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月桂冠の魔法少女 #4 淡い記憶の続き(後編) continuatio de tenui memoria

注意点
・以下に登場する人名、地名、団体などは実在のものと一切関係がありません。
・作者の経験不足により、魔法少女よりも特撮のノリになる恐れがあります。
・歴史上の人物をモチーフにしたようなキャラクターが出てきますが、独自解釈や作者の意図などで性格が歪められている可能性があります。

前回までのあらすじ

 日々を無感情に過ごしていた少年、阿具里晴人は、かつての恩人ユリハラ・カエサに似た魔法少女オクタウィアナに出会う。一方晴人の旧友のカズヤは、「ナナ」と名乗る女に「渾沌の力」を与えられて、昔の恨みを晴らそうと晴人を襲うが、晴人のあっけない謝罪にやるせなさを感じ、二人は別れる。二人とも気持ちが晴れないまま、晴人はオクタウィアナに、カズヤはナナに、かつての出来事を語り始める。

 そんなところで第四話スタート!今度こそこの章を書き切りたい!

#4 淡い記憶の続き continuatio de tenui memoria (後編)

「俺は、少しだけ勉強ができるけど、人付き合いが苦手な子供だった。」
晴人はウィアナに語り始める。
「人に合わせるのが苦手で、いや、できるけど嫌いだったのかもしれない。最初は相手と楽しく遊んでいても、途中で自分勝手なルールを作ったり、会話を無理やり変えて自分の好きなことを話し始めたり。初対面では仲良くできても、段々と相手のペースに合わせられないことがわかって、お互いを嫌いになってしまう。そんな子供だった。」
「よく覚えているね。」
「まぁ、よく周りの大人から文句言われたからね。」
「…続けて。」
「わかった。小学校に入って、また友人ができるか不安だった時、カズヤは俺に話しかけてくれた。なんというか、俺も、アイツも、自由だったんだ。自分の好きなことを好きなだけやって、飽きたら一人でやめる。同じことをやってなくても、よく一緒にいた。お互いの家に行ったり、この川とか、公園とか、いろんなところで、俺たちは一緒にいた。小4くらいの頃は、毎日遊び歩いていたっけな。」
「だいぶ仲が良かったんだね…。」
ウィアナは空を見上げる。
「それから小5に上がって、あるとき、俺は親に進学塾に連れていかれた。」
「中学受験してたんだ。」
「まぁ、勉強は少しできたのと、親が熱心だったから。塾でも、おれはそれなりにうまくやっていた。小学校では井の中の蛙だと思っていたけど、優秀な人間が集まる塾でも俺は勉強がそこそこできる。そんな自信がついた。」
「どおりで、県一の進学校に通っているようだね。」
「きっとアイツも、俺ならそこへ行っているだろうと思って、学校前まで襲いに来たんだと思う。」
「なるほど。」
「…話を戻そう。自信を持つ、ということは、いいことのように聞こえるけど、恐ろしいことでもあったんだ。通っていた塾では、成績でクラスが決まった。その中で、上のクラスに行こうと、みんな必死で努力してた。数多くの宿題をこなし、テストが終わっても間違ったところをしらみつぶしに直して。クラスが上がれば、先生も親も、友人も、みんな褒めてくれた…。その反面、いや、だからというべきか、俺は真面目に努力している自分を『偉い』とか、『正しい』とか、思いこむようになった。」
「それで成績が上がるなら、悪い人にあこがれるよりいいことだと思うけど…。」
「思い込み方が問題だったんだ。俺はその自意識を、塾だけじゃなくて、小学校にも持ち込んだ。普段遊び歩いている周りの奴らより、将来のために勉強している真面目な生き方が『正しい』と思ってしまったんだ。その盲目的な正しさを信じて、俺は荒れた。具体的には、宿題のチェック係に就任したのだけれど、一人、ずっと宿題をやってこなかったやつがいた。」
「まさか…。」
「そう、カズヤだ。俺はアイツも『正しい』生き方をさせようと、押し付けてしまったんだ。普段の会話の中で宿題を勧めたり、挙句の果てにはクラスメートの前で糾弾したこともあったかな…。」
「そう、だったんだ。」
「後から聞いた話だけど、アイツの家、その時親が離婚したらしいんだ。勉強より大事な家族の問題を抱えているのに、勉強に割ける精神的余裕なんてなかったよな…。でも、俺はそんなことも知らずに、ただ自分の『正しさ』を押し付けていた。そしてあるとき面と向かって言われたよ。『お前はもう、友達じゃない』ってね。ショックだった。俺のやったことは正しいと思っていたけど、それが友だちを傷つけていたんだ。」
(…。)
二人はしばらく沈黙する。
「友人を失った悲しみと、傷つけてしまった後悔で、その日はずっとぼんやりとしていた。そんな時だった。俺の前にカエサさんが現れたのは。」
「…詳しく聞いていい?」
「うん。学校からの帰り道、よくカズヤと遊んだこの河川敷に来ていた。殺風景で何もない分、一人で悩むのにはいい場所だと思った。そこで、あの人は、現れた。」
「どんな風に?」
「悩み事で頭がいっぱいだったから、よく覚えてない。とにかく、そこにカエサさんは現れて、俺の悩みを聞いてくれた。」

「そっかー。友だちを傷つけてしまって、キミは後悔しているんだね。」
晴人の頭の中に、あの日の記憶がよみがえる。
「私も、思ってることが友だちと違って、相手を傷つけてしまったこと、あるよ。」
「その友だちは、今、どうなっているんですか。」
「ちょっと、寝込んじゃってるかな…。」
「それなのに、何で、平気そうなんですか…。」
「あの時は、私も、彼女も、自分の思う『正しさ』を互いにぶつけあったの。その結果だから、私は後悔してない。結果的に相手が寝込んでしまったのは、とっても悔しいけど。」
「・・・。」
「キミは真面目に努力するのが正しいと思ってた。けど、友だちには、もっと大切なことがあったんじゃないかな。」
「そう…ですか。」
「キミが思う『正しさ』はきっと間違ってない。けど、そう思うなら、友だちが思う『正しさ』も、気づいてあげなきゃ。それに気づけたら、後はキミたち次第。」
「それでも…アイツは許してくれるかな…」
「サイは投げられた!」
「!?」
「昔のことわざ。友だちがどうするかじゃなくて、これからキミがどうするかが大切だよ。」
「で、でも…。」
「もう、しょうがないなー。今からキミに魔法をかけるね。」
「え?」
カエサは晴人の手を取る。
「私、魔法少女だから。ユリハラ・カエサ。覚えててね。今からかける魔法は、キミが、そしてキミの友だちが、苦しいこと、辛いことがあっても、いつかは立ち直れるようになる。そんな魔法。目をつむって。」
カエサは晴人の手を強く握る。
「完了!これできっとうまくいくよ。」
「ありがとう、ございます。」
「あ、ちょっと待ってね。今日は送ってあげる。乗って。」
「もう、そんな歳じゃないです。」
「いいから。」
仕方なく、晴人はウィアナの後ろに乗る。
「しっかりつかまっててね!ウェヌス・ヴォロー(女神は飛び立つ)!」
「わぁー。」
街の上空を飛び、まさに夢見心地で、声にならない声が出る。
家まで案内し、そこでカエサと別れた。

 「それ以来、相手にも『正しさ』がある以上、相手を傷つけないようにしよう、って思ったんだ。」
「カズヤくんとは、それからどうなったの。」
「あ、ああ、そうだったな。俺は傷つけたことを謝ろうって、翌日学校に行ったら、カズヤは急に転校していた。」
「・・・。」
「謝ることすらできず、俺たちは別れてしまったんだ。だいぶ精神に応えたね。でも、だから、嬉しかったんだ。久々にカズヤに会えて。それなのに、謝っても、許してもらえなかった。というか、しっかりと謝ることもできなかったんだ。『サイは投げられた』って、もう、こうなることも決まってたのかな。」
「カエサは、謝らなかったよ。」
「え?」
「カエサは、借金をなかなか返さなかったり、少し煽られただけで怒って手が付けられなくなったり、よくないこともいろいろしてた。だけど、決して謝らなかった。」
「どうして…」
「きっとカエサは、相手の『正しさ』を尊重するとともに、自分の『正しさ』を信じて疑わなかったんだね。それでも、なぜか、私も、みんなも彼女の周りに集まった。」
ウィアナはまた空を見上げる。青空は段々と夜空に変わっていく。
「…そうか、そういうことか。」
晴人は何かに気づき、立ち上がる。
「どうしたの?」
「あの淡い記憶の続きを、始めたい。協力してもらえるかい?」

「と、いうことがあったんだ。」
カズヤもナナに、いままでのことを話す。
「その困難を乗り越えて、今のあなたがあるのね…。深みがあって好きよ。」
「気持ちわりーな。」
「そう。もっといろいろお話したいけど、どうやらここまでのようね。」
「カズヤー!」
ウィアナにおぶられ、晴人は上空より着地する。昨日別れた公園だった。
「いらっしゃい。待ってたわ。」
「やっぱりあなたのせいだったんだね。一般の人に『渾沌の気』を与えて世界を渾沌に陥れる。今度もそうはさせないよ。」
ウィアナはナナに向かって弓を引く。
「あら残念。私もカズヤさんも、あなたと戦っている暇はないの。行きなさい、私の子供たち。」
「クッ!」
ナナが手を前に伸ばした瞬間、うろこ状の鎧を着た、兵士が現れた。数にして10,20,30…古代エジプト風の兵士が広くて何もない公園を埋め尽くす。手には弓、剣、そして似つかわしくない、銃を持っている者もいた。
「プリューマ・テンペスタース(翼の暴風)!」
ウィアナは羽ばたき、嵐を巻き起こして兵士たちを遠ざける。
「う、うわぁーーーー!」
「つかまって」
「巻き添えをくらった晴人の手を、ウィアナはつよく握る。」
「ごめんね。でもあとはまかせたよ。」
風が収まると晴人を下ろし、ウィアナはナナに襲い掛かる。

「やっと一対一になれたな。」
「また、謝りに来たのか?」
「いや、俺はお前には謝らない。」
「じゃあ、自分こそが正しかったと言いに来たのか?」
「それも違う。」
「じゃあ、何をしに来た。」
「お前を、受け入れに来た。」
真っ暗な空の中、二人は対峙する。
「どういうことだ。」
「気づいたんだ。自分を正しいと思い続けるのも、相手を肯定し、自分を否定してただ謝罪するのも、それはお前と本気で向き合ったことにはならない。俺がやらなきゃならないのは、自分の思う『正しさ』と、お前の正しさをぶつけあうことだって。それこそが、お前を受け入れることなんだって、やっと気づけた。」
ウィアナから聞いたカエサの行為を通して、晴人はカエサの真意を理解した。
「そうか、それがお前の思う、『正しさ』というわけか。」
「そうだ。」
「ハッハッハ!」
「何がおかしい。」
「俺はな、お前に勉強のことを言われるのが嫌いだった。血反吐吐くほど苦しかった。けど、お前に言い返すことはできなかった。なんでだかわかるか?」
「何で、って…。」
「それはな、お前が勉強ができた、つまり、学校と言う場所の中で、お前の方が『強かった』からだ。人はいつでも、自分の『正しさ』を証明するために、『強さ』を証明してきた。何がお互いの思う正しさだ。強いものが思う正しさこそが受け入れられる。そうだろう。」
「違う、俺たちなら、二人の正しさを、両立できる!」
「いまさら遅いんだよ!」
カズヤの周りに竜巻ができる。
「っ…。」
「俺はな、お前と別れてから、強さを極めた。町中の不良たちと毎日喧嘩に明け暮れて、俺は強くなっていった。そして今度は、この渾沌の力を手に入れて、俺は最強になった。」
「う…。」
「もう、昨日みたいな迷いはない。俺はお前を倒し、そして世界中の奴らを倒し、俺の『強さ』を証明する!」
「そうか…。それがお前の『正しさ』か。だったら、俺はそれを受け入れる!」
荒れ狂う暴風の中、晴人は必死で前に進む。

「プグヌス・アウグステイ(正帝の拳)!」
紫色の魔法少女が敵の兵士を殴りつける。
「ト・ヘーゲモニコン(指導理性)。」
青色の魔法少女は敵の矢をよけると、別の兵士に命中する。
「ティアナ、アウレリア、もう少しだけ耐えて。」
「言われなくてもわかってるよ/わかってるッス!」
ウィアナのもとへ仲間が駆け付けたようだ。
「あらあら、よそ見は感心しないわね。」
ナナがヘビを放つ。
(右上、下、左、左上4匹。トリッキーな出し方を。)
「サッジッタ・アングリカエ(天使の矢)!」
一度に5本の矢を射る。4本は蛇、1本はナナであった。
「防御だけに気を取られず、私を狙う。その戦略は褒めてあげるわ。」
(まだヘビを隠し持って…!)
矢はもう一匹のヘビに食べられる。
二人は一進一退の攻防を続けていた。

「ユリアーナよ、お前はこの戦いをどう見る。」
公園近くの民家の屋根の上、ガタイのいい老紳士と、一人の少女が遠目で戦闘を見ている。
「ほんと、『どうしてこうなった』て感じだね。」
少女はため息をつく。
「いや、どちらが勝つと思う。」
「まぁ、お兄ちゃんからすれば、どっちでもいんじゃない?」
「お前は『戦い』に興味はないのか?」
「ないね。だって逆張りオタクだから。」
「そうか。残念だのう。」
男は真剣に、少女はぼんやりと戦いを眺めている。

「クッソ、前が見えない…。」
カズヤの風は段々と勢いを増してゆき、目を開けることもままならなくなってきた。
「…君のトモダチを、助けたいか。」
(その声は…)
「ああ、上院セナだ。やはりまた巡り合うようだな。今は、お前の心を読んでいる。心で返事をしろ。」
(助けたい…というより、もしかしたら自分の後悔とか、そういう気持ちを晴らしたいだけなのかもしれない。)
「そうか、ならただの自分の願望というわけか。」
(それでも、俺は俺のこの思いを、アイツにぶつける!アイツの正しさと、俺の正しさをぶつけ合う!それが俺たちの、自分勝手な俺たちの望みだから!)
「そうか…。お前に『秩序』の力を分けてやろう。彼の『渾沌』とぶつけ合うといい。」
(少しずつだけど、力が、みなぎる…)
「トランサベオ(変身)!」
晴人は叫んだ。変身の呪文は、自然に頭に上ってきた。
(これが、俺…)
晴人は長いTシャツを腰のベルトで巻いた、古代ローマで言うトゥニカスタイルに変身した。しかしなにより、頭には月桂樹の冠が乗っていた。
(これなら、いける。)
「うぉぉぉぉぉ!カズヤ、今そっちへ行くぞ!」
晴人を中心に赤々とした火だるまができる。晴人は少しも熱そうなしぐさを見せない。
火だるまはどんどん大きくなり、カズヤの竜巻とぶつかる。
(何だ…)
カズヤはもちろん、魔法少女たちも、ナナも、そして少女と老紳士も、晴人の方を見やる。
「トーメントゥム・オードゥム(秩序の火砲)!」
火だるまがカズヤの竜巻へと飛ばされる。
「俺は負けねぇ!」
カズヤは叫ぶ。
「俺は、俺のすべてを、お前にぶつける!」
少し前に少女が言ったように、晴人には勝敗よりも、自分の思いをぶつけることこそ重要であった。
「「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」
自分の思いをすべてぶつけ合っていた二人は、不思議と心地よかった。しかし、そんな時間は長くは続かない。
「「う、うわぁぁぁぁぁ!」」
二人は同時に上空へと飛ばされ、地面にたたきつけられた。

「おそらく、先に立ち上がった方が、今回の勝者だろう。」
老紳士は言う。
「まだ勝敗にこだわってるの?」
「男と生まれたからには、なぁ。」
「そーいうもんなのかな。」
少女と老紳士が遠目で見る中で、一人が立ち上がった。晴人だった。

晴人はよろけながら、カズヤの方へと歩いた。
「何をしに来た。」
晴人は何も言わずに、手を差し伸べた。
「また、友だちになりたい、とか言い出すのか?」
「そんなところかな。」
「もう、無理なんだよ。」
「どうして。」
「エリートコースを進んだお前と、底辺の俺では、住む世界が違うんだよ。もう、一緒にはなれない。」
「・・・。」
「ハハ。本当はあの時から寂しかったのかもな。だからお前にかまってほしかった。どんな自分勝手な奴忘れて、お前はお前の道へ行けよ。」
「…。お前も俺も、もとから自分勝手だっただろ。」
「!?」
「この公園で、俺はブランコを漕いでいたけど、お前は滑り台で滑ってた。でも、お互い何か話したくなったら、急に話し始める。それでも一人でいるより楽しかった。そうだろ。」
「そう…だったな。」
カズヤは晴人の手を取る。カズヤから黒い、渾沌のオーラが段々と消えていく。

「期待はずれだったわ。」
ナナは渾沌の兵士たちを引っ込めた。
「よそ見は禁物だって、言ってたよね。」
「大人の女には余裕があるものよ。また会いましょう。天使ちゃん。」
「無駄口をたたくな。サジッタ・アングリカエ!」
ナナは空気に溶けだしたかのように消えていった。ウィアナの矢はむなしく空を切る。

「じゃ、こいつのことは俺らに任せろ。」
紫色の魔法少女がカズヤを抱えて言う。
「気を付けてね。」
「もちろんッス!」
青色の魔法少女が答える。
二人は去っていく。
「カズヤは、どうなるの?」
カズヤは晴人の手を取った後、気絶していた。
「私たちの療養施設に運ばれて、しばらくは安静かも。渾沌の力は普通の人間には重すぎるからね。」
「そうか…。」
「でも、きっとすぐ治るよ。」
「どうしてわかるの。」
「カエサさんも、渾沌の力を受け取ってしまった一人一人に向き合って、彼らの気持ちを晴らしてあげた。そういう時は、だいたいすぐに回復してたよ。」
「よかった。」
晴人は安堵感から、公園の芝生に座り込んだ。
「あれ?なんであんな竜巻の後に芝生が残ってるんだ?」
「あ、それは私たちの魔法。『ダムナティオ・メモリアエ(記憶の抹消)』。魔法少女と渾沌の戦いの記録をすべて消し去る魔法。」
「そんなこともできるのか…。」
(どおりで、魔法少女の存在が知られていないわけだ。)

「今回は、ありがとう。それじゃあ。」
「あ、ちょっと待って。はいこれ。セナさんから。」
忘れていたウィアナへの感謝を伝えて、別れようとしたその時だった。
「これ、何?」
アルファベットとローマ数字が書かれているだけで、内容はよくわからない。
「請求書。」
「は?」
「あなたが心の『秩序』をなくしたとき、回復のために使った薬。あれ、高かったんだ。」
(まさかの、自腹…。)
魔法少女との出会いとか、渾沌との戦いとか、夢見心地になっていた途中で突きつけられた「現実」。晴人は唖然とした。
「ま、まぁ、俺があのときやられたのは、君を邪魔した俺のせいだし…。で、いくら?」
「しめ70万円。特別に利子無しでいいって。」
「え、えーーーーー!」
晴人の中で、ウィアナが恩人から恐ろしい借金取りに変わったような気がした。
「俺、学生だから…出世払いでいい?」
「ダメ。毎月5万円ずつ、14回で返してもらうよ。大丈夫。私も手伝ってあげるから。あ、逃げても無駄だよ。この世に『秩序』がある限り、セナさんは追いかけるから。」
「は、はい…。」
5月某日、阿具里晴人、学生。何かよくわからない存在に借金70万円をすることになりました。

まぁ、そんなわけで、俺とウィアナの「淡い記憶の続き」は、もう少し長く続くことになったのでした。

次回
#1~#4 再編集版
(内容は大きく変えずに、表現や構成などを推敲します。
もしかしたら少しだけ続きも書くかも。)

服装参考
樋脇博敏,2015『古代ローマの生活』 角川ソフィア文庫

サムネイル画像
深夜の葛西臨海公園の無料写真素材
PAKUTASOより

(物語中の公園のモチーフとは関係ありません)

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