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「スモール起業1年目あるあるカルタ」を作ってみた


2014年後半に、僕は大企業を退社し、株式会社ウサギという2人の会社を作りました。起業はもちろん初めてだし、何も分かっていませんでした。そもそも辞めたのは体調不良が原因だったし、起業のきっかけは恩師が今の相方を連れてきて「こいつと会社やれよ」と言ったことで、自分は「転職するか、個人事業主になるか、どうやって生きていこう…」とふらふら考えていただけだったので、完全に成り行きでした。

そんな、大企業1社にしかいたことのなかった世間知らずの僕が、小さな会社を作って代表になり、自分で仕事を作らないと収入が得られない状況になった1年目。それは、すべてが初体験で、たくさんの人に支えられ、痛々しく滑稽で、第2の青春の様な時間でした。

その日々を思い出し、例えばこれから起業したいなと考えている人や、すでに起業している仲間の人たちなどに、ネタ程度に見て欲しいなと思い、起業1年目に実際あったことを「50音かるた」にしてみました。この記事では、その作った読み札を紹介していきます。

うちの会社は社員を増やすことも、事業の拡大を目指すこともないスモール起業で、僕自身もよく「最弱のビジネスパーソン」と(いい意味で)紹介されるので、決して全員に当てはまるものではありませんが、共感される部分もあるかもしれないので、良かったらお付き合いください。

それではレッツゴーです。

※絵札に登場する「凹」の形みたいなキャラクターは、Instagramでも連載している、僕の分身であるウサギです。凹は弱みを表現したマークであり、最弱会社を自称する株式会社ウサギのロゴキャラクターです。


「あ」:朝会行って疲弊する

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起業当初はもちろん仕事がなく、無計画で辞めた僕は非常に焦っていました。仕事作らなきゃ…! と。それでいろいろな人に誘って頂き、「朝会」なるものによく行きました。夜の異業種交流会もたくさん行きましたね。

朝会は、当たり前ですが朝が早いんですよね。で、みんなエネルギッシュで、クロワッサン片手に自分のやっている仕事の話をして名刺交換。もちろん朝会は有意義な場なのですが、単純に朝に弱かったので大変でした。

そこで最初に立ち話をした人から、「起業したからには大きいことしないと意味ないよね」みたいな話を聞かされました。この経験は僕にとても大きな気づきをくれました。「自分は、小さいことがしたいんだよな」と。

とはいえそれは自慢でもないし、自信もなく、じゃあなぜ起業したのか、この時期にはまだ明確に言語化できていませんでした。それほどふわっとした奴だったのです。そしてここから2年ほど迷走するわけなのですが、最終的に、最近いろいろなところで話している、うちの会社の理念:健康第一に行きついた背景には、朝が弱いのに頑張って朝会に行っていろんな人の起業哲学に触れたことがすごく影響しています。だから結果的に行って良かったです。僕にとって起業は、健康に生きるための戦略だったのです。


「い」:家で昼間に仕事してると奥さんがイラつく

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オフィスを借りるお金もないので、資料作りなどの作業は家でやるのですが、当時、子供がまだ1歳で、奥さんは子育てで最もイライラする時期でした。それで、僕が自宅の書斎で仕事をしていると、「こいつ、日中なんで家にいるのに家事も育児もやらないんだ」みたいな空気が流れるわけです。なるべくそうならないように、夜や休日は仕事しないで、できるだけ家の仕事をするのですが、「日中のニート感」をぬぐえないんですよね。これは多分あるあるで、当時何人かの起業友達と似てることを話しました。

結局、家に居すぎるのはお互いに良くないということで、今は資料作りの時間でも、コワーキングスペースに滞在して仕事しています。距離感ですよね。今でも晩御飯の時間に帰れるときは皿洗いだけはやっています。起業は人生であり、家族一丸のものだと思っています。


「う」:打ち合わせに呼ばれ続けいつまでも何も起きない

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起業当初って、やったことがないから、どのタイミングでお金とっていいか、お金の話をしていいのかすら、分からないもので。何も起きていないのにお金の話をする自分がなぜか嫌らしく思えてしまうんですよね。

で、「何か一緒にやりましょうよ」みたいに声をかけていただいて、ついて回って、気づいたら半年経つ、みたいな。相手が大きくて有名な会社なら尚更で。もちろんお声がけいただくことは本当に有難いことで、僕が何も起こせなかっただけなのですが。

このバランスって、多分どこまでいっても苦手な人は苦手だと思うんです。なので僕の場合は、えいや!で、仕事料を完全に一律で決めて、それで合うか合わないか、にしてしまいました。気弱な人は、料金表を作って、後ろ髪を引かれても合わないなら仕方なし、の方がいいかもしれません。


「え」: 駅からちょっと遠いコワーキングスペース絶対行かなくなる

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コワーキングスペースを検討したとき、いろんな人からお誘いも受けたし、面白そうなところもたくさんありました。オフィスで空いているスペースを皆でシェアして面白い人で集まろう、というコンセプトとか。それはすごく魅力的なのですが、「ここ、遠くね?」っていう場所がよくあるんですよね。

仕事の内容や動き方にもよると思いますが、結局いろいろな会社を転々と移動しつつ、まとまった作業や人を呼んでの打ち合わせに使える場所が欲しかったので、「微妙に遠い」は、意味合いをほとんど無効にしてしまうんですよね。ちょこっと忙しくなっただけでスポーツジムに通えなくなるのと同じだと思います。物理的にではなく、気持ち的に。

やっぱり、面倒じゃない、が一番だな~と実感しました。いろいろな意味で。


「お」:怒ってくれる人いなくなる

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1年目に、気が付いたらゾッとした最初のことは、「誰にも怒られないし、意見もされない」ということでした。それまで会社でめっちゃ怒られていて、それは憂鬱だったのですが、それによってのみ自分で成長できない部分が成長していたことが、じわじわと分かっていきました。油断すると、半年とか1年ずっと、得意技を振りかざしているだけで、何も変わらないのです。何となく自己流でやって、お客さんもそれに対して苦言もなく、仕事が終わって何も残らず、誰の役にも立てていない、ということを、本当にたくさんやってしまいました。

この経験は、頭を垂れながら、恩を次の世代に返していくしかないと思っています。結局僕は、早々にマネージャーをつけてお金を払って仕事の相談をするようにしました。唯一自分を叱ってくれる存在を用意したのです。あれほど怒られるのが嫌だったのに。

そうしないと、怖くて歳を取っていけなかったのです。


「か」:肩書きを考えすぎる

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肩書きはめちゃくちゃ迷いました。アイデア?トイ?プランナー?クリエイター?コンセプト?プロデューサー・・・

初期は「アイデア・コークリエイター」と名乗っていました。コーは、coです。共創ってことです。アイデア・コークリエイター……心がざわざわします。メインの仕事はおもちゃ開発だけど、文具も家電もやりたいし、いろんなところでいろんな人とアイデアを作りたい…!という思いが溢れてそうなりました。おもちゃ、だけってどうなんだ? と思って。青春ですね。

ちなみに今は「おもちゃクリエーター」です。トイ、っていうのも恥ずかしくなりました。日本人のくせにトイって。でもクリエーターって言っちゃってる。本当はクリエーターじゃなくやってることは「開発者」だけどな、とも思ったり。まだ迷っています。理想は、おもちゃクリエーターじゃなく、人にもてあそばれる「おもちゃ」に僕自身がなりたい、とか豪語しています。早く肩書きなんて一つもいらない成人になりたいです。


「き」:勤勉と思ってたが一人だとすぐ昼寝しちゃう

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蓋を開けたらまったく勤勉じゃありませんでした。会社員時代から仕事人間だし真面目だし、少なくともサボるなんてことは起こりえないと思っていたのですが、家で作業して、奥さんが出かけるとソッコー寝ました。人間とは恐ろしいものです。だけど、仕事しすぎて倒れたこともあったくらいの僕は、なんだか成長したような感覚になり、少し嬉しかったです。僕もサボれるんだ、と。

でもそういう奴は何かが一つ崩れると危険だと思っています。僕には結局自宅は無理でした。とにかく仕事に出かけるようにしました。起業できるかできないかは、昼寝しちゃう度合も重要な指標だと思っています。


「く」:食っていけないことはない、少なくとも東京では

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大企業を退社するとき、辞めたら死ぬと思っていました。仕事がなくなって野垂れ死ぬのだと。まあ、プロパーで大きい会社に入ってそこしか知らないと、そう思うのも無理はないと思います。

そんな弱い僕の1年目最大の成功は、辞めて最初の2か月間、ほぼアルバイトのような仕事をするという「起業」のスタートの仕方でした。それで、「そうか、死にはしないんだ」ということを早々に理解したのです。

当時東京では、1人に対して1.6人分の仕事がある、というデータの記事を目にして、「そうだよな、みんな人足りないって言ってるもんな」と。例えばマックのようなザ・バイトではないけれど、いろいろな人に、「手伝えるお仕事ありませんか」と誠意をもってお願いしていると、純粋に作業できることは思ったよりたくさんあって、逆にそこから自分が役に立てることが見えてきたのです。とにかく人に助けていただきました。最初の2か月に入金されたお金は合わせて20万円でした。


「け」:健康第一

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弊社の理念です。絶対に避けなければならないのは、倒れることだけ、だと考えています。倒れたら自分も家族もアウト。そして関係者全員に迷惑をかけてしまう。でも、倒れさえしなければオールOKです。

心身が健康なら、それだけ働くことができ、元気であればあるほどいい仕事ができます。だから、元気であることが責任です。倒れたら約束違反です。

僕は人一倍肉体が弱いことだけは分かっていたので、まず倒れない、さらに言うと、一緒に仕事をしてくれるみんなのために、少しでも良い体調で動いて考えられる状態を作ることを最重視することにしました。それで今の好循環が生まれました。自分が健康で笑っていれば、家族も、仕事のパートナーも、お客様も、みんな健康になり、笑ってくれるのだと実感しました。多分、弱いから人一倍そう思えるのであって、だから弱いことが武器になっているのだと思います。会社員時代に10kg減った体重は、辞めて5年で4kg戻りました。


「こ」:子供と一緒にご飯食べられるのが最大の役得

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会社員時代は朝早く出かけて深夜に帰っていたので、平日に子供とご飯を食べることはありませんでした。それは自分の働き方のせいでしたが、なかなかコントロールが難しい部分もあります。起業したとき子供は1歳で、その大事な時期のうちに一緒にご飯を食べて、絵本を読んで、大きくなってからも幼稚園の送り迎えをして…という生活ができたことは本当に幸運でした。

今は2人の娘と、休日を含めて週に5日は一緒にご飯を食べます。時間があればご飯も作ります。スモール起業でチャンスを手放した仕事もあるのかもしれませんが、「選ぶこと」はできたんだなあと振り返っています。


・・・というように、「あいうえおかきくけこ」までを絵札つきで紹介してきましたが、思いのほか長くなったので、あとは文末で一気に読み札を紹介します。なんだこれ、っていうのもあるかもしれませんが、もし気になるやつとか、共感するやつがあれば、コメントとかつぶやいていただけると嬉しいです。

今回カルタのネタにした5年前の出来事は、すべて必要な経験でした。避けて通ってきたら今の僕はありませんでした。起業の形はいろいろあると思いますが、みんな仲良く力を合わせてがんばっていきましょう~!

最後に、1年目にこんなにも痛々しかった僕に仕事をさせてくださったすべての方々に本当に一生感謝します。本当にありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。


「スモール起業1年目あるあるカルタ」全読み札(Vol.1)

あ 朝会行って疲弊する
い 家で昼間に仕事してると奥さんがイラつく
う 打ち合わせに呼ばれ続けいつまでも何も起きない
え 駅からちょっと遠いコワーキングスペース絶対行かなくなる
お 怒ってくれる人いなくなる
か 肩書きを考えすぎる
き 勤勉と思ってたが一人だとすぐ昼寝しちゃう
く 食っていけないことはない、少なくとも東京では
け 健康第一
こ 子供と一緒にご飯食べられるのが最大の役得
さ 酒が会社員の頃ほど美味しく感じない
し 社会保険料に愕然とする
す スーパー銭湯が最高の仕事場
せ 切実じゃない企画だといつまでも着手できない
そ 外歩きが増えすぎて腰痛改善する
た 助けられて生きていたとやっと気付く
ち チャットワーク、Slackに入れられたら負け
つ ツイッターでバズると一日中そわそわして仕事しない
て ティータイムでもなけりゃやってられない
と 突然死したとき仕事内容を奥さんに共有していなかったら大変
な 名前を覚えられない性格人間として恥
に 2か月ほぼバイトしたら普通に生きられた
ぬ 濡れ衣を着せられても正直者は大丈夫
ね 値付けは一発目が一生を決める
の 飲み会で「俺の酒が飲めねえのか」というエラい人のセリフ現実に初めて聞く
は 初の自主開催セミナーに来てくれた方々への感謝一生忘れない
ひ ヒット商品の有無は雲泥の差だから死ぬ気で一つ当てよ
ふ 2人で起業して一緒に仕事しないという会社の形を発明する
へ 「弊社の強みはアイデア力です!」というゾッとする営業トークぶちかます
ほ 細長すぎる体型が唯一にして最強の武器
ま 前の会社のビル上から下まで歩き回る
み 未払いにどう対応するのがサスティナブルか考えさせられる
む 無理なものは無理と言わなきゃ無責任
め 迷惑かけず丁寧に引継ぎし退職して本当によかった
も もう大きい会社には戻れないんだろうなとふと思う
や 「辞めなくていいなら辞めない方がいいよ」としか後輩にアドバイスできないくらい大企業のシステムすごい
ゆ 有力者より友達が大事
よ 弱みを最初に語れば相手の強みと合体できる
ら ライターをやると会いたい人に会いに行ける
り 領収書請求書が苦手な人は一人きりでやるな
る 「類は友を呼ぶ」しか起こらない
れ 連絡取れなくなるよと噂に聞いていたが、本当にある
ろ ロット少ない商品しか作れないの少しは寂しいけど本心はそうなりたかった
わ 「笑いのない仕事だと何の役にも立てない」という言い回しでアピる


※凹ウサギのイラストを連載しているInstagramは以下です。カルタの絵札の続きはこちらに連載していきます。↓



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