見出し画像

ジェンダー外来で一番多い質問ーなんで医師診察を受ける必要があるんですか?ー

トランスジェンダー外来を始めてから。
一番多い質問。
ホルモン療法中の患者さんたちからの質問です。

「なんで医師の診察を受ける必要があるのですか?今までのクリニックでは、定期的に医師の診察を受けたことはありません。」
「医師の診察がないと、薬もらえないんですか?」
「看護師さんは薬の処方できないんですか?他の病院では医師に会わずに、何年も看護師さんとしか話さなかったのに。なんで?」
「なんで血液検査する必要があるんですか?もう10年ホルモン療法しているけれど、血液検査の必要性なんて聞いたことがない。」

「なんで、なんで、なんで。」
と言われる日々です。今でも。

トランスジェンダー外来を始める前、
産婦人科外来では、"医師診察の必要性について"尋ねられたことはありませんでした。
基本的に医師との診察を行った上で、薬の処方・注射など治療を行うからです。
そのため、非常に驚きました。


まず保険診療では、医師の診察なしに薬の処方はできません。

医師法第20条「無診察治療等の禁止」:
保険診療では,保険医が保険医療機関において、診察なしで処方箋など出すことはできません。

医師法第20条より

日本では、看護師さんのみの判断によって、薬を処方したり、検査をすることはできません。
検査結果も医師が患者さんに伝えることが基本となっています。


ホルモン療法を行っている場合は、定期的な血液検査が必要です。
1年に2-3回は血液検査を行い、合併症や副作用について確認する必要があります。

私はトランスジェンダーやノンバイナリーの方々
TGD(Transgender and gender-diverse)の患者さんたちのヘルスケア・セクシュアルヘルスケアを真剣に行いたいと思っています。
元気で長生きしてほしいな、と思っています。

そのため、患者さんに「元気ですか?」「変わりないですか?」と声をかけ、患者さんを直接"診る"ことを自身のモットーとしています。

漫然とホルモン療法をするのではなく、年齢や仕事、生活スタイルについて話を聞き、
患者さん一人一人を診て、ベストなホルモン療法が何か、いつも考えています。

医療アクセスのハードルが高いことは認識していますが……

自身の講演スライドより抜粋
自身の講演スライドより抜粋

トランスジェンダー外来で患者さんと接する中で
深刻な状況になってからわかる生活習慣病が非常に多いなあ…と感じています。
高血圧・脂質異常症・糖尿病、高尿酸血症も。

このような例↓はよくあります。

「のどが渇いてしかたない」
「おしっこが良く出る」
「陰部がかゆい」

「ホルモン療法をしているクリニックでは医師と話さないので、今まで症状はあったが放置していた。我慢できずに受診した。」

診察後、内科疾患の血液検査を行った結果、糖尿病でした。
深刻な状況だったので、すぐに総合病院を紹介。
インスリンが開始となりました。

「自分の身体のことは自分が良く知っている!」おっしゃる通りだと思います。

しかし、医師の診察でわかることもあります。
検査検査検査だけではなく、話を聞いて、患者さんを診る。
それでわかることもあります。

定期的に医師診察を受けながら、安全にホルモン療法を行ってほしい。
そして元気で長生きしてほしい。

安全にホルモン療法を行うことによってメンタルの改善があり、
自死率やうつ病が減ったという報告も多々あります。

自身の講演スライドより抜粋

看護師さん、コメディカルの存在も大切に思っています。

患者さんは医師と話すより、他の医療スタッフと話す方が緊張なく話せてる印象があります。
そのため、私も頼りにしています。

しかし、医師も含めて皆で患者さんを診ることで、健康に暮らせるTGDの方がもっと増えたらいいなあ…と願っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?