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言葉の類似性kool エストニアの旅から

エストニアのタリン近郊の自然博物館を案内してくれた日本語ペラペラの現地ガイドさんが、学校をエストニア語でクール(kool)と言いますと教えてくれた。英語のスクールに似てますねと言うと、ちょっと微笑んで、似てますと言った。後で複雑な思いがした。在来語か外来語かということだが、学校という教育の根幹にあるものが、自国により創造されたものなのか、他の文明の影響で移入されたものなのか悩んだ。それは、文化的独立性に関わることだし、下手をするとエストニアの人を傷つけるのではと思えた。

似ているということでは、名前(namae)と英語のnameが似ている。まさか名前が外来語だと言う人はいないだろうが、偶然にしては気になる。

【名前】
google翻訳という便利なアプリがある。これで名前を外国では何と言うのかを見ると、nから始まるものが多い。

アイスランド語 nafn
ラテン語 nomen
イタリア語 nome
カタルーニャ語 nom
スペイン語   nombre
スウェーデン語 namn
デンマーク語 navn
フランス語 nom
ドイツ語 name
オランダ語 naam
ウクライナ語 nazva
エストニア語 nimi
チェコ語 název
ギリシャ語 ónoma

ヨーロッパ系以外では、
アフリカーンス語(オランダ語から派生) naam
ハイチ語 nom
シンハラ語(インド・イラン語派) nama
ヒンディー語 naam
ネパール語 Nama
モンゴル語 ner
ミャンマー語 narmai
マレー語 nama
インドネシア語 nama
インド・ヨーロッパ語族に多く、その影響を受けたものもある。東南アジアのいくつかの言語は、日本語に似ている。

名前"i"で始まるものも多い。
バスク語 izena
セルビア語 ime
ブルガリア語 ime
ボスニア語 ime
ロシア語 imya
マケドニア語 ime
マルタ語 isem 
ズールー語(南アフリカ) igama
トルコ語 isim
韓国語 ileum
ハワイ島 inoa
サモア語 igoa
マオリ語 ingoa
東欧、ポリネシア、トルコ、韓国とある。

「名前」は、言葉の基幹的な部分に入るから民族の系統に関係すると思う。ポリネシア語族の類似性は顕著。この一語で他を推し量ることは、慎重であるべきだが、垣根の隙間から文字通り垣間見る面白さがある。

【学校】
これに対して、学校は、文化的用語なので、民族間の交流により影響するものだろう。同じように、google翻訳から諸言語を見てみた。

学校は、漢字文化圏の中国語、韓国語は共に学校で、読みはそれぞれXuéxiào、haggyoである。

sから始まるヨーロッパ語族
ラテン語 schola
イタリア語 scuola
アイスランド語 skóla
アイルランド語 scoil
ギリシャ語 scholeío
オランダ語 school
スコットランドゲール語 sgoil
ウェールズ ysgol
ドイツ語 Schule
ロシア語 shkala
スウェーデン語 skola
ジョージア語 sk’ola

sから始まるヨーロッパ語族以外
スワヒリ語 shule
アフリカーンス語 skool
ジャワ語 sekolah
クメール語 sala
インドネシア語 sekolah
マレー語 sekolah

kから始まるもの
エストニア語 kool
フィンランド語 koulu
ハワイ語 kula
マオリ語 kura

+k、c
スペイン語 escuela
フランス語 école (ラテン語scholaをエスコラと発音し、やがてs脱落)
バスク語 eskola
ハンガリー語 iskola
トルコ語 okul

バルト三国
エストニア語 kool
リトアニア語 mokykla
ラトビア語  skola

sは発音しにくく、また消えやすい。フランス語のようにエスに変わり、やがてsが無くなっている。エストニア語のkoolは同例かと思える。トルコ語のokulもラテン語scholaの変化と言ってよいのか、興味深い。ヨーロッパからの影響は有ったのだろうか。

ポリネシア語族
ハワイ語 kula
サモア語 aoga
マオリ語 kura
サモア語だけが、異なるのは、教育の歴史が違うのだろうか。

その他
ヒンディー語 vidyaalay
ネパール語 Vidyālaya
トルクメン語 mekdebi
アラビア語 madrasa
シンハラ語(スリランカ) pāsalē
タミル語 Paḷḷi
ミャンマー語 kyaungg
タイ語 Rongreīyn
ベトナム語 trường học
ハイチ語 lekòl

インドやアラビアという大文明の足跡が「学校」で分かるかと思ったが、ヒンディー語とネパール語の類似性だけだった。

名前については、インド・ヨーロッパ語族のn―m―と日本語、インドネシア語のnamaの類似は、単なる偶然なのか、言語発生の合理的理由(na.noが言いやすい?)があるのか、結局分からない。

学校については、ラテン語scholaに由来する例が多く、西洋文明の影響力を感じる。また、似ていて否なるものもあるかも知れない。東洋の学校を好例として、独自の言葉を持つ国も多く、この違いは、ヨーロッパ文明との関わり方の相違なのか、興味深い。

以上、エストニアの自然博物館の現地ガイドさんが教えてくれたエストニア語で学校をクール(kool)という思い出から始まった言語空想である。














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