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あなたが今取り組んでいる新規事業は、新奇事業か、辛気事業か、それとも…


みんなが新規事業を考えている時代です。そして新規事業はめっちゃくちゃ難しいです。しかし、新規事業は顧客だけでなく、手掛けた本人の人生を大きく変える本当に有意義なものなので、挑戦機会があるなら、特に若いうちにやらない手はありません。

いろいろな新規事業を手伝わせて頂きながら、とても有難い勉強をさせていただいています。今回の話はすごく基本的なものですが、新規事業の渦に巻き込まれると多くの人が見失ってしまうことなので、自分の経験をもとに一度まとめたく、以下に普段使っている言葉遊びを交えて書いてみます。

新規事業(というか、事業)を立ち上げるには、ものすごくシンプルに言うと以下の3つの要素が必要です。

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・やりたい(意志)
・できる(技術)
・もうかる(利益)

新規事業ってどうすりゃいいんだ! と頭を抱える皆が手掛けようとしている数々の新規事業のほとんどは、この中のどれか1つが欠けているのだと思います。


まず、「やりたいし、できる」けど、もうからない事業。こういうのを僕は「新奇事業」と呼んでいます。新しいことを思いつき、実現もできるからやるのだけど、お客さんと作り手の利益交換ができない。求めているお客さんがいないとか、売っても売ってもお金が残らないようになっているとか、つまり、奇をてらったものになっているパターンです。

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※新しいと思いきや既存の競合に対する優位性がない「新”既”事業」のパターンもありますね…。


次に、「やりたいし、もうかる」けど、できない事業。こういうのは「心気事業」と呼んでいます。これがあったら絶対みんなが飛びつく! とウキウキするけど、それは心の中だけで喜んでいる空想に近く、現実にはいつまでたっても、技術的、または社会的ハードルなどがあって動かないパターン。

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※蜃気楼みたいな「蜃気事業」とも言えるかもしれない...。


また、「できるし、もうかる」けど、やりたくない事業。これは「辛気事業」と呼んでいます。

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できるし、もうかるかるならやればいいじゃんと思われがちですが、いくら、できるし、もうかるのだとしても、そこに行きつくには必ずいくつものハードルがあります。そして、人間のモチベーションなんて簡単にじりじりと下がります。最も多いのは、コミュニケーションや承認の壁によるものでしょう。結局、関係者を巻き込んでいかないと新規事業など起こせるはずもなく、それを突破できるのは、最後には「やりたい」ではまだ足りない、「やりたすぎる」からくる自分の妄信しかありません。自分自身やチーム内にくさくさした辛気臭さが垣間見えた時点で、プロジェクトは遅々とし始め、それで突破などできるはずもなく、ひとつふたつと壁が増えていった時点で詰み、ゲームオーバーとなります。

なので、3つの要素がかみ合った新規事業を作りましょう~、ということになるのですが、そんなんできるなら誰だってとっくにやっています。便利で成熟した世の中で、新しい事業を作って成功するなんて、はっきり言って奇跡です。

でも、自分が作った新規事業で、自分の大切な人や、世の中の多くの人が喜んだり、会社に大きな利益をもたらしたりすることが一度できたら、何よりも自分の人生がその先全く違うものになります。特に、自分が第一のユーザーになって恩恵を受けられる新規事業を立ち上げることができたら、それ以上の幸せはありません。あらゆる意味で人生が変わります。

新規事業は、

震起事業

と呼べるほどのものでなければ、成功しないんだろうと思います。

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企画を描いた時点で、武者震いの様な気持ちを抑えられなくなり、勝手に人の縁で円が生まれ、あらゆるハードルを越えて行ってしまう。

先述したように、「やりたい」は、本当は「やりたすぎる」くらいでやっと足りる感覚になります。

僕は数年前までは、新規事業=「心起事業」、だと説明を付けていました。心が勝手に起き上がって初めて、事業も起こせると。でも、心が起きる、くらいだと全然足りず、結局折れてしまうのがリアルだと、数々の失敗から学ばせて頂きました。

結局、技術のハードル、利益のハードル、そして意志のハードルを越えるのは、知識やテクニックでもないし、絞り出す根性なんかではありません。根性という言葉を思い出す暇もないくらいの「反射」的な行動です。震えて、黙っていられないのです。やりたい、できる、もうかる。これらが全てかみ合った時、それを理屈で説明する前に、直感で一歩目の行動が始まります。反対する人がいれば懐柔したり、あるいは一喝したりするコミュニケーションを自然に取れます。お金の投資が怖いのは当たり前ですが、それが怖いながらもストンと腹落ちする瞬間が訪れます。ましてや、自己投資も、自己責任でお金の支援を受けることもなく、会社の資金でも、上司に起案することさえ怖いのであれば、何も始まりません。怖いのは当たり前で、その怖さを通り越した武者震いが始まってやっとスタート地点です。

例えば、僕がこの1年で一番「やられた」と思ったのは、例の、海外からTikTokなどで流行ってきた「動くうさみみ帽子」。

大好きな商品だし、正直数年前であれば大嫉妬していました。もちろん今でも最初に作った人のすばらしさに嫉妬しますが、結局、もし仮にこれが自分発信の商品だったとしても、売れるかどうか確証がない、開発投資が必要、生産数と在庫・流通のハードル、スケールするためのさらなる投資ハードル、模倣品対策、、などなどできない理由ばかりが上がってしまいます。その時点で嫉妬する意味などなくなります。自分にとって、震えるほど人生にリンクした商品ではないから、僕はこの企画で動ける人間ではないのです。

僕の専門はアイデア発想の領域で、アイデア発想なんて要らない、と言われることが良くあります。Ideaより、Will(意志)でしょ、と。それでも僕がアイデアの力を信じ続けている理由がここにあります。意志だけじゃ足りないんです。自分にとって「やりたい、できる、もうかる」のトライアングルがきれいに描かれる企画が生まれるのは、奇跡。それを見つけられるのは、1人、一生に一回だけなのかもしれないなと思うことがあります。それほどの宝探しを続けることができるモチベーションになるのが、アイデアの力です。自分のポテンシャルを引き出すアイデアは、どこにあるかわかりません。いつ目の前に舞い降りるかわかりません。それを追う飽くなき好奇心と発想力を鍛え備えるために、使えないアイデアを毎日毎日出しては、ボツにしていく。

毎日のアイデア出しから、奇跡のアイデアなんて多分見つかりません。でもその積み重ねによってやっと芽生えた「思いつき癖」によって、来たるべき時に、気づくことができるのです。自分の人生のアイデアに。家族のようで難敵のようでもある会社のミッションと自分の人生が重なる領域に。

だから、「なんでやんなきゃいけないんだよ」と愚痴りながらも、やっぱり、新規事業への自分ゴトとしての挑戦は、生きててよかったなあと思えるくらい感動するものだと、身に染みる日々です。


追伸.

もしかしたら、以下の図のように、特に何もなく、そもそも新しさすらなく、「何とか当たってくんねーかな〜」と神に祈るみたいな「神祈事業」が一番今の日本には多いのかもしれないな~と思ったりします。もっともっと考えて考えて考えるの楽しいよ、考えましょう、一緒に!

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