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やりたい仕事は、「業種」ではなく「感情の傾向」で決めよう

学生や社会人に向けて、「やりたいことを見つけよう」という見出しがおどる今の世の中ですが、具体的なやりたいことなんてそうそう見つかりません。

ちなみに、このように「やりたいこと」と言われる場合、結果的に仕事や職業を指すことが多くなります。

「まずは趣味とか、純粋なやりたいことでもいいから見つけようぜ!」とか言われたりしますが、例えば「ゲームやりたい」とか思っても、「じゃあ社会人としての人生はどうすればいいの?」という問いの答えには直結しません。

僕は大企業を辞めた5年前、改めてやりたいことを見極めようとしましたが、やっぱりよくわかりませんでした。ただ僕の場合、運よく、はっきりと分かっていた自分の性質が2つありました。

1.僕は、人を笑わせることが何よりも気持ちいい。
2.僕は、健康を害すると非常に気持ちが落ち込み、ツラくなる。

自分のことは結構わからないもので、「アナタどんな人?」と聞かれても、当時の僕はそうそう上手く答えられませんでしたが、上の2つだけは偽りなく、確かに自分の中の感情を大きく占める要素でした。今も変わっていません。

僕は「おもちゃ開発者」の仕事をしていますが、おもちゃ開発をやりたいからその仕事をしているわけではありません。結果的に10年その仕事をして、できるからやっているだけ。あえて言うなら、作ったおもちゃで人を笑わせたいからやっています。だから、笑いのないジャンルのおもちゃは作らないし、そもそも作る能力がありません。笑いという要素なしで、面白いものを作れないし、「笑える」以外の方向性の発想がとても苦手なのです。

近年、企業だけでなく、小学校から大学に至るまで、いろいろなところで講演をさせていただく機会が増えましたが、いつも「やりたいことを探すよりは、自分はどんな瞬間が気持ちよくて、逆に何がツラいかをちゃんと分かろう。」と話しています。きれいごとではないその答えを分かっていることが、非常に重要です。

「社会貢献したい」→本当に?
「グローバルな仕事がしたい」→本当に?
「お金持ちになりたい」→本当に?
「チームで何かを成し遂げたい」→本当に?
「成長したい」→本当に?

人をウソつき呼ばわりするわけではありませんが、人間は自分にウソをつきます。僕もそうです。会社員時代、「おもちゃが大好きで、おもちゃの力で世界を平和にしたい」と言っていました。でも本当は、世界に興味もなければ、おもちゃが大好きでもありませんでした。

また、ものづくりのコミュニティを作って自分の周りに人を集めようとしたりしました。でもちゃんと自分を知ると、そんなこと全然やりたくありませんでした。いろんな人と、1対1(サシ)でものを作りたかった。3者以上集まって議論するのはとてもストレスでした。

大好きなのは、人を笑わせることだけ。そして、いつでも安心して、心身が健康であることがとても大切。

そう分かると、それが叶う仕事なら何でも楽しい仕事になります。偶然始まった仕事でも、やるかやらないかの判断がつきやすいし、思い切って新しい仕事に飛び込んでも、その感情の傾向を指針にしていくと、思わぬ自分の新境地が見つかったりします。実際起業してからの5年間で仕事の幅は自然に増えていきました。

まず自分にとってツラいことを避け、気持ちいいという感情が起こる仕事を知ることができれば、自然に情熱を注げるし、成功確率も上がります。

「お金をたくさんもらって好きな生活をするのが一番気持ちいい」
「Web記事で取材されるのが一番気持ちいい」
「アイデアを口だけでどんどん言っているのが一番気持ちいい」
「場所や時間に縛られないことが一番気持ちいい」
「正確に単純作業を片付けていくのが一番気持ちいい」
「定時で帰って家でネットするのが一番気持ちいい」

このくらい正直に言語化して、仕事で起こった時に一番気持ちいいであろう感情を想像しておきましょう。やりたいことではなく、自分の感情の傾向を素直に認め、周りにも伝えましょう。そして、どんな仕事を始めたとしても、自分の感情を指針にして、自分にできる仕事から始め、徐々に自分だけの仕事を作っていきましょう。(ちなみに、ウソから出たマコト、も大いにあると思います。やっているうちに、感情の傾向がだんだんわかってくるパターンの方が、実際は多いかもしれません。)

これからの時代、誰もが必然的にいろいろな仕事をすることになります。生涯の天職を選ぶ必要なんてないし、仕事を何度変えても大丈夫です。ただ、自分の感情の傾向にウソをついて、カッコいいっぽいやりたいことを宣言しながら仕事を続けていると、成長速度も遅くなり、成果も出にくくなります。

今日も僕は健康でいられる仕事を引き受けて、人を笑わせるアイデアを考えまくります。でもそれがどんな仕事かは、今日が始まってみないとわかりません。



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