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映画「MINAMATA」〜矛盾との闘い

2020年

観に行ってきました。
見応えがあったし、映画そのものが美しく、映画館に観に行けてよかったです。

1970年代、LIFE誌に掲載された水俣の写真を撮ったアメリカの写真家 
ユージン・スミス(ジョニー・デップ)。
通訳の日本人女性アイリーン(美波)と共に熊本を訪れ、
水俣病の実態を記録しようとするが、様々な妨害にあい、、、。

テーマが社会派だから重いとか、公害のことを考えなきゃいけないとか

そういうの抜きで、映像がほんとにきれいで。

冒頭のロックのサウンド、ブルートーンの風景、ジャズ、海の静けさ、
田舎の穏やかさ、坂本龍一の音楽、そして出演者の演技が素晴らしい。

アメリカ映画に出てくる日本人って、
中国人や中国系の俳優が演じることが多いですが、
この映画では、
日本国内で活躍している、力量のある日本人俳優が起用されており
日本語のセリフがきちんと耳に届く点で
物語に感情移入しやすかったです。

舞台が熊本なんですけど、
実は日本、セルビア、モンテネグロで撮影されたそうで、
だからかな、
日本の情緒もありながら異国っぽい色彩もある、
不思議な空気を感じました。

ジョニー・デップは50をすぎてもほんとに枯れない俳優ですね。

役柄は、アルコールに溺れ、沖縄戦取材のときのトラウマもあって、
ボロボロの状態なんだけど、
ふとした瞬間に男性としての色気が溢れ出ている。

プロデュースもしているということで、この映画にかける意気込み、情熱を演技から感じます。

アイリーンを演じる女優の美波は、
男に媚びない、けれどユージーンの才能に寄り添う
強さとしなやかさと愛情を感じました。

化学工業会社チッソの社長が國村隼。

大金と引き換えに撮影を断念させようとする、
映画中のいわば悪役。
公害を出した会社の責任者であると同時に
地域の人々の生活を支える企業、
ひいては日本に益をもたらすトップとしての
揺るぎない態度に説得力がありました。

家族が水俣病で脳性マヒになっても、チッソという会社で働いて
家族を養わなければならないひとたち。

ユージーンの昔の写真を元に暗室と作業場を見事に再現して用意するほどの
日本人のホスピタリティと、
チッソと闘うユージーンたちに対する仕打ち、暴力。

ひとつの物事の中に相反するものが存在する。
矛盾。
他者との闘いであり、自分の中の矛盾との闘い。

印象的だったのは、
撮るもの撮られるもの、どちらも魂を抜かれるというセリフ。

スマホで生活の一部を撮影して、ネット上にのせてってことが誰にでも気楽にできる世の中だけど、
写真を撮る、撮られるということは、状況によっては命がけの闘いでもあるのですね。

写真が持つ訴える力、人の心を動かす力、世の中を変える力、
何かを伝えようとする、伝えたいと思う人の熱。

映画もまた、その力と熱を持っているのだと感じました。

水俣病の問題を越えて
被害を訴え、長年闘い続け、無力を感じ、諦めたり、諦めかけたり、そういう人たちの物語でもあると思います。







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