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Invent or Die - 未来の設計者たちへ:第四回 中島聡 x 増井雄一郎 書き起こし その10

2018年11月26日(月)に開催された「Invent or Die - 未来の設計者たちへ:第四回 中島聡 x 増井雄一郎」の書き起こしです。
ソフトウェアエンジニアである中島聡と、高校在学中からプログラミングをはじめ大学時代に起業、現在でも第一線で続ける有名エンジニアの増井雄一郎氏がエンジニアの未来に関して議論します。

中島:そういえば、質問コーナーっているんだっけ?

武藤:まだお時間少々あるので、中島さん、増井さんに質問ある方、挙手をお願いします。

質問:今日はありがとうございました。トレタの社員の数が120人ってお話ありましたけど、数10人から100人くらいのプロジェクトで、経営側から大切にしていることとエンジニアとして進めていく上で、大切にしていることがあれば教えていただきたいなと。

増井:僕がみているのは開発側の組織で、開発側の組織はそんなに大きくなってないんですね。そういう意味では開発側の組織を大きくしないっていうのをずっと気をつけてました。要するに人の数を増やしてもコミュニケーションコストが上がっていくので、なるべく人を増やさない、変な人と働くぐらいだったら、その人とらないで自分が二倍働いたほうがいいって僕は思って組織を作ってました。エンジニアで言うとさっき言ったようにポータビリティをすごく気にしていて、自分が持ってる技術がどっかでしか役に立たないとか、狭い領域でしか役に立たないものには自分の技術時間はあまり投資しないっていう風にしてます。もちろん特定の業務について勉強することもあります。トレタだったらトレタ用に勉強することもあるんですけど、ポータビリティがない、要するに他の業種に持っていけない、他の会社に持ってけない場合には、そこにあまり時間を使わなかったり、それをなるべくポータビリティが高いものに変えてくとか、僕はエンジニアとして気にしています。

質問:お話ありがとうございました。最初、Kitayonのお話を伺った時に、気心の知れた仲間だからこそ成り立たせることができたという風にお伺いしたのですが、もっと大きなことをやろうとした時にそれでもそれを不特定多数と頑張りたいという風なことを思った時に、どういう風な解法を探っていけばいいのかなと質問させていただきました。

増井:僕、Kitayonの他にpukiwikiっていう2002年に始めたPHPで作ったWikiエンジンのプロジェクトがあるんですが、あれはほとんどネットで会ったことがない人同士で100人ぐらいのプロジェクトなんですね。もの凄い人数が多くて、全員バラバラなんですけど、もうその時には僕が何を目指してるのかっていうのは、はっきりゴールイメージを作っていて、もうそれに合わないものはむしろこう、容赦無く切り捨ててくみたいなすごい強いプロダクトオーナー制みたいなのをもっていたので、例えば、みんなが大事だと思っても僕が大事だと思わないものは入れないとか、そこを強くして、ある種独裁に近いような形で決めてって、合わなければむしろ抜けてもらってもいい。さっきいった気心知れた人たちの場合は、みんなでやることに意味があるので、そこはみんなで合意を取ってやることもあるんですが、もっと人数が多くなった場合にはどっちかというとトップダウンでこれをやりたいとか、合わないなら抜けてもらってもいいです、みたいな話をしてプロジェクト運営をしていました。そのあと10年後ぐらいに日本に帰ってきてから会った人に、そん時一緒にやってた人に会ったんですけど、あの頃お前はすごいやな奴だったってあとで言われました。ずいぶん丸くなったねって話その時されました。

中島:例えば今でいうと、ある機能を付け加えたくてpull requestを投げてきた人に「あ、これ却下」みたいな。

増井:そうですね。バツンとやりました。本当にお前は嫌な奴だったと言われましたね。逆にそうおこらないように、僕はこういったことを目指してるってのは、よく言ったりとか、講演の場で喋ったりとかで、僕はこういったことを目指していて、こういったことはやらないって話は細々してました。なのでそんなになかったと思うんですけどでも嫌な奴だったんですね。

中島:ま、それはね、頑張って仕事をすると嫌な奴になるんです。僕も結構マイクロソフトの中とかで僕のことすごい嫌ってる人いました。

質問:今日はありがとうございます。おふたかたですね、昔からたくさんいろんな製品、サービスをおつくりになっていて、私も追っかけのようにビデオ撮ってエフェクトしたりとかりいろんなことをさせいただいてますけど、たくさん作って関わっていくと色々、てあかもっていうんですかね、自分がタッチしてるものが増えると思うんですが、おそらくたくさん作る以上にたくさん切ってきてると思うんですが、製品ですねもしくはサービスあの、愛着あるものも、どっかで見切るときあると思うんです。それのきっかけとかタイミングとかあのコツみたいなのがあったら教えていただきたいなと思います。

増井:僕は簡単で、あんまり愛着持たないんですよ。そもそもあんまり自分が作ったものが今日手を離れてもあまり苦にならないですし、例えばあるとき断捨離をして、荷物を全部でダンボール7箱まで減らしたりとか、もともとこう、大胆に切るの好きなので、なので今までどれかを手放すのに苦労したことはないです。実はキタイオンを別の会社に売却する時に、トレタの別の株主から増井がそれにもっとその気を削がれてしまうんじゃないかって言うので、危惧されたことはあるんですが「大丈夫です僕全然明日からすぐ忘れるんで」って言って、Kitayonも売却したあとは会社も2回くらい見に行っただけで、その後全くタッチしてないですね。

中島:私は結構悩みや悩みです。割と愛着あるんですけど、その無理なんですよ、永遠とメンテナンスするのは。特にこうテクノロジーがどんどん変化しちゃうので、極端な例がその Cloud Reader っていう違法でダウンロードした漫画を読むためのソフトが、iPad出た時に出したら、あれものすごいユーザーがついて無料で配ってたので、広告だけで月1500ドルぐらいコツコツ入ってたんです。でも別にアレでそれこそそれこそもう十分だと思ったから、プロダクト自体フリーズしておいていたら、どんどん OS が新しくなるので 、OSをアップデートすると動かなくなるっていう状況でどんどんユーザーが減ってるんですけど、でももうあれobjective-C で書いてるし、今更コンパイルしても絶対直してくれないぐらい古くなっちゃっているので、直せないんですよね。ちょっと愛着はあるんだけど全部swiftで作り直すかって言うと、それほどこう自分自身でプロダクトニーズを感じてないし、あれはやっぱり最初だったからやりたくて面白くてやったわけで、今でも時々そのコメントでくるんですよ、動かないんですけどどうしてくれるんですかみたいな。それは結構悩みます。

質問者:気持ち的旬が過ぎたら、もう切っちゃうみたいな。

中島:僕は切っているつもりはないんだけど、OSだったりハードウェアが勝手に進化していくので、私は切りたくないのに切らざるを得なくなるみたいなのはありますよね。

増井:溺れる人は助けないみたいな感じですね。沈んでいくプロダクトは。ちなみに僕はKitayonを売却したのはそのそのためで、僕はどっちにしろテンションが続かないのはわかっていたので、あれを作ってたときから僕がメンテナンスしないという前提でドキュメント趣味で作ってないドキュメントをしっかり書いてテストを書いて CI 回してみたのやったは、始めから手放すことを前提にしてるってのはありますね。僕がオープンソースが好きなのは、自分が作らなくても手放した後に誰かが作ってるくれる、PukiWikiって今でもやってる人がいるんですよ。もともと僕が作って今でも最終管理権を僕は持ってはいるんですけども、何年もタッチしてなくて、ただ誰かが進めてくれるっていう風にしてなので、フリーで公開することが多いです。

中島:あと一ついうと、この世界って結局その思いっきり成功するかしないかの瀬戸際が来るので、そのPhotoShareがいい例で最初はもうナンバーワンだったんだけど、Instagremが出てきてパーンと抜かれたところで終わりですよね。あれほど逃した魚で大きい魚はいないですよね。

増井:いまだにインスタ使わないんですよね。

中島:インスタって言葉を聞くとちょっと・・

増井:僕は初めから使ってました。多分ここがその差ですね。

質問者:最後、大変腑に落ちました。

武藤:ありがとうございます。こちらで最後でもよろしいでしょうか。

質問:今のお話に関連してるんですけど、逆に始めるタイミングで、特に増井さんの話聞いてると、すごいやりたいビジョンが大きいものがあってそこ対して向かっていくっていうよりは何か違うのかな、なんかって風に聞こえたんですけど、どういったタイミングではじめたりしてるんですか。

増井:僕ネットに作りたいものリストって公開してるんですよ。普通に、増井ドライブ作りたいものリストで検索すると出るんですけど、普段からこんなのあったらいいのにってちょいちょい思うわけですね、こんなソフトあったら良いのにとか、ここもうちょっと良くなるものがあったらいいのに、とかいうのは普段からメモを取っていて、時間ができたり、そういうの公開してる話をあちこちでして、これ欲しいんです言われたりすると、それを作ったりとか、で年に一個ずつ物を作るっていうのは自分に課してるので、そこん中から適当な文を選んで作ってるって言う感じとかになります。

武藤:お話もなかなか尽きないのですけど、ちょっとお時間の方もございますので、またこの後懇親会に出られる方いらっしゃいましたら、またお話の続きはその際にしてもらえればと思います。今をもちましてですね、中島さん増井さんの対談イベント話題4ということで終了させていただきたいと思います。YouTube のライブでご覧いただいている方はこちらまでとなりますので、この後は休憩後、会員の皆様の発表会言うことでまた引き続きよろしくお願いいたしたいと思います。どうもありがとうございました。

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