文学的再会
三年前。2018年のことだ。大学生でもないのに大学の図書館に行き、勉強していた。その大学の図書館は大学の学生が司書としてバイトをしていて、そのとき司書をしていた女性と仲良くなった。大学で本を借りるための図書館利用カードを作るときに仲良くなった気がする。Alexandrosの「adventure」が好きと言っていた。当時ワタリドリしか知らなかった僕にまた一つ好きな曲が増えたのをよく覚えている。
それから2、3回、食事を重ねて手を繋いでプリを撮った。ちなみに女性と手を繋ぐのはこの時が初めてだった。手繋ぎ童貞をこの女性に奪われたのである。その後もうまくいっていれば付き合っていたのかもしれないが、僕のメンタルが不安定になり、彼女からの連絡を無視してしまった。その後彼女に彼氏ができたことをSNSで知り、時は三年後、今に戻る。
今年の秋から僕は故郷の隣の県で働いている。まだ市内の立地を覚えてないため軽くサイクリングをしていたところ、ふと図書館に行こうと思った。市の図書館がそこそこ近くにあり、そこに向かった。向かう途中に聴いていた曲は、Alexandrosの「adventure」だった。秋にも関わらずなぜ聴いていたのだろう。この曲は八月の雨の日に聴く曲だろう。図書館に着いて本を借りるには利用者カードが必要だった。利用者カードを作るためにカウンターに行くと目の前に三年前の女性がその図書館の司書として働いていた。なんの因果なのだろう、運命の悪戯なのだろうと思った。「あのここに来るの初めてで利用者カードを作りたいんですけど、、」僕は彼女にそう伝えた。彼女は「かしこまりました」と言って作るのに必要な個人情報を書く紙が置いてあるところに案内してくれた。その瞬間思った。僕は彼女にとって忘れられた人物なのだろうと。思えば普通のことかもしれない。3年前にちょっと仲良くなっただけの関係だ。彼氏もできて自分のことなんて覚えてなくても自然だ。
でも僕はそれが悔しかったし、哀しかった。僕は迷った。adventureの歌詞にあるように「Hello Hello Hello以前どこかでHello Hello Helloお会いしましたか?」と聞くべきだったのかもしれない。
でも、それでもただただ呆然としながら紙とペンを握っていた。結局僕は彼女に「現住所が分からないからやっぱいいっすわ。」と言って紙とペンを彼女に返した。名前だけは紙に書いていたけどきっと忘れられているだろう。逆に言えば利用者カードを作らない限り、彼女と話すことができるかもしれないとまで考えていた。
しかし1時間後、僕はもう一度図書館に向かっていた。やっぱり言おうと思ったのだ。聞こうと思ったのだ。「俺のこと覚えてる?」と。人間忘れられることが一番悲しいのだ。図書館に入りカウンターに向かうともうそこには彼女は居なかった。別の人に司書は変わっていた。ここでもう一度会えないのはすごく酷く、文学的だと感じた。
それでも三年振りに会えた彼女は元気そうで僕は嬉しかった。司書になりたいと言っていた気がする。夢を叶えていたのだ。僕はこれからも図書館に行ったら彼女を探してしまう、そんな気がするけど、切り替えてやっていくしかない。恋なんて片想いのままの方がずっと綺麗で美しいと思うから。
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