見出し画像

感動した風景写真の撮り方

自分自身が満足できる素晴らしい風景写真は、いったいどうやったら撮れるのでしょうか。
主なポイントは3つあります。

ひとつめは「感動した風景に向けてシャッターを切る」ということです。
「え?」と思われた人が多いかもしれません。
それは当たり前のことだろ?と思ったのでしょうけど、それがそうでもないのです。ここがとても重要。

タイトルを見て少し奇妙に思った人もいるでしょう。
世間一般で写真の撮り方を教えるときは、大抵「感動する風景写真の撮り方」と、教えるでしょう。
今回のタイトルは「感動した風景写真の撮り方」と、なっているハズです。もちろん重要な意味があります。

決して言葉遊びをしているわけではありません。
自分の写真を見て、「何か違う、何で良い写真が撮れないの?」と疑問を抱いている人は、ここに問題を抱えていることが多いと思います。
一番大切なことは、自分自身が周囲の世界を見渡した時に「お!?」とか「おお!!」とか「うわぁ綺麗!」とか感じたその瞬間に、対象にカメラを向けてシャッターを切ることです。

ところが多くの人は「こんな凄い写真を撮ってやろう」とか「賞を狙える写真を撮ろう」とか、「誰かに見てもらいたい良い写真を撮るぞ」と思って、シャッターを切っているようです。
つまり前述したように、多くの人は「感動する風景写真」を撮ろうとしているのです。
これでは永遠に良い写真は撮れません。
常に及第点を狙う商業写真ならばそれでOKだと思いますが、少なくともその考え方では自分自身が満足できる風景写真は撮れないでしょう。

まずは自分自身が本当に感動することです。
ちょっとした感動で構いません。
そして自分自身のその感動に、素早く気づくことです。
感動した時に、感動した風景にカメラを向けることが大切なのです。
誰かが感動するであろう風景にカメラを向けても、意味がないのです。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / LAOWA Argus 18mm F0.95 MFT APO

ふたつめの重要な要素は、「ちゃんとカメラを持って、素早く丁寧にシャッターを切ること」。
これまた「当たり前じゃん」と思うかもしれません。
でもこれは結構難しくて、それほど簡単なことではないのです。

感動した瞬間に出会ったとき、「わぁすごい!」とか、声が出たり心の中で思ったりするわけですが、その瞬間にほぼ無意識にシャッターを切っている必要があります。

「わぁすごいなぁ」と思って少し眺めてからシャッターを切ると、シャッターを切った時には既に感動から数秒の「遅れ」が発生しています。
ベストなのは、シャッターを切った瞬間が最も自分の感動が高まっているピークの状態で、シャッターを切り終わってから「わぁすごいなぁ」という声が出てくるようにすることです。

もちろんブレを抑えて丁寧にシャッターを切るためには、呼吸を止めたり、緩やかに吐いたり、様々な方法をその瞬間の自分の興奮状態や体調に合わせて行う必要があります。
自分の状態をリアルタイムに正確かつ客観的に知り、どんな時でも冷静に常に正しくコントロールする精神力が必要になってきます。
幸いなことにマイクロフォーサーズは非常に強力な手振れ補正能力を持っているため、ブラさずに撮影することはかつてほど大変ではなくなりましたが、それでも未だに私は「シャッターを切る」という動作には毎回真剣に向き合っています。
シャッターを切ることは「己の心を知ること」に等しいのです。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / LAOWA Argus 18mm F0.95 MFT APO

みっつめは、「自分の感動する「画角」を把握する」こと。
ほとんど全ての人は、感動した瞬間の感覚的「視野」が決まっています。
ところがズームレンズを持っていると、感動した瞬間にもっと良い画角を探ろうとズームしたり引いたり、いろいろあれこれと試してみたくなるはずです。
そして最終的にシャッターを切った時には、感動した瞬間からタイミングが遅れてしまい、ただ単に全体が無難に収まった普通に綺麗な商業写真に成り下がっていることでしょう。

ズームレンズを使用する最大の目的は、自分の感動する「画角」を足場の関係でどうしても維持できない時に、やむを得ずズームによって少しだけ前後に調整することです。
もちろん明らかな意図があって、普段と全然違う焦点距離を使って撮影することは多々あると思いますが、大抵の場合それなりの写真しか撮れません。

何故ならそれは「自分が感動した画角」とは異なるからです。

自分自身が感動する画角、すなわちレンズの焦点距離を把握していれば、その焦点距離に合致するレンズを使用するだけで全て丸く収まるということです。
何も考える必要はありません。
以前も説明しましたが、「構図がどうのこうの」という考え方は、写真が出来上がってからの後付けの理由に過ぎません。構図を議論することは、写真の芸術性と全く関係がありません。構図の話は全くの無駄です。
構図と言うものは、写真にとって最もどうでもよい要素のひとつなのです。

自分の感動した画角となる焦点距離さえ把握しておけば、あとは「感動した風景」に向けてシャッターを丁寧に切るだけ、というわけです。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / LAOWA Argus 18mm F0.95 MFT APO

写真は自分の心を知る手段としても、優れています。
一方で、写真は人の外部記憶装置でもあります。
すぐに消えて行ってしまう思い出が、写真を撮ることで、たくさん手元に増えていきます。
思い出が増えれば増えるほど、あなたの感動センサーは洗練され、豊かになっていくことでしょう。

世の中には「上手な」写真を撮るための情報が溢れていますが、それらの情報は確かに上手な商業写真を撮るために役に立ちます。
しかし「感動した写真」を撮るためには、大抵何の役にも立ちません。

「感動した風景に向けてシャッターを切る」
「ちゃんとカメラを持って、素早く丁寧にシャッターを切る」
「自分の感動する「画角」を把握する」
この3点だけで大丈夫です。

自分の心を知り、自分に向き合い、そして自由にのびのびと、好きなように写真を撮りましょう。
そして思い出をいっぱい増やしましょう。
その思い出は、きっといつかあなたのためになるハズです。

[ おしまい ]

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / LAOWA Argus 18mm F0.95 MFT APO

この記事が参加している募集

#カメラのたのしみ方

55,409件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?