服を作る
<きっかけ>
服を作り始めたのは、2008年に、J・CREWという米アパレルブランドが日本から消えたことがきっかけでした。
ライセンス契約していたレナウンが、店舗販売から撤退したのです。
J・CREWはお気に入りのブランドでした。
デザインはオーソドックスでシンプル、色がきれいで、質がよく、リーズナブル。品のいいアメリカの大学生のイメージでした。
一度好きになると、ずっとその店で買う人間なので、途方にくれました。
これから洋服をどこで買えばいいの、、、。
<出会い>
そんな時、出会ったのが、茅木真知子さんのソーイング本と、布とパターンのお店 RickRackさんです。
この本は、どの服も素敵で、眺めているだけでワクワクしました。
茅木さんの服は、THE普通。懐かしさのある、でも古くないデザイン。
茅木さんは、元々「装苑」の編集者だった方です。
かつての装苑は今とは違って、ソーイングに特化した雑誌だったんです。
そして、ちょうどそのころ、高校生だった私は装苑に掲載された服を、裁縫ができる母に教わりながら作っていたんです。
黒いチェックのジャケットとスカートのセットアップでした。
きっと、茅木さんが手がけられたものだったのではないかと思います。
今でも、茅木さんの本には、チェック愛があふれていますから。
私はデザインされすぎないシンプルな服、昭和30年代っぽいブラウスとスカート、、朝ドラ「梅ちゃん先生」の堀北真希ちゃんが着てそうな服が好きなんです。
その理想にばっちり合うのが茅木さんの服でした。
特に専門学校等でソーイングを習ったことはないですが、
この本に載っているスカートなら作れるんじゃないか、と思いました。
ただ、布の調達が難しいと思いました。
近くに手芸屋さんはあるけど、手芸用の布は、服には向かないです。
そこで、ネット検索してみると、いろんな布屋さん、型紙屋さんがあることを知りました。
Rick Rackさんは、ソーイング初心者でも縫いやすい、布とパターンを提供しているお店です。
パターンは流行に左右されないシンプルなデザインで、作り方解説書は初心者にもわかりやすく、写真を含めて構成されています。
<縫ってみた>
最初に縫ったのは、パターン・茅木真知子 ボックスプリーツのスカート 布・RickRack ネイビーの綿麻だったように記憶しています。
ミシンは嫁入り道具として買った3万円ほどの家庭用です。
中高生時代に家庭科でスカートやパジャマは縫っていますし、
見様見真似です。
ほぼ初心者にしては、そこそこいいものが出来上がって、家族にも好評で、
それ以来、十数年自分用の服を作り続け、今は、Tシャツとカーディガン以外は、自作です。
裁縫は、本当に下手です。何度やっても、失敗ばかり。
でも、着てしまえばあらが目立たないというか、まず、私の服がハンドメイドとは知らない人は、縫い目がどうとか、へんなところにギャザーがよってるとか、そんなことまったく見ないです。
家族だって、「え?これも作ったん?」って言うくらいです。
布が良質だと縫製が下手でも、服としてちゃんと着られるものが作れてしまうんです。
それくらい良質の生地の威力って圧倒的なんです。
デザインはシンプルな方がいいということにも、気づきました。
市販の服は、ちょっと凝ったデザインのものが多いですが、それは、凝った部分に目を行かせることで、良さげに見えるようにできていると思います。
あるいは、流行を取り入れたものしか、店頭には並びません。
”流行りもの=みんなが着ている=安心”
多くの人は、ほかの人と同じものを着ることで安心を得る、、という心理を企業は知り尽くしているのでしょう。
でも、ハイブランドの服って、シンプルでかつ流行に左右されていないんです。
それは、良質の生地を使っているから、デザインで目を引かなくてもいいからでしょう。
ハイブランドが流行を作り、流行の最先端を行ってるように見えますが
実は、ハイブランドこそ、流行なんてものには無関心なんじゃないかと思います。
もちろん、ファッションの流れには敏感だとは思いますが、その流れにただ身を任せるのとは違いますよね。
<得られたもの>
私が服作りで、最も手に入れたもの、、
それは、満足です。
かつては、こんな服が着たいなあと頭に思い描いて服を探しに行っても、まずその通りの服を買えることはありませんでした。
あったとしても、サイズが合わない、予算オーバーなどなにかしら不足感がありました。
しかし、ハンドメイドだと、色、デザイン、素材、サイズ、ほぼ頭に思い描いたものが作れます。
そして、コットンなら1メートル2000円も出せば、肌に優しい着心地のよい生地が買えます。お財布にも優しいんです。
満足を得た結果、幸せを得る。幸せを得て、さらに次に進む行動力と希望が得られる。
欠乏感ばかりでは、人は前へ進めないのかもしれません。
なぜなら、足りないところを埋めることにたえず躍起になっている状態だから。
たとえるなら、穴に土を入れて埋める、埋めるためにまた穴があくから、またそこを埋める、、という繰り返し。
服というカテゴリーにおいてだけの満足であっても、ひとつ満足を得られると、何に対しても前向きになれた気がします。
そして、服が大好きということにも、気付きました。
縫うことはいまだに苦手です。
毎回、今度こそは失敗しないように、丁寧に縫おうと思うのですが
どこかしらミスをして、あっちゃーっとなります。
でも、平面の布が立体の服に変化していくワクワク、
できあがりはどんなものになるんだろう、、という未知へのどきどきがあるから、苦手なこともなんとかできてしまうのでしょう。
好きは最高の人生のギフトです。
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