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日本の水道水は、沸かさずにそのまま飲んでも安全な飲用水です

 今回のnoteで言いたいこと・お伝えしたいことは、すでにタイトルで言い尽くしている。


 昨今の「白湯(さゆ)」ブームに伴って、一部の女性誌の特集記事や浄水器メーカーのウェブサイトにおいて「水道水には不純物が含まれているので、加熱・沸騰させてから適温に冷まして飲みましょう」という誤った解説が散見される。
 しかし、日本の水道水は、沸かさずにそのまま飲んでも安全な飲用水である
 日本の水道設備の施工基準、水質基準は「水道法」ならびに「水道法施行規則」に厳しく定められており、煮沸消毒しなければ飲用に適さないというのは悪質なデマである。
 本来であれば様々なデマ記事を提示しながら、その表現の誤りや意図的なウソや問題点を具体的に指摘すべきところであるが、デマ記事のアクセス数を増やすのは本意では無いことからデマ記事の引用やリンクの貼付等はひかえさせていただきたい。
 しかし、各種検索エンジンで「白湯」を検索していただけば、先に紹介したような誤った文言ばかりの記事が多数存在するのをご確認いただけることと思う。

 私がそれらの記事をデマと断じる根拠は、過去のnoteで複数回にわたってご説明してきた。
 各記事には、日本の法令、現在の水質基準項目ならびにその数値を具体的に提示している。
残念ながらデマ記事を目にし、水道水への不安を抱いてしまった方々には、是非とも下記の各noteをお読みいただき、日本の水道水への安心を取り戻していただきたいと思う。


【解説その1】

 宮城県の水道事業と日本の水道法、水質基準について書いたnote。今回の「白湯」ブームに伴いデマが拡散されつつある残留塩素についても説明している。
 衛生確保のため塩素が残るように施工されているのが現在の日本の水道であり、もちろんその水素の残留量は健康に害が無い範囲に定められている



【解説その1の補足】

 上記記事の事後状況として書いたnote。
 宮城県の水道事業に関するデマを流したテレビ東京の対応について解説している。
 なお、本件についてテレビ東京は公式に謝罪したが、当該バラエティ番組はいまだに放送され続けている(2024年現在)。


【解説その2】

 日本の水道水の水質基準について解説したnote。
 なお、本記事においては日本の農作物の農薬使用についても触れている。
オーガニック信者の方々が安易に口にする「日本は世界でもトップクラスの農薬を使用している国」というのは明らかなデマであることを具体的に説明しているので、是非とも多くの方々にお読みいただきたい。


【解説その3】

 こちらは水道水に関するものではないが、私の専門分野である下水道について書いたnoteである。日本の水源について悪質な動画を拡散する者への抗議の意を込めて書いたものなので、水道について書いた上の各記事とあわせて多くの方々にお読みいただければ幸いである。
 なお、このnoteで触れた「東京都の下水道設備に関する誤解を拡散するための悪質な動画」をSNS上で積極的に宣伝していたアカウントは一時期鍵垢となっていたが、私がX(旧Twitter)を離れたのを機に復活している模様である。
 悪質なアカウントに騙される人が増えないことを願う。




 それにしても、なぜ今回の「白湯ブーム」において、本来安全であるはずの日本の水道水について「煮沸」が推奨されているのだろうか。

 この点について、今回このnoteを書くにあたって調べていたところ、興味深い記事を見つけた。
 今から5年前、2019年7月に中国共産党中央委員会の機関紙「人民日報」のインターネット版として開設されている「人民網日本語版」に掲載された、中国における白湯の歴史とその普及の経緯について解説した記事である。
 記事は2ページにわたっているのだが、私が特に注目したのは2ページ目の中段である。下記に記事へのリンクを貼らせていただく。


 ここから分かるのは、殺菌のために水の煮沸消毒が推奨されていたのは1936年、それも中国においての話であるということである。
 安全のために水を煮沸消毒せよ、というのは、近代水道が普及する以前の話なのである。

 誤解の無いよう申し添えるが、これは過去の歴史について書かれた記事である。現代の話ではない。
 中国でも近年はそれまでの都市部だけでなく農村部を含めた水道布設がすすめられており、2011年データによれば、中国国内における水道普及率は94.7%※に達している。
 ちなみに日本国内の水道普及率は98%である。中国の水道における水質基準等の詳細については残念ながらデータを確認出来なかったので単純な比較は出来ないが、少なくとも国内の水道普及率という点においては、日本と中国とで大きな差異は無いことをご理解いただきたい。

 ※ 中国国内の水道普及率については国土交通省作成の2010年データに基づく。下記リンク参照

https://www.mlit.go.jp/common/001131522.pdf





 人間にとって、生きてゆく上で水の摂取が必要なのは、今更言うまでもない。
 その際に、冷たい水よりも温かい水のほうが身体が温まるように感じる・消化吸収が良いように感じるといった感覚は、人それぞれだろう。先にご紹介した中国の事例のように、白湯を飲むことがひとつの文化として定着している地域もある。
 さらに、「水道水はカルキ臭が気になるから沸かして飲む」というのもまた、個人の率直な感覚として否定されるべきものではないと考える。

 (ちなみにカルキ臭とは塩素消毒によって生じる臭いを指しているが、塩素そのものの臭いではない。長くなるので今回は説明を省略させていただくが、興味のある方は是非ご自身で資料を検索していただきたい。)

 しかしながら、それらの個人の感覚と、科学的根拠とは別である。
 白湯を飲むことに、水分摂取以上の科学的効果は無い。
 そして、繰り返しになるが、水道水には健康に害をもたらすようなレベルの不純物は入っておらず、煮沸消毒せずともそのまま飲んで問題は無い。
 水道水とは、安全な飲用水である

 一部の悪質なマスコミや不勉強なライター等が拡散するデマによって、過剰な不安を抱いて精神の安定を脅かされたり、不必要な商品を購入させられるといった被害に遭う人がこれ以上増えないことを、私はここ日本において各種法令に基づき給排水衛生設備の設計・施工に携わっている者の一人として心から願っている。


 そして、一部のメディア関係者およびライターの方々へ。


 数日前に別のnoteにも書いたが、疑問や不安を抱いた時は法令を確認する・あるいは科学的データを調べるというのは、一般企業で働く者にとっては常識である。
 いや、一般企業だけではない。
 学術論文を書くのに、執筆者の経歴はおろか名前も不明なSNS上の情報や更新者不明のWikipediaから引用する人はいないだろう。
 どうか、メディア関係者およびライターを名乗る方々におかれても、ご自身の仕事に責任を持っていただき、真偽不明の情報を確認もせずに受け売りしたような記事や情報を発信することは、今すぐにおやめいただきたい。
 また、調べてもデータが公開されていないような事象や公的機関による研究データが国内外で複数あって判断に悩むような事象であれば、その分野の専門家に確認していただきたい。


 マスコミやライターを名乗る方々に今もまだ良心があることを、私は信じたいと思う。



#仕事について話そう


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