「きっといい日が待っている」子供のころの不幸はどうしようもない
自分たちのちからではどうしようもない。
それが「子供」の時代の最大の不幸だ。
「子供のころの不幸はどうしようもない」と割り切って次の人生に進める人とその時の傷に一生苛まれて人生を破滅へと進んでいく人がいる。
詰まるところ子供の不幸とはすべて周りにいる大人たちのせいだ。
大人の都合でとんでもない場所に住まざるを得ないという子供たちはこの日本においてもたくさんいる。
本作のように児童養護施設が地獄のような場所だというのは至極当たり前の常識と言っていっただろう。
それは何も半世紀前の欧州が舞台だからというわけではない。
今現在の日本だって大差はないだろう。
私の知っている児童養護施設育ちの子は皆一様に日常的にレイプをされ暴力を受けている。
そして彼らは「そんなもんだ」という感覚のまま育ちその感覚のまま社会に出て初めて当たり前の世間とのズレを感じ始め適応できなくなっていく。
本作で救いがあるのは主人公の二人には自分を絶対的に愛してくれていた母親という存在を知っていたことだ。
だからこそ自分たちが新しく放り込まれた場所の異常さに気がつくことが出来る。
本当の地獄とは「家」がとんでもない場所なことだ。
宇宙飛行士にあこがれる兄弟の弟であるエルマーを中心に物語は進んでいく。
かれの飛躍した想像力やかわいい笑顔に馴染んだ後、お尻から太ももまでを真っ赤な血に染めて「来ないで!見ないで!」と叫ぶシーンでは文字通り胸が張り裂けそうになります。
所長役の俳優の雰囲気が素晴らしかったです。
まさにこの役にはぴったりな冷徹な顔と雰囲気を作り上げていました。
こういう人が怖いのは心底「子供のためにやっている」と思っている部分があることで、そこを軸に支配欲や名誉欲がまとわりついている事。
そしてその彼を崇め奉る犬のような馬鹿たちがより一層その力を強固にしていく。
その様子をかなり露骨に描いています。
どれほど藻掻いても子供のころの不幸はどうにもならない。
でも、今の自分は「不幸なんだ」と気が付くことが出来る下地は誰かからの無償の愛情に育まれたことがあってこそ。
それがあったからこそこの主人公二人は早く危機を脱することが出来たのだろう。
残っていった彼らの運命は恐らくもっと過酷で悲惨なものだったろう。
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