宮城県の水道事業を批判していた人達の正体とは
みやぎ型管理運営方式導入から1年
宮城県が県内の水道事業運営に「宮城県上工下水一体官民連携運営事業」(みやぎ型管理運営方式)を導入してから、1年が経った。
令和4年4月1日から導入されたこの運営方式は、水道事業関連施設の所有権はあくまで宮城県が有したまま、当該施設の運営等を行う権利を民間事業者に設定する事業方式であり、経営の効率化やコスト削減を目的として導入されたものである。
導入の背景には、供給の対象となる県内の人口の減少や、今後予想される給水管路の老朽化に伴う更新需要、そして先の人口減少とも重なるが、水道事業に携わる職員の減少等があったことは、宮城県から説明されている。
これらについては、今年2月4日付の「水道事業の「民営化」という言葉に不安を覚える方々へ」というnoteにまとめさせていただいた。
みやぎ型管理運営方式導入後の宮城県によるモニタリング状況は、下記リンクのとおり、県のホームページにおいてすべて公開されている。
経営、管理維持状況についての報告はもちろん、県による抜き打ちの水質検査の結果に至っては各項目の数値まですべて隠さず公表されていることが、ここから確認出来る。
さらに、昨年12月に発生した設備点検に伴う一時的な水の濁りについても、しっかりと公表されている。
(尚、この際に発生した濁りは、健康被害が発生するレベルではない。これについては次項にて詳しく説明する)
しかし、ツイッターで検索したところ、昨年4月以降のこのモニタリング状況について確認・言及しているアカウントやツイートを発見することは出来なかった。
4月8日から9日に発生した水道水の濁りと、ネット上の反応
昨日(令和5年4月10日)、宮城県の大崎広域水道で4月8日から9日にかけ、県の基準を上回る濁りがある水道水が供給されていたことが報道された。
しかも、先の事例の原因は電気設備点検時の操作ミスだったが、今回は、運営を委託されている「みずむすびマネジメントみやぎ」の職員による操作ミスである。
もちろん、健康被害のおそれはない。
不安に感じられる方のために補足すると、水道法第4条の規定に基づき厚生労働省令で定められた「水質基準に関する省令」に記載されている濁り(濁度)の基準は、「2度以下」である。
国が定める健康被害のおそれの無い基準が「2度以下」であることからも、今回の「0.7度」が全く問題の無いものであることが分かるだろう。
とはいえ、手動操作のミスで、県が定める基準を超える濁りが生じた水が供給されたことは事実である。この点については、運営を委託されている「みずむすびマネジメントみやぎ」ならびにその管理を行う宮城県が批判されても仕方ないだろう。
しかし、この件についても、ネット上の反応は薄い。
先のニュース記事に、批判コメントはごくわずかである。それも、取り上げるにも値しないような中傷や、一言コメントばかり。
さらに、この件が報道されヤフーニュースに流れたのは4月10日18時46分だが、その夜のツイッター上において、この件について言及・批判しているツイートを発見することは出来なかった。
騒いでいたのは誰なのか
ツイッターについては私のアカウントをブロックしている方々がツイートしている可能性もあるので、先のニュースに反応していた方々が「いなかった」と断定することは出来ない。
しかし、少なくとも昨年4月1日以前に「民営化」という言葉に過剰に反応し、危険を訴えていたアカウントの多さを思うと、今回のヤフーニュースへのコメントの少なさを含め、導入後の反応の無さには違和感を覚える。
この方式を「民営化」とみなしていた方々が本当に危機感を抱いていたならば、導入後の経過にこそ注視して然るべきではないだろうか。
にもかかわらず、現状ではそれが皆無に等しい。
モニタリング状況を確認することもなく、不祥事(と呼ぶほどではないとも言えるが、批判したい方々にとっては間違いなく不祥事な筈である)が発生しても、気づきもしない。
ならば、導入前に「民営化反対!」「民営化は危険!」と騒いでいたあのアカウントの数々は、一体なんだったのか。
憶測を語ることは控えたい。
しかし、皮肉にも、今回のニュースは、批判していた人達の正体を解明するためのヒントを与えてくれたように思う。
どなたか志のあるジャーナリストが、いつの日かこの件について取り上げてくれることを願いたい。
これからの宮城県に望むこと
インフラの語源は「infrastructure」という英単語である。
「下部(下に)」という意味を持つ「infra」に「構造」という意味を持つ「structure」を組み合わせた単語とされている。本来の意味は土台や基礎構造などだが、日本では社会基盤を示すものとされ、生命や暮らしを維持するための「ライフライン」という言葉と同様に使われる例が多いように思う。
言うまでもなく、水道は、インフラのひとつである。
そして、水道水は、人の口から体内に入ることを前提に供給されている。
不祥事があった場合に健康被害が生じる可能性が極めて高いものであるからこそ、厳しい水質基準が定められており、委託先がどこであれ、その管理においては国及び地方公共団体が必要な施策を講じるよう「水道法」という法律で定められている。水道が、インフラの中でも特に厳しい管理が課せられていることは、これまでにも繰り返し説明させていただいてきた。
しかし、残念ながら、今回のニュースへの反応を見る限り、良くも悪くも、水道事業への興味を持つ人は少ないのかもしれない。
それでも、宮城県には、これからも、これまでと変わらず全ての情報を提供していただきたい。たとえ興味を持つ人がいなかったとしても、これまでと変わらない情報公開を続けていただきたい。
そして、先のテレビ東京の事例のように、誤った報道をされた際には毅然とした対応を取っていただきたい。
県民の一人として、心から願っている。
また、このnoteを読んでくださる方々には、今この時も、各地の水道局や関連施設では、自治体職員の方々やその委託を受けた方々が、法令を守りながら水の安全を維持管理し続けていることをご理解いただきたい。
今回、残念ながらミスはあったが、健康被害のおそれのある水が供給されることは無かった。そして、ミスが隠されることはなく、すぐに報道された。
以前のnoteにも書いたが、水道水や水道事業について、事実に基づかない記事や憶測でしかない言葉が拡散され、不必要な不安が広まることのないよう、切に願っている。
2023.4.12追記
リンク先とニュースの日付を追加。
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