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【アニメレビュー】 SSSS.GRIDMAN 後半に向け振り返る記事 【あと雑感】

マニアックな人気を誇っている印象があった電光超人グリッドマンのアニメ化が発表されて確か半年と少し。大急ぎで電光超人グリッドマンを履修したのが2、3ヶ月前。アニメのあまりの怪獣特撮リスペクトっぷりとしっかりした面白さに腰を抜かしたのが6週間前。

『SSSS.GRIDMAN』は6話を終え、折り返し地点だ。後半への準備も兼ねて、良かった点や諸要素を振り返っておきたい。

・アクション面

アニメ化した特撮というと、まずGAROアニメ三部作を思い出す。GAROは特撮版(冴島親子や道外流牙)とは別の、牙狼の称号の継承者たちを主人公としており、作風や時代も作品によって異なる外伝的立ち位置の作品だ。中にはモーションキャプチャを使った殺陣もあったらしいが、とはいえ特撮、というよりはアニメ的な演出や殺陣が多く、GAROというブランドの根強さと広がりを実感させる仕上がりだった。

対して今回アニメとなったグリッドマンは非常に『怪獣特撮的』な演出が目立つ。

街をゆっくりと闊歩する怪獣。グリッドマンの着地と共に巻き上がるアスファルト片。ジャンクやアクセプターの設定も継承し、「これは電光超人グリッドマンなんだぞ」という熱意を画面からヒシヒシ感じさせる今作は、さらにロボットアニメ(特に勇者シリーズなど)の要素も多分に加えられており、好き勝手やっている風でありながら、原作はもちろん他作品へのリスペクトを欠かさない、不思議な空気感を作り出すことに成功している。

怪獣プロレスや演出、カメラのアングルは特撮的でありながら、アシストウェポンを初めとしたキメのシーンはアニメ的な演出で締めてくる。SSSS.GRIDMANのアクションは非常に気持ちがいい。特撮とアニメのいいところをバランスよく詰め込んだよくばりセットの様相だ。


・ストーリー面

ストーリーも電光超人版を踏襲しながら、ところどころアップデートが図られている。

主人公の裕太は記憶喪失だが、正義感が強い。内海はオタク気質で的確な解説を挟んでくれる。電光超人版では一平やゆかに操作されるだけの存在だったアシストウェポンたちは文字通りキャラ立ちし、裕太たちに戦闘非戦闘問わず協力してくれるから驚きだ。彼らが新世紀中学生の称号を持つのは、グリッドマンと共に戦うのはやっぱり中学生たちだから、という理由だろうか。

個人的に「なんか形容しがたいけどいいな」と思ったのは六花の立ち位置だ。六花は実家のリサイクルショップにみんなが集まるため、グリッドマンや新世紀中学生らと自然と面識がある。別に彼女がグリッドマンたちに協力的であるかと言われるとわりとそうでもなく、まさに「友達って感じじゃないけど、知り合いではある」という立ち位置なのだが、記憶を失う前の裕太とは何か面識があったっぽい。

彼女が纏うちょっとミステリアスでありながらアットホームな雰囲気は、友人のそれよりも家族のそれに近い気がする。そしてそんな裕太はふんわり六花に惹かれている。お前記憶失う前も絶対好きだったやつじゃん。それっぽい理由がないのがそれっぽいんだよ。裕太かわいい。すき。

次々現れる怪獣は、倒すと人々の記憶から消え、壊された街も元どおりに。しかし怪獣に殺された人は既に死んだことになってしまう。グリッドマンに導かれ、裕太たちは人々を脅かす怪獣と戦う。そして怪獣を倒していく中で、世界の真実に気がついていく……みたいな流れが第6話までだ。

・救済か 応報か

今回の武史枠(武史枠?)は新条アカネという非常にヤバい奴。時折カーンデジファー様の過激なアイデアに「やりすぎじゃないですか」と口を出しては洗脳光線を撃たれていた武史と違い、新条アカネは今回のカーンデジファーポジションであるアレクシスの言葉など全く受けず、時には気に入らない人間を殺すために、時にはグリッドマンを撃破するために怪獣を作って送り込む。誰かが口を出すことも無く、彼女自身が十分に邪悪なのだ。アレクシスは彼女を褒めるくらいのものである。

第六話ではアカネが世界の神であり、街を壊しては直していることがアノシラスの口から語られる。アカネが作った世界がSSSS.GRIDMANの舞台であるなら、グリッドマンは何故この世界に来たのだろう。

気を抜くと忘れがちだが、グリッドマンはハイパーワールドという異次元からやってきたハイパーエージェントであり、様々な時空を移動することができる(SSSS.の設定が電光超人版と同じものであれば)。電光超人版ではカーンデジファーを追うためにやってきたのだから、今回はアレクシスを追ってやってきた、というところだろうか。しかし、おそらく裕太の回想からしてグリッドマンは一度アレクシスに敗れ、いくつかの球体に分裂し、その折に記憶を失ってしまったのだろう。それでも『この世界』の危機の為にグリッドマンは戦う。

ここまで書いて自分もようやく気がついたのだが、グリッドマンは「この世界に危機が迫っている」と繰り返している。アカネが作った世界がグリッドマンの言う『この世界』であり、グリッドマンがそれを知っているなら、グリッドマンはむしろアカネの味方であるはずだ。だがアカネはアレクシスと共闘し、怪獣によって自分が住み良い世界を作ろうとしているし、何よりも味方であるはずのグリッドマンを決定的に敵視している。それでも、グリッドマンがアカネの世界を救うためにやってきたのなら、この物語はアカネの救済という形で幕を閉じるのではないか。

後期はもっと新条アカネという人間の深部に踏み込んでいく内容になっていくのが自然な展開だと思う。というのも現時点ではアカネが救われなければならない理由があまりにも存在しない。自分が作った世界での出来事とはいえ、何の躊躇いもなく人殺しを楽しみ、他人を表面的に受け入れつつも、実際は利用と拒絶しか行わない。今の新条アカネは愛も友情もなく、おそらく彼女の根幹であろうと推測できる孤独でさえも、言葉の端々から読み取れる程度の、極めて人間味が薄いキャラクターとして描写されている。(気に入らないという理由だけで他人を殺害することを厭わないという本性が何よりも人間らしいという点を除けば)

ロジックが足りないのだ。ここから全く進展することなく、グリッドマンがアカネを何らかの形で救済したとしても興醒めするだけだ。もし本当にそんなことが起きたら『SSSS.GRIDMAN、絶狼-ZERO- DRAGON BLOODの二の舞』という記事を投稿するだろう。いや本当にアレは無いと思ってるんすよ。マジで。前半もだいぶヒロインの挙動が意味不明だったけど後半があまりに支離滅裂すぎる。全然許せなかった。

脱線した。

OPのパーカー少女何者問題は解決したが、まだ「裕太と六花の記憶喪失以前の関係性」だとか、「世界とジャンクの関係性」だとか、「実は実体化もできるアレクシスはアカネを利用して何をしたがっているのか」とか、「そもそもアカネの作った世界はサイバーワールド内のものなのか」など様々な謎がストーリーに散りばめられている。どれも上手く回収することを願うばかりだ。正直「単純に孤独なオタクが作った仮想世界です」という現時点で十分予想可能なオチだと、単純すぎかつ救済のカタルシスとして弱すぎるんじゃないかなと思っているが、もう一捻りくらいあるだろうか。

あとこれは仮にも原作を履修したオタクの妄言なのだが、サンダーグリッドマンはやはり締めに持ってこられたりするんだろうか。ゴッドゼノンらしき斧を持ったロボット(サンダーアックスまさかの登場かもしれない)はOPで出ているのでいつか出てくるのだろうけれど。

それとアンチの立ち位置も気になる。1クールでダイナドラゴンまで回収するのは難しいとは思っているが、彼がダイナドラゴンになるのではという希望を捨てきれない。7~8話はおそらくスカイヴィット、バスターボラーの回になり、9~10話あたりで1回グリッドマンの負けイベントを挟んでもおかしくないと考えると、ダイナドラゴンの出番は普通に無いのだが、それでもなんかやっぱ出てきて欲しい……(小声)。それ以前にアンチ自身がどういった結末を辿るのかもやはり気になるところだ。やっぱり一度グリッドマンを倒した後アカネに反旗を翻すのかなぁ。彼のようなキャラが掘り下げられず普通になんか負けて死ぬとか1クールアニメだと割とありがちな印象があるので怖い。ここまで引っ張るということは後でいろいろと回収するんですよね。信じてますよ。

・でもやっぱりちょっと不安

負けイベントの話が出たので、少し蛇足かもしれないと思いながらも追記する。

負けイベントといえば、3話だ。個人的に3話はあまりよく出来た回ではないと思っている。

というのも、「グリッドマンの完全敗北」というカードを切った割に、ストーリーとして得られたものが少ないのだ。グリッドマン同盟が成立してから日が浅すぎるから六花と内海の絆の深まりにも繋がらず、かといって六花や内海が「やっぱり私は/俺は裕太のことを……」と自らを見つめ直す機会にもならなかった。アシストウェポンたちの登場も、前話からキャリバーさんが来ていたこともあって必然性がないし、彼らが直接グリッドマンの蘇生に尽力するわけでもない。極めつけにグリッドマンは死んでおらず、仲間に連絡もせず、だいぶ自分を倒しに来た旨の発言をしていた相手に対して、もう一度現れたところを叩こうなどという作戦を立てている始末だ。そもそもどこに隠れてたのかも描かれないからわからない。六花が発言していた「響くんの居場所」というのもあまりクローズアップされず、ただただ内海と六花の雰囲気が悪くなっていくのを見ているのは胃的にも精神的にも苦痛だった。

3話が個人的にこんな具合だったので「1話と2話であれほどストーリー進行とワクワク感を両立していたのは一体なんだったんだ」「この作品もゴーストする(※)かもしれない」と勝手に非常に心配していたが、1&2話ほどではないにしてもワクワク感を詰め込み、1&2話以上にストーリーを進展させた4話と5話が面白く、6話でしっかり解説回を作ってくれたので少し安心した。

(※メチャ面白い序盤が嘘だったかのように中盤から後半にかけて面白さが順調に減少していくこと)

残り7話(たぶん)も楽しみながら観たい。


(三楼丸)

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