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マティーニ、そして医師たるもの。
突然、大学院のボスから先週メールが届いたのです。
私のボスがワシントンから帰ってきている。ご飯をしませんか?
近々の私の予定はパンパンでした。
しかし、そのメールにオーラを感じたのです。
それはただならぬオーラで、今を逃すのではないぞ、というお告げを感じました。
行きます。
私は予定を調整し、お会いすることにしたのです。
当日、目の前に現れたのは満屋裕明先生。
世界で初めてHIV治療薬を開発された先生で、とてつもなく偉大な研究者の先生でした。
ノーベル賞候補でもある方です。
満屋先生は70代には見えないほどお元気で、どんな暗闇でも光を放つようなオーラがある方でした。
先生は、大好きなジンマティニーの歴史や美味しいマティーニの作り方をお話しながら、沢山のお言葉をくださいました。
僕も昔バーテンダーをしていて、先生もバーテンダーだったそうで。
ボンベサファイアが好き、ということを聞いて、懐かしいなと思いました。
医者は、
たとえ、自らに犠牲を払っても、誰かの役に立ちたい。人助けをしたい。
その熱意と覚悟が大切だよね。
誰もやりたがらないけれど、人々の役に立つ仕事をする。
マイノリティーに優しく、誰も排除しない研究者であること。
多少トゲがないとね。面白みがないでしょ。ハリネズミ、いいよね。
「僕はトゲトゲしいです。
相手によっては、毒だと思うこともあるかもしれません。
ハリネズミじゃなくて、ハリセンボンかもしれません。それでも良いでしょうか。」
先生は笑いながら
イキがいい医者でなくっちゃね。
ハリセンボン、いいじゃないか。
先生の笑顔はまわりを包み込むように優しく、あたたかかったです。
Singhって、いい名前だな。
ghがつくと、ライオン、勇敢なという名前になるよね。
僕の名前を何度も褒めてくださり、嬉しかったです。
そして、トランスジェンダーの現状についても
ゆっくりお話を聞いてくださいました。
お別れの時握手をしました。
その手はとてもあたたかくて、分厚く、人情味あふれる手でした。
明日からも頑張ろう、自分を奮い立たせるような、そう思える人に会うこと。
これが僕のエネルギー源だな、と再確認しました。
僕に伝えたいことはあるかい?
と聞かれたので。
どんなジェンダー•セクシュアリティでも。健康に幸せになる権利があると思います。社会から排除されるべきではないと思うのです。
と伝えると。
先生は
君に同意だよ。
と言って、優しく笑っていました。
僕の2倍生きてる人。
最高にかっこよかったです。
僕が72歳になったとき、35歳の後輩が僕を見てかっこいいと思ってくれるだろうか。
満屋先生のような70代になりたい、と強く思った日となりました。
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