詩『花の種』

題名
『花の種』
(隠しテーマ・風に乗って)


 私は何かの種のようです。
 ふわふわとした白い羽根があり、風が吹くと空高く舞い上がります。どこかに落ちていつか花を咲かせると聞いてます。

 自分の行きたい場所には行けません。
 海や山や都会も知らないままかもしれません。

 風に乗って、遠い知らない世界へ。
 意思ではなく運命が私の人生。

 私は地味で辛い暮らしですが、つぼみから花を咲かせると人生が変わると聞いてます。
 ただ、幸せは儚いようです。すぐに終わるようです。

 それでも、人間という動物よりは幸せかもしれません。
 だって私たち花の種は、ほとんどの種が綺麗な花を咲かせることができるのです。
 花のない一生なんて絶対に嫌です。

 ほとんどが花もつぼみもなく、愛とか夢とか訳の分からない見えないものに執着して死んでゆくのが人間らしいのです。

 私は最後に花として散り、また種を飛ばす。
 何色でどんな花なのかも知って、自分の美しさに酔いしれて枯れてゆけるのです。
 ああ、幸せです。
 人間じゃなくて本当に良かった。

 今は風に乗って青空を飛んでいます。
 海の見えるあの丘がいいなぁ。

 ああああああああ、
「海はだめーーーーーーーー!」

 海面に浮かんだ種を魚たちがつついて遊んでいます。
 そしてゆっくり沈んでく。

 どんな人生にもいろいろあるようです。




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