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その取捨でいいのか娘

 昨年の話だが、クリスマスプレゼントの包装資材を調達するために、3歳娘といっしょに近所の100均ショップに行った。
 ぼくはじっくり見たかったので娘に、

「好きなもの一個買っていいよ」

 と言った。
 すると娘は、

「オッケー」

 と言って、別行動をはじめた。

 ぼくが包装紙材を見てるとどこからか「とうちゃぁーん!」と呼ぶ娘の声。
 娘をみつけると「これにする!」とオモチャを持ってきた。
 紫色のお医者さんごっこセットだった。聴診器と注射器と体温計がセットになっている。
 とってもかわいいのだけど、ひとつ問題がある。

「お医者さんごっこのオモチャ家にあるやん。キティちゃんのやつ」

 そう。もう家にあるのだ。だが娘は、

「でもいいの!」

 と譲らない。
 ちなみに家にあるヤツは商店街のおもちゃ屋さんで800円くらいで買ったものだ。
 聴診器、注射器、体温計だけでなく、カルテやバインダー、診察券、飲み薬、目薬も入っている。しかもキティちゃんのかわいいイラストも入っている。ぜったいこっちのほうがいいと思うんだけどなぁ。
 ぼくはそう思ったので娘と交渉することにした。

「じゃあ家にあるキティちゃんのお医者さんセットは、誰かにあげちゃう? そしたら買ってもいいよ。でも、もうキティちゃんのやつでは遊ばれへんで?」

 こう言えば諦めると思った。娘にとってキティちゃんのお医者さんセットは大切なはずだ。

「うん、そうする!」
「えっ……いやぁ〜〜、ほんとに?」

 想定外の返答だった。え、まじで。キティちゃんのやつもういらないの?

「え、待ってちょっと、ほんとにあげちゃうの? キティちゃんのやつ」
「うん、それでいい」

 ぼくは狼狽えてしまった。まじで? いいの? だってついこないだだってキティちゃんのお医者さんセットでさ、「とうちゃん、きょうはどうしましたか?」「え? いやどうもしませんよ?」「えー! かぜでしょ! ほねもおれてますよ!」「いや、だいじょうぶですって」「ちゅうしゃをしましょうね!」「ちょっと! それなんの薬入ってるんですか!?」「………(ニヤニヤして注射を刺そうとしてくる)」「せめてなんの薬か教えてください!」「いちご味です!!」「味じゃなくて!」「えひひーッ!(強制注射!)」「元気ですかから! やめて!」「ぎゃへへひひひーッ!」「ウワーッ!」とかやって遊んだのに??

 えーどうしよ。古いおもちゃと交換するという考え方自体には賛同だけど、コレとアレを交換かぁ〜。
 ──などとぼくが瞬間的に悶々としてると、娘は、

「とうちゃんやっぱりコレにする!」

 と、別のおもちゃ(ミニチュアのお風呂セット)を持ってきたので、

「あ、うん、いいよ」

 と、ぼくは胸を撫で下ろしながら承諾したのだった。

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