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失くして生まれた畏敬はプレシャス

 大型家電量販店のおもちゃコーナーに行くと、2歳の娘の好きな森羅万象が揃っており、シルバニアファミリーの遊園地やリカちゃんのドールハウスで延々遊ぶその横顔が最高にカワイイし丸いし、キラキラ輝く真剣なまなざしの吸い込まれるような美しさは賑やかな店内の音を消すほどだ。

 娘がいろんなおもちゃをためつすがめつしている中に、最近ハマり始めた「デリシャスパーティ♡プリキュア」のフィギュアがあった。3頭身ほどで小ぶりながら普段着とプリキュアの着せ替えが楽しめるハイクオリティな逸品である。
「プリキュアさん、かわいいねえ!」
 とパッケージを手に取り興奮する娘。

 この日は、奧さんもいっしょに、保育園の送り迎え用の電動自転車を見にきていて、娘には試乗に何度も付き合ってもらった。がんばってくれたから、奧さんと相談してプリキュアのフィギュアを買ってあげることにした。

「あける!」
 と開封してほしそうだったので、ベビーカーに乗った娘にキュアプレシャスのフィギュアと着せ替え用の服を渡した。娘は、
ちょうふくようふく、おきがえしましょうね」
 と言いながら、器用に服を外したり付けたりして夢中で遊んでいたが、疲れがでたのかほどなく眠ってしまった。

 そして気がつくとフィギュアがその手からなくなっていた。

 びっくりしたが、めちゃめちゃよくあることなのだ。なので、もちろん外出先で娘におもちゃを渡すときは注意するのだが、こちらの意識の空隙を突くように紛失は起こる。
 晴れの日が続いてもときどきは雨が降る、というくらい自然なことなので、悔しさはあまりない。ただそれは無くしたら無くしたで仕方ないから諦めるかぁ、ということでは一切ない。

 ベビーカーで娘が熟睡している間、奧さんと全力で落としたキュアプレシャスを探した。
 その日歩いた道を目を皿にしながら遡ると、フィギュア本体を見つけることができた。駅と家電量販店の連絡通路の隅に、誰かが避けておいてくれていたようだった。

 街中でときどき見かける、落とし物を道の目立つ場所に避けておいてくれるというこの優しい現象に何度たすけられたかわからない。拾ってくれた方、感謝してます。

 だだ、この日に関しては、キュアプレシャスの着せ替え用の服の一部が見つからないままだった。
 小さなパーツだけど、このフィギュアの肝となる部分だし、着せ替え遊び大好きな娘のためになんとか見つけたい。

 立ち寄った店や施設のインフォメーションを訪ねたり電話をかけたりした。担当のおねえさんは親身に対応してくれたが見つかることはなかった。見つかったら連絡してくださるとのことで、連絡先を用紙に記入して渡すと、
「見つかること祈ってます。小さいおもちゃの部品でも拾って届けてくれる方はたくさんいますので」
 と気遣いの言葉をくれて、嬉しい気持ちになった。
 小さなおもちゃのパーツ一つでも、誰かにとってのその価値を想像して拾ってくれることもあるということだろう。

 今のところ無くしたフィギュアの服は見つかってないけど、娘は残った服とフィギュアでずっと遊んでいる。パーツが一部不足してることは気づいてるっぽいけど、楽しさが勝ってるみたい。加点法で生きる娘、さすがだ。
 ごほうびに買ったちょっといいおもちゃを買ったその日に一部無くすというのは残念だけど、我々は全力を尽くしたので、この日の出来事は「残念」で終わらずひとつの経験やドラマとなった。

 ウルトラ可愛い娘のために、何かを必死に求めて探す、という行為はある意味エキサイティングだ。
 街の優しさを感じたし、パーツが揃っていなくてもめちゃくちゃ嬉しそうに遊ぶ娘のたくましさを感じることもできた。

 今朝も娘は、キュアプレシャスといっしょに、
「おにぎり、どうぞ! パクパク! めっちゃおいしいねぇ!」
 とおしゃべりしながら朝ごはんを食べてごきげんだ。

読んでいただきありがとうございます!!サポートいただければ、爆発するモチベーションで打鍵する指がソニックブームを生み出しますし、娘のおもちゃと笑顔が増えてしあわせに過ごすことができます。