくして発生したもので、今の就職活動ではなくてはならないものである。そして、功罪あるが悪と決めつけるには効果が大きすぎる。
一番の効果は、内輪で閉じられていた求人と就職の探索先が広く広がったことで就職活動に参加するプレーヤーたちのゲーム参加条件がある程度平等化されたこと。
就活サービスは求人を打つ側にも大きな効果をもたらし、毎年各企業は莫大な費用を支払って就職サービスを使って求人活動をしている。
しかし一方で就職サービスを使った就活の他にもいろいろな就職のルートがあり、近年ではそれが多様化しているし、生成系AIの発展にどう対応していくかがキーになると考えられる。
就活とはある種の最適化問題である
従って、それぞれのプレーヤーはまず情報を仕入れることから始めなければならない。それが求人広告である。例えば、日本には 4000もの上場企業 (上場会社数・上場株式数 | 日本取引所グループ (jpx.co.jp) より) があり、そして未上場の会社まで含めるとその100倍程度はあると思われる。
その中で半年から1年程度の限られた時間の中で自分に合う企業を探して内定を勝ち取ることはできるかというと、おおよそそれは無理な相談だろう。我々は限られた人生を生きているので、全部の上場企業を片っ端から調べて、ES (言うまでもないがエントリーシートの略で、以後このように表記する) を書いて面接を受けることはできない。
そこでどうやって自分の就職先を決めてるかというと、恐らくみんな暗黙の裡に、 一番マシな就職先を探して、そこに採用されたらそこに就職している 。これは大学受験にしろ結婚にしろ住むところを決めるにしろ同じような観点で判断しているはずだ。わざわざ嫌いな結婚相手と結婚するわけもあるまい。そこで、みんなやはり気が付かないうちに自分の中での重要視するアイテムを決めて、それらに重みづけをして、一番マシな選択肢を選んでいる。
例えば、就職するときに重視する項目としては、 {給料、勤務地の希望度、職業の志望度、職種の志望度、内定の取りやすさ}とかいったアイテムを列挙して、就職活動をしていることと思う。そして、それぞれの項目には重みづけがされている。例えば勤務地よりも給料の方が重要度が高い場合は給料の重みが高かったりする。こうして、就職活動先の優先度を決めている。なお、こういうなんか数学っぽい定式化はできそうな気もするができなさそうな気もするので、別の機会に考えたいと思う。
いずれにしてもこうして優先度を求めて一番マシなところに就職していくのだが、問題は色々な事情でそれが本当の最適解なのかわからないことである。恐らく下の絵にかいたような悩みは誰しもが抱えることになるであろうと思われる。
さらには就職後も必ずしも就職した会社がいい会社だったとは限らない。何らかの原因で上司や同僚に恵まれない、仕事内容が思ったものと違うという理由で退職してしまうかもしれない。
しかし我々の人生は有限であり、無限回の就職活動はできないのでどこかで手を打たなければならない。すなわち、 人生における重要な決断が就職活動の最後に待ち構えている 。この決断というワードも現代社会を生きるにあたっての重要な単語である。
就活における悩みのタネ
我々人間は未来のこともわからないし、この世界のことも今この時刻において僕らのいる場所から宇宙の果てまでのすべての情報は、どうやら知ることができない。人間は有限の時間を有限の情報と資源を使って生きている。
したがって、上述の通り、就職先や従業員の採用でも、次のような悩みを抱えている。
求職者:
そもそも自分は全部の職種、職業の中からいい就職活動先を探せているのだろうか?
この就職先が最適かわからない。
採用者:
この求職者を採用するのが最適かわからない。
他にもいい求職者がいるのではないか?
これらを解消するためにあるのが求人斡旋であったり、就職サービスである。そして、それらは当初は求職者側は就職活動先の情報集約、求人側は求職者の情報集約、拡散のために使っていたが、その役割はどんどん変わりつつある。
ちなみに、こちらのサイトに就活サービスの歴史とか、人材派遣業の歴史が説明してあり、かなりわかりやすいのでご覧になるとよいかもしれない。
求人斡旋とか就職サービス
某ナビのような就職サービスのない世界を想像してみよう。そして世の中には10万人の求職者と、1000の会社がある。これらが一斉に就職先と採用者を探したらどうなるか。
その様子をダウンサイズして絵にしたのがこちらである。組み合わせの数はちょっと計算したくないくらいたくさんある。
ここで、色んな会社の紹介をしてくれる掲示板のようなものがあったとする。例えば求人広告とか、求人誌のようなものだ。そうすると、求職者も企業もその掲示板だけ見ておけばよくなる。その模式図がこちらの絵だ。
上の絵に比べて矢印の本数が減ったことがかわると思う。そして、この矢印の本数が減った効果は会社の数と求職者の数が多くなればなるほど有効に作用することは割と簡単に予想できるのではないだろうか。
ここでもう少しこの就職サービスのない世界を考えてみる。
求人広告のようなものが大っぴらに出るようになったのはかなり古く江戸時代にはあったということだが、例えばそれがない室町時代やもっと古い時代を考えてみよう。
人々は集落にまとまって過ごしていたが、集落同士の距離はそれなりに離れており、人々が働こうとするとどうしても集落の中で仕事を探すことになっていたことは想像に難くない。ところがここに求人広告のようなものが出てきて、ちょっと離れた隣村のことがわかるようになると一気に就職と採用のチャンスが広がる。
その時々の状況で村々の状況は変わることは想像に難くなく、景気のいい村景気の悪い村があるわけだが、つまり こうした就職サービスがあることで就職の機会が広がるとともに、人々の就職のときの条件もより平等になるといえるだろう 。こうした言い方が正しいかわからないが、 就職サービスがあることで親、地域の有力者に斡旋されての就職といった地縁関係に基づいた就職からより開かれた自由な就職市場が展開されるようになった 。これは人々が就職サービスの利便性を水か空気かのように感じていて、その有難さをなかなか理解できないから発生する状況だと思うのだが、 就活の民主化が達成されているのではないかと思う 。
これは決して大それたこと言っている訳ではない。
例えば、あなたが貧乏な街の出身で、父親は土方、周りの家も土方か職人、お母さんは食堂でパートで働いてるような家に生まれたとする。たまたまあなたは才覚に恵まれ、いい学校に行ったが、働きに出る段になって周りにはその学歴が要求されるような仕事をしてないので、そういう高度な仕事は紹介できないとなったらどうだろうか?果たして勉強をする気になるだろうか。つまり、求職者たちの仕事についての知識をかなり平均化してくれることで、平等な市場になっていることが効果として考えられるのである。
求職者から見た就職サービス
さて、就職サービスのご利益は何となくここまでで分かったと思うが、求職者側から就職サービスとはどのようなものなのか、どのように便利になったのかを簡単に振り返ろうと思う。簡単に振り返るっていうのは僕は最早就職サービスをほぼ使わなくても職にありつける立場になってしまい、ここ2、3年は使ってなくて勝手がよくわからないからだ。
メリット:
色んな会社の情報が一元管理されている。そして、自分の好みで色々な会社の絞込検索ができる。
ESとか履歴書を就職サービスの中で登録できる。PC上での紛失もないのでとても助かる。今更ローカルにワードファイルを保存する時代には戻れない。
意外なところだが、就職活動におけるプロトコールを教えてくれる。例えば、面接のときのノックは3回までとか、リクルートスーツの選び方とか、履歴書の書き方とか、ESの書き方とかいったものは教えてくれる人がいないとどうなるかというと、親や知人しか教えてくれないわけで、先ほど述べたように 周りが大企業に就職しないような境遇、即ち、ファーストジェネレーションの人にとっては大変ありがたいものだと思う 。そして僕はこれに助けられたところがかなりある。
デメリット:
会社検索が最早AIくんで色んなことをやる時代の代物ではないと思う。現状では多分、職種、業種、勤務とかいった条件で検索して、それで選ぶことになるが、もう少し表現力が大きく、深い検索ができないものかと思う。この点については有料パートに記載しようと思う。
よく就活の功罪のうち、罪の部分が取りざたされるが、僕はデメリットはほぼないと思う。
求人側からみた就職サービス
では企業の側からは就職サービスとはどのようなものか述べておこうと思う。これは普段は仕事を探す立場である学生さんたちは中々みることがないものであると思うので、それなりに貴重なものであると思う。前節と同じようにメリットデメリットを並べたいが、先に断っておくと、恐らく企業側のほうがより就職サービスから多くの便益を得ているように思う。
メリット:
色々な求職者の情報、就活の選考ステータスを一元管理できる。ESも履歴書も就活サービス経由で受け取れる。
一遍に色んな求職者にアプローチできる。これは会社の数より仕事を探す人の数の方が圧倒的に多く、仕事を探す人全部にアプローチするのがほぼ無理だが、就活サービスを使うとかなり多くの人に知ってもらえる。 これは本質的には求人を打つ方のためのサービスと言える 。
企業は一般的に応募してきてもらった求職者から選ばれる立場にあり、 どんな優秀な求職者にも応募者してきてくれないと入社してくれない 。従って、あの手この手で目立とうとする。そしてそのためにかなりの課金をしている。ここについてはこの節でもう少し述べようと思う。
上記に関連して、就活サービスの人たちがコンサルティングのようなことをしてくれることもあるらしい。
デメリット:
金がかかる。ひたすら金がかかる。しかし金をかけないで採用できないよりはマシなのだ。
そして、求人費用について相場を述べようと思う。こちらもちょっと個人的な話が出てくるので、ここから先は有料にさせてもらおうと思う。 また、これからの就職サービスのありようの予想についても少し述べている。興味のある方は是非有料パートもご覧いただければ幸いだ。
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