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ラグビー日本代表との激闘の裏にあった スコットランド代表と長崎県の絆

ラグビーワールドカップ予選リーグで、決勝リーグ入りを賭けて戦った日本VSスコットランド。

強豪スコットランドを撃破し、史上初のベスト8入りを果たした日本代表だったが、実はそのスコットランドの公式ユニフォームには日本とのある絆があった。



伝統のユニフォームに刻まれた「長崎タータン」


スコットランドといえば、タータンチェック発祥の地。

伝統衣装のキルトなどは、タータンによって仕立てられるのが習わしである。

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ラグビーのスコットランド代表のユニフォームにも、この伝統のタータンチェックが配されている。ワンポイントとして際立っているので、先日の日本戦で気づいた方も多いかもしれない。

では、このタータンチェックが、長崎市ゆかりのデザインであることはご存じだろうか?
 
 
それは、伝統の格子柄の一つに加えられた「長崎タータン」である。
 
 
今回のキャンプ誘致に関わった長崎県ラグビー協会関係者は、W杯のレガシー(遺産)として絆の象徴になることを願い、スコットランドのために特別にこの柄を提供したのだ。
 
 
長崎市に嬉しいニュースがもたらされたのは、2019年4月のこと。

同市は2010年にスコットランド北西部の「アバディーン市」と友好関係を結び、以来長らく交流を続けてきた。

その縁からスコットランド協会のマーク・ドットソンCEOが長崎市を訪れ、「長崎タータン」を同代表のユニフォームの襟の裏につけて臨むと発表したのだ。

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マーク・ドットソンCEO


 
 
 
幕末まで遡る、長崎とスコットランドの縁


実は長崎市とスコットランドの関係は、今から160年前の幕末まで遡ることができる。

来日した同地出身の商人トーマス・グラバーが、長崎で日本の近代化に貢献。

その邸宅は「旧グラバー住宅」として、世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」にもなっている。教科書でも取り上げられているので、ご存じの方も多いだろう。

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トーマス・グラバー

 
こうした背景から、長崎市や長崎県ラグビー協会は、歴史的につながりの深いスコットランド代表チームの誘致に乗り出し、スコットランド協会も熱意に応じて即答。全国で最も早くキャンプ地に決まったのだ。

前回のワールドカップ翌年の2016年から、代表選手によるラグビー教室や、子どもたちの選抜チームを相互に派遣しての親善試合など、ラグビーを通じた交流も始まったという。
 
 
 

両者の花を象徴する「紫色」をデザインカラーに


スコットランド伝統のタータンチェックは、全てのデザインが登記所に登録管理されているという。

そこでスコットランド協会は16年に友好関係を記念した「長崎タータン」を作り、正式登録後、長崎市に寄贈した。

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長崎タータン

 
デザインカラーには、県協会のチームカラーである緑をベースに、長崎市の花「アジサイ」とスコットランドの花「アザミ」に共通する紫色を使用した。

そして、今大会のスコットランド代表ユニフォームの襟裏に採用されたのである。

なお、このユニフォームを手がけたのは1971年創設のイタリアのボローニャに本社を置くスポーツブランド「macron」だ。

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試合中にこの襟裏の長崎タータンが時々見えて、とてもオシャレだった。また、試合会場でスコットランド国旗と日本国旗が半分ずつ縫い合わされた旗がはためいていたが、もしかするとこれは長崎の関係者の方々が掲げたものだったのかもしれない。
 
 
スコットランド代表のスチュアート・マキナリー主将は、キャンプ地でのサポートに対して「長崎の温かい応援を身近に感じて力強い」と感謝の意を述べたという。
 
 
長崎市や長崎県ラグビー協会は「長崎タータンがレガシーとして、高校の制服など市民に身近なものになってほしい」と期待し、試合の勝敗に関係なくW杯後も交流が続くことを願っている。
 
 
グラバーからのパスが、長崎の人々につながった。

このパスを未来につなげるのが、長崎の人々はもちろん、我々の役目なのだろう。


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