TEDxスライド_高橋晋平

怒り切れない時代に、「怒っても大丈夫だよ」と伝えたい


人間、ときには怒りを爆発させることも大事だと思います。


4年前、日本アンガーマネジメント協会代表の安藤俊介さんに出会い、アンガーマネジメントをゲーム商品化するために教わった際、最も心に刺さったのが、「怒りは生きる原動力として必要な感情であり、怒らなくなればいいというものではない」という話でした。

感情を上手くコントロールしよう、という話題が多い時代です。働き方の話、子育ての話、マインドフルネスの話、など。その結果、現代は、感情を爆発させられる場が少なくなっている気がします。

僕は子供の頃、人の顔色をうかがって言いたいことが言えない子供でした。一方、その裏で弱い者いじめのようなことをジクジクと垂れ流したり、大人になった時にもう消化できないわだかまりが心に残ってしまったりしました。現代に置き換えると、Twitterで悪気のない悪意により誰かが炎上させられることや、パワハラが起こってしまうことなども、似た構造なのではないかと思います。

「感情をコントロールしよう」と考えすぎると、その反動が必ずどこかに出てしまうと僕は思っています。誰かに対して ”機嫌よく” コミュニケーションしようとし続けた結果、別の誰かに対するコミュニケーションが、何だか "機嫌悪く" なってしまう、みたいな。

聖人みたいに生きるなんて難しいと思います。なんかずっとイライラしてしまう人は、もしかしたら逆に、「怒り足りない」のかもしれません。

2019年の大晦日の朝、僕は珍しく奥さんと大ゲンカしました。僕が朝リビングで子供たちと遊んでいると、奥さんが起きてきて、突然怒ったのです。「ゴミを出してない!」と。

その日は火曜日で、燃えるゴミの日でした。でも、大晦日にもなると、僕のような怠け者にとっては完全に曜日感覚が失われていて、火曜だか何だか分からないのです。それで自分の担当であるゴミ出しを忘れたのですが、時間は午前10時を過ぎていて、完全に収集車は行ってしまった後。その状況ではどうしようもないので、僕は「もうしょうがないけど、大丈夫じゃん、ベランダに置いておけば」みたいなことを言ったら奥さんの怒りの火に油を注ぎ、「お前は事の重大さを分かっていない!」と。そうやって長々怒られていたら、僕も完全に怒ってしまい、「もう時間を戻せないことをそうやって言うな!」みたいな。

で、その日は大晦日だから、子供にも悪いのでその場を収めたのですが、年明け1月7日くらいに僕の方から、「あの時の事は怒り足りないから、このまま終わると将来に遺恨が残る可能性があるから続きをやろう」と言って、ケンカ第2ラウンドがスタートし、最終的に分かり合ったのでした(まあ、分かり合ったというか、この価値観はすり合わないよね、ということで決着し、握手。)

このとき、正論で話をしていたり、とりあえず謝って終了していたりしたら、この先に良くない感情が残ったと思います。


僕は、手足をバタつかせながら怒ったり泣いたりしても、回復することができる家庭があって本当に幸運な人間だなとあらためて思いました。僕は仕事上、対外的にはいい顔をして、「優しい男ですよ」みたいに見せていますが、小さい人間だし、いつでもご機嫌でいるなんて不可能。。 子育てでも、マニュアル本にはだいたい「無駄な怒りはやめよう」というようなことが書いてありますが、僕は子供に自分の不機嫌のせいで怒ってしまうこともあります。家族のおかげで救われています。今は、子育ての中で怒ってしまうことがあっても、許してもらえるよな、と思えています。怒ってしまったらその後すぐ子供に謝って対話して、普段はその100倍褒めて、愛してると伝えて、笑っていれば。

大切なのは怒らないことではなく、「回復力」なのかな、と思います。そして、その前提は、回復できる場が醸成されていること。そうでないと、どんなに回復呪文を唱えても無効化されます。

回復が効かない状態の職場で突然ブチ切れたりしたら、もちろんいろいろなことが壊れたり、失われたりします。その場がもし、怒ってもすぐ謝って、話して、回復できる場になっていたら、理想的ですよね。

職場はいろいろな力が働くので、難しい環境もあるかもしれません。それでも、その中に一人ずつ味方を作っていって、愚痴ってもいいから、ときには感情を爆発させられる仲間との居場所を育てておけたらいいよね、と思います。怒りだけでなく、喜びを爆発させられない職場も多いと思いますが、何かあるたびに喜んだり叫んだりできた方が、良いですよね、多分。

僕が会社員時代に自分のキャリアの中で最大のヒット商品を出せた時は、ほとんど「怒り」の感情でそれをやってのけました。誰に対してというわけじゃないけど、「絶対に売ってやるぞ、このクソ野郎!」という感じです。(不謹慎かもですが、)当時もし”残業禁止”とか言われて牙を折られていたら、世の中の誰もその商品に気付かず、何も起こらなかったと思います。そしてそれが大ヒットしたとき、上司と泣いて喜びました。今でも、大ヒットなんてスマートに出せるはずがないと思っています。

大学時代の思い出としては、所属していた研究室の温厚で優しい教授に、とても大切なことで一度だけ本気で怒られたことがありました。その怒りは、今の僕の企画マインドの醸成を開始させた決定的な一撃でした。本当に感謝しています。


怒りの感情やコミュニケーションは、何度も僕を助けてくれました。もちろん、それで失敗したり、傷ついたり傷つけてしまったりしたこともたくさんあります。でも、それらの経験が無かったら、何かが歪んだ人間になってしまっていたんじゃないかなと想像しています。不器用な僕と、怒りで付き合ってくれた子供時代からの全ての人たちに、今ならありがとうと言いたいです。


僕が思う、上手な怒り方は、キレイな伝え方とかじゃなく、

その居場所を、怒っても「ごめんね。」で回復できる場にしておくこと。

普段から、怒る回数の100倍褒めて、愛情を伝えて、何でも笑いに変えて、それでどうしても怒りたいときは、相手に甘えて、思いっきりぶちまけさせてもらうこと。


かなと思います。未熟な考えかもしれないけど、僕は優しいみんなのおかげで、怒りの感情の先に100倍の優しさを頂いています。だから今これを読んでくれた、ついつい怒ってしまうことが多くて悩んでいる貴方に伝えたいです。たぶん、必要な時に、大切な相手になら、怒りを爆発させたって大丈夫だよと。




↑ 安藤さんと作らせて頂いた「アンガーマネジメントゲーム」は、最後に、自分がどうしても許せないことをみんなで言い合うのがおすすめです。


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