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孫の手
どこで買ったのだろう。20センチ程の長さの孫の手がいつも机の上のペン差しにある。
この孫の手という微笑ましい名前からこんなことを想像してしまう。
年を取ると皮膚のバリアが壊れ、乾燥や暑さに過敏になり、痒みが出てくる。身体が硬くなり、若いときのように背中のかゆい所に手が届かない。側で遊んでいる孫に背中を掻いてくれないかと頼む。孫は祖父の頼みにはよく言うことを聞いてくれる。「おじいちゃん、ここ?」とやさしい孫は言う。「いや、もうちょっと左だ」と祖父。息子や嫁は仕事や家事で忙しい。幼い孫に頼むのが丁度良い。
二世代が同居する、こんな光景が当たり前だった。だから、孫の手と言うのだろう。こんな小さな道具の名称から、昔の家庭の姿まで想像してしまう。今の世には決して生まれなかった名前だなと感じている。
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