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シェルター

 政府がミサイル攻撃から命を守るシェルターの普及を促すために、設置する企業に対する財政支援を行う方向で検討しているようです。
 安全保障面での脅威が高まり、長く続いた戦後の平和な時代から、次の戦争への準備期間である、戦間期に入ったとの見方をする人も増えているようです。
 もちろん、ほとんどの人は、個々人の考えとしては戦争はしたくないし、ましてや、自分が当事者となって傷ついたり命を落とすことは避けたいというのが正直なところでしょうが、政治とか国家のレベルになると、政治家の政治生命とか国家の存続の中では、個人の命は構成要素の一つとなってしまい、歴史の奔流に押し流され、時代に翻弄されることになります。
 ただ、今後の戦争は核兵器が使われるとなると、これまでのように社会的に立場の弱い人間を前面に出してその犠牲の上で成り立つ戦争ではなく、社会が根こそぎ破壊され、国家の存続とか社会の秩序自体が脅かされることから、海外に自在に離脱できるごく一部の人を除き、ひとしくダメージを享受する、そういう危機が迫っているように思います。
 そうした中で、核兵器使用も含めたミサイル攻撃を想定し、シェルターを建設するということですが、現実的にどの程度、機能しえるのでしょうか。ミサイル攻撃の直後に命を失うことはないでしょうが、シェルターに避難したとして、地上のインフラが壊滅した場合、次の生活の場の確保ができないと、いつまでもシェルターに留まることになるでしょうし、核攻撃の場合は、相当長期にシェルターに避難することになり、公共シェルターであれば、当初想定していたよりはるかに多い人が避難してきて、食料の確保も難しいかもしれません。
 被災直後から状況は改善方向に向かい、外部からの多くの支援が期待できる天災などと異なり、戦争状態が継続する中で都市部が壊滅した場合は、シェルターがあることで一撃目は回避できても、その先がないので雪の中で動けなくなった電車のようなもので、最初は相互扶助の精神が機能しても、次第に不安が募り争いが起こることも考えられます。
 個人的には、本当に安全保障上、ミサイル攻撃の脅威が迫っていると考えるのであれば、都市部の高度利用は、少なくとも住宅については、ある程度抑制し、地方の空き家をいざという時の避難場所にできるよう、耐久性を強化し、食料も保存しておく方が現実的なように思います。核攻撃も周縁部の被害は小さいでしょうから、受け皿としても有効です。都市部に地下シェルターを作るのは、コストもかかり、そのわりにキャパを生み出せず、その後の生活再建の面でも、インフラの壊滅した都市に多くの人がとどまり続けることを前提とするのは、無理があるように思います。
 ただ、シェルターについては、現在の設置状況も含め、研究を深め、ひとかどの専門家になっておくことは、自他にメリットがあるように思いますので、集中して学んでいきたいと思います。

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