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「家族不適応殺」インベカヲリ★

2018年6月 
新幹線車内で起きた
無差別殺傷事件に関するルポ。

①印象が違う

ニュースで見た時は
サイコパスか、
ケダモノのような
粗暴な男の犯行かと思っていた。

しかし、この本を読んでみると
まるで印象が違う。

記憶力の高さ
読書家
友達も多く
獄中結婚を考えるほどの
異性との付き合いもある。

不良だったわけでもない、
むしろいい子。


家族はちゃんとした人たち。

母親は"マザーテレサ"とまで思われる程の
奉仕活動家。

犯行動機は
ただただ「無期懲役になりたかった」
中学生の時から
刑務所に入りたかったらしい。

無期懲役になるために
人を殺し

しかもまだ20代そこそこ、
一体何年入ることになるのか、、

理解し難い。

読めば読むほど
理解できなくなる。

作者も犯人を理解することが難しかったと言う。

②母親として思うこと

犯人小島一郎の母親は
息子のことを、
本当に何にもわからなかったんだと
いうことに絶句した。

子どもからのSOS
たくさんあった。

なのに、
自分の息子にがっつり向き合うことはせず、
血のつながらない
他人を助けることに時間をかける。

犯人は
「父方の祖母にいじめられた。
母親の悪口を言っていた」
と言う。

でも、母親は
姑に育児家事を任せっきりにしてきた
負い目からか、
姑を悪くは言わない。

夫はモラハラ夫ぽいし
夫婦仲は悪そう。

なのに離婚もせず
夫の稼ぎがあるから
無給で社会奉仕活動ができると言う。


なんだか、この母親が
自分をひどく蔑ろにしているように
思えた。

一見、好きな仕事に邁進する
素敵な女性にも思える。

けれど

無給で奉仕活動をすることで

罪悪感や負い目、罪の意識から
逃れようとしているように思えた。

犯罪は母親の責任ではない。

いろんなことが複雑に絡み合い
事件は起った。

だけど、どこかで誰かが

犯人の話を聞くことはできたのではないのか。

気持ちに向き合うことはできたのではないのか。

③犯人が究極に求めていたもの

犯人が物理的な貧しさから
最低限の生活を確保できる刑務所を
希求していたのなら、
なんとなく理解はできる。

しかし、犯人の家庭は
普通、むしろ豊か。

今、ほとんどの日本人は
よっぽどの極貧でない限り
屋根と火と水は確保できる。
国に守られている。

犯人が求めていたものは
物理的な豊かさ、ではないのだ。

刑務所も、
新幹線も、
閉鎖的な空間、逃げ場のなさ、
きちんと管理されていると
いう点で
似ていると思う。

子宮も家庭もそれらに
似ていると思う。

管理されてはいるけど
自由はない。

自由に好きなことをすることは
多くの人間が求めることだと
思っていた。

けれど
実はそうでもないのかもしれない。

④これは犯人に限ったことではないのかもしれない。

一つの犯罪は
多くの人の深い思いを
反映しているのかもしれない。

犯人の問題も
母親の問題も
父親の問題も
家庭の問題も
実はどこにでもある
ありふれたものなのかも
しれない。

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