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子供の一日は長い、

海へ行って、岩場を渡り歩き
ところどころにある潮だまりに獲物を探して
イソギンチャクを棒でつついたりしながら
今日はどこの岩場まで行けるか
冒険する

勢いをつけて、飛び越える岩場。
ぎりぎりの距離、こないだは飛べなかったけど
今日は裸足で挑戦するから跳べる!

結局、距離が足りず海に落ち
半ズボンをほぼ濡らし
初夏の日差しに温まった岩場で
寝転がって乾かす。

でも子供だから10分とじっとしていられず、
今度は自転車に乗って防大(横須賀の防衛大学)
のグランドに潜り込んで、トーチカ(コンクリの砲台跡)に
よじ登り度胸比べ。

コンクリの凸凹を足掛かりにてっぺんへ行けるか?
上がれない子は、下で守衛さんが来ないか見張り番
遠くから、カブで守衛さんが来たら逃げないと
怒られちゃうから

てっぺんに行けると
僕らの学校、友達の家、鴨居の海岸、千葉まで
ぜーんぶ見える。山の上のさらに高いトーチカの上だから
ここいら一帯で、ここより高いところはない。
ここに上ったら、自分のしるしを残してよい事になっている
石で、「ケンジ」と刻んで、ほんとは「ヤッホー」と叫びたかったが
友達の手前、恥ずかしいので口の中で
小声で「ヤッホー」とつぶやいたところで、
下の見張りから声がかかる。

「来た!」
上るよりも怖いトーチカのてっぺんから、
足場を探りながら降りて、途中からエイっと飛び降りて
自転車で一目散に逃げる。
守衛さんはバイクだけど、安全運転
こっちは自転車だけど超無謀運転だから
追いつかれはしないけど、
ここは、かっこよく逃げないと。

次は、観音崎公園の何処かまで
遊歩道を自転車で爆走
転んだってへっちゃら。
すぐ起き上がって、力いっぱいペダルをこぐ
自転車が2台以上いたら競争になる
目的地は先頭が決める場所まで

5段変速のサイクリング車を
泥だらけにして、泥道をわざと水たまりを
突っ切るように走る。
そのころの親が見てたら、
間違いなく引っ叩かれる行状、
それをやるのが僕ら「子供結社」だ。

時々出会う散歩の大人に
睨まれても、今日は自転車だから平気
僕らの自転車は、何でもできる
魔法を持つているんだ
速く走れば走るほど、魔法は強くなった

先の見えない曲がり角も、
時折伸びている木の枝も、
ブレーキかける理由にはならない。
誰よりも先に走る事より
大切な事は今はない。

遊歩道を掟破りの
自転車レースで駆け抜け
海岸沿いの石畳の道にでる、

お地蔵様の前で
神様に怒られませんようにと
一瞬強く目を閉じて
ごめんなさい!
とつぶやいてまだ走る

車が通る、大きな道路の手前が
今日のゴールらしい。

ゴールしたら、公園の水道で
いっぱい水のむぞ
蛇口は一つだから
一番が最初にのむんだ
それが今日のトロフィーだ

ゴール   !!

代わりばんこに蛇口を分け合って
気の済むまで水道水を飲んだら
子供結社の放課後は
またまだ続く

子供の一日は長いんだから。











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