私は、何にでもなれる。
私は、自分の人生のまま「違うだれか」になる感覚を楽しんでいる節がある。だから、演劇で自分とは全く違う性格の人物を演じてみたいと感じることがあるのだ。
人は、生きているうちに違うだれかに代わって生きることはできない。心臓が動き出してから息が止まるその一瞬まで、自分の体のまま生き続ける。
だからこそ、私は人間を知りたいし、自分とは異なる生き方をした他者になって生きられる演劇の世界が好きだ。
そして、違う自分になれるわけではないけれど、それに代わって、違う世界へ導いてくれる存在である香りものも好きだ。
残り香まで楽しめるお香や、自分に振りかける香水、一瞬でおしゃれな空間にしてくれるアロマまで様々ある。
今日の気分で香りを分散させると、一見当たり前のようにそこにある私の部屋が、香りによって別の場所に私をいざなってくれるように感じる。
白檀のお香を焚いたら、そこはお寺の中のように神聖な場所になり、
アロマの蒸気と共に、まるで緑あふれる樹木の中に溶け込んだよう。
落ち着いた香水をつけると、どこか艶っぽいような、私の憧れる気品ある女性に私を変化させてくれるので、一日のふるまいにもそれが反映されることだってある。私は、基本的に一人でいることの方が好きだ。だからこそ、部屋の中はいつだって何かしらの香りが漂っていて心地がいい。
どれだけ、私の心がストレスでいっぱいになってしまおうが、これだけは忘れないでいたい。
いつだって、好きな世界へ連れて行ってくれるものがあるということ。
私の「好き」は誰にも邪魔されないということ。
私は、何にでもなれるということ。
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