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居候する丸メガネの男

放送開始から今年で50周年。お茶の間で長く親しまれるテレビ番組『サザエさん』。日本中の誰もが知っているこの番組は、世界で最も長く放映されているテレビアニメとしてギネスブックに登録されているほど。多くの人から愛され親しまれる、国民的作品と言える。

そんな昔から慣れ親しんだ『サザエさん』だが、近頃、私はとたんにある登場人物から目が離せなくなっている。それは、磯野家が抱える居候、フグ田マスオ。磯野家に転がり込み、平然と暮らし続けるヤベェ奴だ。

実はかく言う私も、妻のご家族と一緒に暮らす居候人間のひとりである。

私の場合、義父と義母と妻と私の4人暮らし。義理の兄もいるが、東京で一人暮らしをしているので、たまに帰ってくる程度。

しかしマスオさんの場合、波平、フネ、サザエ、カツオ、ワカメ、タラと合計8人。もしも私がマスオさんの立場だったたら、こんな窮屈な生活は出来ねぇと言って発狂するか家出するだろう。あの家族の中に紛れ込んで生活を共にするなんて、マスオさんじゃなきゃできないよね、と思う人は多いのではないか。

磯野家を国家に例えるなら、権威主義国家のようなもの。波平による統治がなされ、ああしなさい、こうしなさい、それはダメ、それに「ばっかもーん」という一言。波平という絶対権力者によって統制され、基本的に周囲はそれに従っている。

対して、私が住んでいるのは、民主主義国家のような家。個人の自由が尊重され、何でも好きなようにやらせていただいている。本当に有難い。義父はアメリカ人なので、なんでもHelp yourselfといった調子。義母は、自営業でケーキ屋さんをしているので、生活リズムが異なって顔を合わさない日もあるため、一緒に生活しているというより、もはやルームシェアをしている感じである。私も妻も、普段は仕事をしているので、平日にみんなで一緒に食事をとることもない。

マスオさんについて気になることは山ほどある。家賃は払っているのか。風呂は何番目に入るのか。風呂で体を洗うタオルは兼用か。居間に自分のモノを置くスペースはあるのか。冷蔵庫は勝手に開け閉めできるのか。夜の営みはどうしているのか。いずれ磯野家を出る計画はあるのか、等々。

私はマスオさんと同じ居候生活者ではあるが、きっと気を遣う局面では大きな差がある。居候は居候でもレベルが違うのだ。あんな生活を続けて気苦労しないのだろうか。会えるもんなら会って訊いてみたい。まぁ、キャラクター相手にインタビューなんてできないので、調べてみると、、、、
やはり、マスオさん、過去に病んでいたことがあるらしい。

「連載初期のマスオはしばしば神経症を患っており、それを紛らわすためや、サザエの怒りを抑えるために精神安定剤を常用していた。」
──『サザエさん』公式サイトより抜粋

うん。初期の頃のマスオさん、結構ヤバイです…(笑)。にもかかわらず、連載初期から50年経った今では、うまく立ち回り、磯野家の潤滑油的役割を果たしているではないか。居候界の鏡である。

ぼくの場合は、結婚と同時に海外移住の申請を始めたため、わざわざ二人で住む部屋を借りるのもアホらしくて、一時的にマスオさんスタイルの夫婦生活を送ることになった。(一時的にといいながら長引いてはいるが……)

ぼくは過去に、寮生活、ホームステイ、ルームシェア、同棲も経験したことがある。なんんら共同生活には慣れている。しかし、それでも妻のご家族と一緒に暮らすマスオ生活まで難なくできるか心配だったが、いちおうそれなりにやっているつもりだ。

そんな私にとっての教祖は、言うまでもない、フグ田マスオである。マスオさん、あんたはスゴい。磯野家に居座り続けるあなたは、集団生活の上級者。居候界の日本代表と言っても過言ではない。私はマスオさんを神のように崇めながらこれからもマスオ生活を送っていこうと思う。

先日、丸眼鏡を購入した。勿論、マスオさんへのオマージュである。ジョン・レノンや、スティーブ・ジョブズ、ガンジー、新渡戸稲造といった偉人などはなく、正真正銘、フグ田マスオへの敬意を込めて。やっぱ形から入らなきゃね。

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