DOVEやリプトンのユニリーバは、「購買時点調査」で売上を爆上げさせた
商品を手に取った瞬間や、購入直後の顧客に「なぜ選んだのか?」を聞く
世界有数の消費財メーカーであるユニリーバ。石鹸のDOVEや紅茶のリプトンなど、圧倒的な知名度を誇るブランドを数多く抱えています。
日本だと他に、ビューティケア用品のLUXやmod's hair、クレンザーのジフ、スキンケアブランドのVaseline、アイスクリームのBEN&JERRY'Sなども有名ですね。ユニリーバのブランド一覧はこちらをご参照ください。
このユニリーバは以、前からコンシューマーの購買動機を調査・分析してマーケティング 戦略に反映していました。
それは商品を購入してくれたコンシューマーに対して、アンケートで「なぜその商品を買ったのか?」と質問して、購入理由を思い出してもらう方法でした。
しかし、同社は2010年過ぎから、買い物途中に商品を手に取った、もしくは購入した直後のコンシューマーに対して質問する「購買時点調査」を導入しています。
ブラックボックスだった、店頭での意思決定の瞬間
購買時点調査、ユニリーバが「In The Moment」と呼ぶこの調査は、店頭に調査員が立ち、顧客が調査対象の商品を選んだ瞬間に割り込んで「なぜその商品を選んだのか?」を聞く調査手法です。
あるいはモバイルアプリなどを活用して、購入直後の顧客に同様の質問を行う手法もあると同社は解説しています。
購買時点調査が力を発揮するのはユニリーバが扱っているような一般消費財だと言われています。
たとえば、家電製品や家具などは、機能やサイズ、価格、デザイン、ブランドなど多種多様な要素を、店頭に行く前に時間をかけて検討することが多いと思います。
一方、お茶などの清涼飲料水はどうでしょうか?
購入前にブランドごとの違いを十分に検討する人もいるかもしれませんが、たいていは店頭に来訪してから非常に短い時間で商品を選択していると思います。
この店頭での意思決定の瞬間、アメリカでは「第一の真実の瞬間(Moment Of The Truth)」と呼ばれていますが、そこのデータは当時まだ十分に取得できておらず、ブラックボックスとされていました。
第一の真実の瞬間に何が起きているのか?それを明らかにするのが購買時点調査の目的というわけです。
消費者は行動の理由を、合理的な理由に作り変える?
購買時点調査はユニリーバに、実に多くの新しい発見をもたらしました。
たとえば、ビールを購入したコンシューマーに対して、ある程度時間が経ってから質問をした場合と、購買時点で質問をした場合だと、前者では購入理由を平均3.8個を挙げるのに対し、後者では平均1.4個の理由しか挙がりませんでした。
さらに前者では価格の安さや特売などを理由に挙げていたのに対し、後者はよく知られたブランドだからという回答が最も多かったのです。
この調査からわかったことは、消費者は自分の行動の理由を、時間が経過すると合理的な理由に作り変えてしまう性質があるということ。
つまり、真の購買理由を探るためには、購買時点調査のほうが有効であることを導き出したのです。
購買時点調査に基づき、購買に至る経路全体でマーケティング戦略を再構築
同社のグローバル・ショッパー・インサイト・ディレクターを務めるAske van der Werff氏は「人はなぜその行動をしたかということよりも、何をしたのかを正確に覚えている。よって、何をしたのかに重点を置いた調査を行うべきだ」と述べています。
左の女性が、Aske van der Werff氏です。
そして彼女は、コンシューマーのメンタル面と物理面の両方を満足させるためには「購買に至る経路全体で考えなくてはならない」とも述べています。
そこからユニリーバは、店頭でのコンシューマーの意思決定の瞬間や、それ以前の自宅での意思決定、あるいは来店途中での意思決定も重要視して、マーケティング戦略を再構築していったそうです。
2013年の純利益が前年比で約5億ユーロも上回り、その後も右肩上がりの成長を遂げているユニリーバ。
その要因のひとつに、上記のインサイト調査の切り替えが貢献した可能性は高いと言えます。
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