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世田谷区。あとアパート。

東京都東側のアクセスが悪いところには独特の風情がある。



都民ではない方からすると、「東京にアクセスが悪いところってあるの?」「アクセスの悪いところって東京なの?」という疑念を抱きがちなものかもしれないけど、あるものはある。前回言った通り、一枚岩ではない。



例えば世田谷区の街なんて特にそんな感じだ。あのあたりは都心を回るJR山手線、千葉~三鷹間を結ぶJR総武線、東京から高尾までを走るJR中央線のうち一線も通っておらず、あの辺りに用事ができると渋谷から井の頭線でのんびり行くか、新宿から小田急小田原線で行くとかするのだ。下北沢はバンドマンが大量に群生していると聞くけど、少なくとも別方向の2線が走っているならなんだか納得だ。



(※路線については筆者の主観で書かれており、あんまり信用できたものではありません。住んでいればなんでもわかるというわけではない)



早く街の話がしたい。細かいところは飛ばす。

例えばメチャメチャ有名であるところの下北沢を見てほしい。別窓でGoogle Earthを開いてほしい。見てくれ。駅前すぐのところにオオ◯キがある。しま◯らもある。まず渋谷や新宿ではお目にかからない光景だ。息づいているのだ、人が。



新宿や渋谷や、秋葉原の駅前はマンションや巨大デパート、タワーレ◯ードこそあるが、意識して探さないと商店のようなものは少ない。秋葉原はちょっと外れれば意外とポロポロあったりするが、渋谷、新宿、銀座、五反田なんかだとやっぱりスーパーマーケットはあんまり印象に残らない。五反田なんてあまりに肉焼く施設が多すぎて大通りのスーパーの存在を一目で感知するのは至難の技だ。なんであんなに肉焼いてるんだあそこ。好きなのか、肉。



そんな都会と肉の喧騒から少し外れ、小田原線に乗り下北沢で降りたとする。想像してほしい。駅から出ると、びっくりするくらい空が開けている。ビルの谷間から見上げる切れ切れの空もいいけど、開けた空もまた良い。

少し歩けば、オオ◯キがある。道ですれ違う、幸せそうな親子につられて振り返ると、明◯義塾がビルの一角を占めている。そっち方面に少し行けばアイ◯ルの大きな看板がある。摩天楼は空のずっと向こうだ。ここにあるのは赤い壁みたいなアパートと、背の低い住宅街だけ。狭い道を自動車が通り過ぎていく。



想像する。黒いスーツの男。173cmくらいで、顔はまだ少し幼さを残してるけど、立派なサラリーマンだ。世田谷の小さなビルで行われた取引先との話し合い(今時、対面)が早く終わって、都心にある会社は遠いということで、東小金井に住む上司と久我山で解散。アパートがある下北沢で降りると、絶妙な夕焼け空。まだ水色のところと、じんわり滲むみたいなオレンジが、仲良くじゃれあってる。なんだか肌寒くなってきたし、陽が落ちるのも早くなってきたなぁ、なんて考えてると、さっき連絡を飛ばしてた彼女から、携帯にメッセージ。『一緒に買い物いけますか?』とだけある。頷く代わりに『いいよ』とだけ返信。今日は木曜。週末まであと一歩とはいえ、なんだか妙に疲れた今日の取引。文字だけのチャットじゃなくて、なんだか彼女の声を求めてしまう。ちょっと自信なさげで、気を抜くと聞こえなくなってしまうような、彼女の声。夕焼け空は段々と暮れていく。あぁきっと間に合ってくれよ、と男は思う。綺麗な長い髪と、華奢な身体は、きっとあの青とオレンジの空に溶け込みそうなくらい似合うんだろうな。そんな珍しい君の姿を探して、目線は人たちの中を泳ぐ。ゆっくり、ゆっくり、交差点を行く、思い思いの歩行者たち。みんな、この街で生きているんだと思う。きっとこんにちはと言えば、こんにちはと帰ってくる。ホントの意味での他人なんて、きっと何処にもいない。

緑色のカーディガンを着た彼女が、横断歩道の向こうで、控えめに手を振ってる。控えめに振り返す。なんだか面白くて、二人とも笑ってしまう。青になれば、歩き出す。なんだかひどく愛おしい、恥ずかしげな彼女の瞳を見ていると、ここで抱きしめてしまいたくなってしまう。そしたらどんな顔をするかな、と、想像する。



抱きしめたいといえば、Mr.Childrenの新しいアルバム、良かった。



何の話してたんだったか。

人の生活が息づくところっていうのはなんだか暖かくていいよねという話だ。



下北沢に限ったことじゃないけど、こういうところの住宅街は良い。駅前から少し歩いて住宅密集地に入ると、まばらながらにがっしりしたアパートが見られて、ついふらふら迷い込みたくなる。住宅間が狭すぎて日光が入ってきにくいからか、ベランダが斜面になっているアパートとかもある。あそこから見る夕焼けは美しいだろうか、と想いを馳せる。



(※日が暮れてからはともかく、まだ昼間の内からこういうところをウロウロしてると、犯罪防止の観点から積極的な声かけ運動を受けることがたまにあるので、やめたほうがいいです)



東京には人の温かみがないとか、無機質だとか、テンプレートすぎて最早聞かなくなってきたことだけど、都市部から流れ出した人の温かみって世田谷区みたいなところで見つかるんじゃないかな、と僕は思う。前述したようなことを思ったり、言ったりしている人が、何を基準として温かいとか、無機質とか言っているのか、僕にはわからないけど、人が住むアパートがポツポツと立っていたり、通りを人が歩いていたり、隣に人がいるっていうのは、とても有機的で温かいことじゃないんだろうか。灯りが点いたアパートの窓の中に、ひとつの生活が宿っているということは、とても幸せで、尊いことなんじゃないだろうか。



実際のところ、僕個人の考えも完全にまとまるまで至ってないから、なんだか曖昧な感じになってしまった。次回はもっと自分の考えと、述べたいことを正確にして、誰かにこの気持ちを話したいと思う。



あと、前回スキしてくれた方々ありがとうございました。励みになります。



書き足りないけど、書きすぎたので、今回はここまで。

(三楼丸)

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