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「日本一チャレンジするまち」埼玉県横瀬町の新たなチャレンジをさぐる


「日本一チャレンジするまち」埼玉県横瀬町。
横瀬町に来たのは去年12月に続いて2回目。
横瀬町のスーパー公務員、田端さんに出会って、この町に惚れ込んじゃいました。
今日はその横瀬町で何やら面白いことがあるというので再訪。

横瀬町役場 失敗推進係リーダーの田端将伸さん

横瀬町といえば「よこらぼ」

「日本一チャレンジしやすい町」横瀬町
横瀬町が提供する“まちづくりの実践や実証試験などができるチャレンジのフィールド“である「よこらぼ」。
横瀬町でチャレンジしたい企業や個人が町に直接提案できて、町が採択するものです。
これまで7年間で234件の提案があって、141の事業が採択されています。
毎月3件以上の申し込みがあるということで、民間がやりたいことがどんどん町に溜まっていく仕組みができています。
この仕組みによってたくさんの移住者も増えているといいます。
人口約7,500人の小さな町でなぜこんなに多くのチャレンジが生まれているのか、その謎に迫ってみました。

まずはまち巡り。

電車に乗って到着したのは横瀬駅。ここは西武秩父線で、秩父駅の一つ前の駅です。

この秩父線、赤字路線でもあって、廃線の危機もあったとか。
その時に、住民と話し合って「芦ヶ久保の氷柱」など西武線を使うきっかけを考えだしているそうです。
今日もたくさんの人で賑わってました。

ここが駅から町役場まで続くメイン通り。

見ての通りお店が1軒もありません!
そう、ここには商店街がないのです。
普段、渋谷センター街にいる私としてはこのギャップにホッとします。
そして、商店街がない=偶然の出会いがない、というのが横瀬町の課題のひとつだと。

Area898

その話を聞いた上で、初めに向かったのは、国道299号線沿いにある「Area898」。

横瀬町役場が運営する施設です。898は「やくば」をもじったモノ。
「オープン アンド フレンドリースペース」というコンセプトは、これまでのような役場とは真逆を目指して、オープンでフレンドリーな役場をつくる。
町民であれば誰でも自由に利用することができる場所になっています。

この場所は、もともとJA(農協)の直売所だった場所。
JAが移転したことでJAから施設を借りて運営。2019年4月にオープンしています。
商店街がない横瀬町で、商店街の機能である「人と人の偶然の出会い」をつくろうというものです。
JAから建物を借りて運営。改修工事はすべてボランティアでDIYで行い、かかった費用は材料費の40万円だけ!
例えば、プロジェクタースクリーンはオリンピックのボブスレーで使った、光を通さないテント生地を再利用。
家具もほとんどは他の場所で使われていたものを再利用しています。
管理は役場の職員がコミュニティマネージャーとして関わっているとのことです。

LAC横瀬

同じ建物内にあるのは、2022年5月にオープンしたLAC横瀬(LivingAnywhere Commons)。

ライフルが運営する宿泊つきのコワーキングスペースです。
サブスクで月4万円で全国のLACに泊まれるというシステムです。
18人まで滞在可能で、中には長期滞在の人もいるそうです。

このArea898(横瀬町運営)、LAC横瀬(ライフル運営)が同じ建物内で一部は民営で一部は行政運営。
普通なら管理上壁で分けるところをあえてオープンにして運営しています。
あえて境界線をつくらずにグレーにしていることで、交流=人と人の偶然の出会いをつくっています。
駅前は何もないけど、ここに来たらなんでもある。そんな場所がこの場所です。

Area899

2階は、LACの宿泊施設(ここは非公開)。
そして、Area898の上にあるArea899は子どもの居場所。

30人くらいの子どもがいることもあるといいます。
親子で過ごせる場をつくろうと、3カ所防犯カメラを設置し、タブレットで確認することができる仕組みになっています。
デジタル田園都市国家構想の一環で整備して、健康子育て課が管理しているそうです。

TATE Lab.

2階のもう一つのスペースはTATE Lab.

8割が森林という横瀬町の地域資源を有効に使って木材をブランディングしています。
渋谷に本社があるスキーマが運営。
移住者である橋本さん(ハシケン)さんが運営しています。

タテラボの橋本健太郎(ハシケン)さん

「あたまの椅子」などアート的な価値を出しています。
サウナ用のさぶとん、コースターをつくっています。

NAZELAB(ナゼラボ)

Area898、LACの隣にあるのはNAZELAB(ナゼラボ)

2022年にオープンした「フリースクール」のような役割の場所です。
全国的に増えている不登校児童。そんな子どもたちが家にこもるのではなくて、ナゼラボに来て子どもの第3の居場所として育ってもらう。
現在、5人の子どもたちが利用しているとのことで、みんあ家族中で移住した来た人たちです。
建物は、日本財団からの助成を受けてつくられています。

教育プログラムは「なし」!
もちろん、町の教育委員会の理解を得られるのに苦労したそうですが、結果として移住者が増えています。
活動の一つは、森に行って、ツリーハウスをつくるなどの探求学習を行なっています。
子どもたちは、Atea898や899へも行き来していて、大人たちや社会にもたくさん触れるきっかけがつくられています。
子どもたちにとって、小学校とナゼラボ、どちらも選べる状況をつくるということが大事。
ここにも町への関わり代を持っている仕組みがありました。

チャレンジキッチンENgaWA

もう一つ新しい取り組みがチャレンジキッチンENgaWA。

運営しているのは、地域商社の株式会社ENgaWA。
社員の8人は地域おこし協力隊の人たち。
日本の縁側をイメージして、パブリック空間とプライベート空間の間のような位置付けで、誰もが来やすくなる場づくりをしています。

ENgaWAの名前にも深い意味があります。
「縁」 縁が輪になる
「援」 チャレンジを応援 
「円」 お金が循環

農業生産物を商品開発して販売、そして農家に還元する循環をつくっています。傷ありのプラムでクラフトコーラをつくったり。
瞬間冷凍機、スチームコンベクションなどを備えた設備があって、飲食店だけではなく、菓子製造業の許可も取っています。
なので、毎週1回だけ開店してそれ以外の日は商品開発。
キッチンはシェアキッチンとして貸したり、イベントスペースとして、大学生に貸したりしています。
チャレンジのハードルを下げて地域の住民に使ってもらう仕組みになっています。

境界をグレーにして関わり代をつくること

行政は白か黒かで判断することが多い中で、あえてグレーを作るという仕組みが大切。
横瀬町の取り組みには、至る所に境界線をグレーにして、人の関わり代をつくる工夫がありまあした。

まち巡りの最後は、武甲山が正面に見える寺坂棚田から。
日本の原風景のような風景。
ここは秋になったら一面の曼珠沙華が見ものだそうです。

正面に見える武甲山はセメントの原料である石灰岩が取れる採掘場とセメント工場になっています。
大正時代から採掘しはじめて、昭和40年ごろから本格的に工場が稼働しているそうです。

最後に、チャレンジの秘訣を聞きました。
大事なのは、そのプロジェクトへの熱意。
大企業であれ、小さい企業であれ、個人であれ、そのプロジェクトをこの場所でやるんだという熱意がないと続かない。
課題が山積のこの場所だからこそ、たくさんのチャンスがあります。
人口は減っていますが、人の関わりの濃度が濃い熱い町。
「日本一チャレンジするまち」横瀬町はこの人の熱量でできあがった町だということを強く感じました。

「よこらぼ大会議2024」

そして、その「よこらぼ」が7年を迎えて再始動。
町民会館で「よこらぼ大会議2024」が開催され、全国からたくさんの熱い人たちが集まっていました。

横瀬町長の富田能成さん


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