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短歌:つかめない

まるで夏の日の逃げ水 好きすぎてちゃんとつかんだと思い込んでた/銀猫
まるでなつのひのにげみず すきすぎてちゃんとつかんだとおもいこんでた

 「逃げ水」って、言い得て素敵な表現だと思うんですよね。

 わたしは、中学生くらいのときに逃げ水という言葉を知りました。小説か何かを読んだのだと思います。もちろん、逃げ水の現象は知っていたし見たこともありましたが、それまでの語彙では、それは「陽炎」でした。

 でも、「逃げ水」を知ったとき、わたしの言葉フェチなところに刺さったんですよね。なんてよい表現なのだろうと。

 ほんとうに幼い頃、地球はこんなに暑くありませんでした。わたしが暮らす土地は30℃超えがめずらしく、逃げ水を見ることもめずらしかった記憶があります。
 そしてめずらしさと相俟って、走って追いかけたこともあります。もちろん、逃げられますが。

 わたしは、逃げ水とは、「あそこに届きたい」「手に入れたい」「でもできない」という焦燥感を醸成してくれる自然現象と捉えています。

 どれだけがんばっても手に入らないものがある。
 それをわからせてくれるのです。

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