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マリーの森

マリーは不思議な女の子です。いつも画鋲投げをして遊んでいました。手の平に画鋲をのせて、それを上に投げあげます。落ちて来る画鋲をまた手の平で受けます。何度も遊んでいるうちに目をつぶったまま画鋲を受けられるようになりました。

でもマリーは家の中で大人しくしている子ではありません。三輪車に片足をかけてブンブン飛ばして遊んでいました。

そう、お母さんをがっかりさせるおてんばな女の子だったのです。ある日バター飴を取ろうとして箪笥の引き出しに足をかけて登りました。すると箪笥の上にあったお母さんの大切な嫁入り道具の鏡台が落ちて来て鏡はこっぱみじんに割れてしまいました。

それからお母さんは鏡は女の命。あんたが割ってしまったから、わたしは不幸になったと言うようになりました。

幼稚園では鉄棒が得意でした。37回練続前回りをして得意になっていました。でもお母さんが縫ってくれたワンピースがビリッと破れてしまいました。

お姉さんなのに弟と喧嘩ばかりしてお母さんを困らせていました。弟とは犬猿の仲でした。

マリーがもうすぐ7歳になるという雨の日、黄色い傘をさして家に帰る途中真っ黒な大きなこうもり傘をさして髭を生やした男の人がマリーをしっかり捕まえて連れて行こうとしました。

おてんばなマリーでした、噛みついたりけとばし必死で抵抗しました。遠くに女の人が歩いて来るのが見えると男の人の手がゆるみました。マリーが身体全体に力を込めて勢いをつけると逃げることが出来ました。

マリーは息せき切って走って家に帰りました。お母さんに逃げて帰って来た話しをしました。でもお母さんは顔をあげてチラッとマリーを見ると、また下を向いて縫い物をしていました。

マリーはお母さんは、わたしなんか死んでもどうでもいいんだと思いました。大好きなお母さんなのに。

その日からマリーは深い森に住むようになりました。おかっぱの黒髪はウェーブのかかった長い金髪になりました。マリーは深い森の中で、その日から一人ぼっちで暮らすようになりました。

『マリーの森第一話』

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