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公共セクターの危機的状況をみて思う

 かつてのように、終身雇用の正規職員にありついてしまえば、おしまいという考えは少数派になりつつあり、転職や独立を選択肢に持つことは、ある種のたしなみになっているような気がします。

 自分の価値を高められるトレーニングができる環境で、それに加えて組織内で残り続けても市場価値が下がらないところが良いわけですが、そこは人気があって競争が激しいので難しいにせよ、
滅私奉公していればそのうち組織の中で年功序列で上がっていくというスタイルは、一時的な退避場所にはなりえても、長居するとそこでしか生きられなくなる、将来のリスクが高いと感じている人が増えているようです。

 おそらく、そうしたリスクの高い職業の典型が、公務員や教員であり、副業に厳しい制限があり、終身雇用前提の年功序列の賃金体系で、簡単に変えられないことが、構造的採用難の要因になっています。

 公務員や教員の間口はだいぶ広がっており、難しい試験を何とか突破したという思いも薄れると、辞めるハードルもまた低くなり、若いうちに辞めて、コンサルとか、公共セクターとの渉外担当に転じる人が増えているようです。転職エージェントの活動は活発なようですし、給与水準はその時点では上がるのは確実だと思います。

 ただ、コンサルも渉外担当も、元公務員というところに着目して採用しているとなると、古巣で仕事を取ってくることを求められるわけで、インナーサークルの賞味期限は、組織という情報の動脈から離れて数年がせいぜい、そこを頼りに仕事している限り、自分の価値の減退も早く、適性が向いていないと、業績が落ちれば最初に切り捨てられることになります。

 一方で、公共部門のインナーサークルの情報は、意思決定の動き出しとしては重要ですが、最終的な意思決定に向けては、衆人環視の中での合意形成が必要であり、公表された情報を組み合わせてそれを論拠に、できれば意思決定の方向性さえも用意し、提案できれば、コンサルとしての価値が高く、生き残ることができるように思います。

 公共セクターの役割はさほど低下せず、内部の人材の質的低下の方が先行するでしょうから、意思決定の方向性を示し、質的に低下した人材の意思決定を下支えする、これは実は非常に難しいことで、自分が決めた方が早いと思える場面ですが、外部にいてここができれば、情報の動脈にも外部にいながらにしてアクセスできて、方向性も決められる、貴重な人材になりえるのでしょう。

 たしかに、公共セクターの全体の給与水準は横並びの制約があり、内部での格差もつけにくく、特に若手の処遇が難しい状況では、組織が抱える人材だけで解決することが難しくなるので、質の高いところを外部化できれば、結果的に公共セクターにレベルの高い人材をつなぎとめることができます。

 今はこのへんが過渡期で、外部からのアプローチ自体も未成熟で、コンサル側にも古い体質が抜け切れていないので、構造的に変化していく中で、重きをどうになっていくか、
最終的には、決められる人材は回転ドアのように行き来できる仕組みを作り、外部登用し、また外に出ることが当たり前になれば、外からのアプローチからさらに効率化できるように思いますので、組織文化の変容に時間がかかるにせよ、将来的な絵姿として持っておくことは必要でしょう。

 公共セクターの構造的に身動きが取れない現実を理解せず、外野で騒いでも、状況は改善しないですし、自分ができもしないことを求めるのも、人間の心を理解しない幼稚な思考です。

 そろそろ、単に役所をぶっ叩くのでなく、そこの弱体化も見越して、決める仕組みを考えないと、この国が回らなくなるのではないかと、最近の底が抜けたような状況を聞くに及び、感じた次第です。

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