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第1回 金利の世界(政策金利)

経済の動向を追っていると、「日銀が政策金利を上げたため株が暴落した」のような表現を目にすることがある。一般に、政策金利が上昇すると株価の他に国債価格や不動産価格等の資産価格が下落し、実体経済についても、物価が下落(インフレ抑制)する。
今回は、そんな経済への強い影響力のある政策金利についてまとめる。

そもそもこの場合の金利ってなにを指す?

結論から言えば、いくつかの種類が存在する。また、預金金利を除き、日銀が直接固定できるわけではない点に注意が必要である。

短期政策金利
無担保コール翌日物金利(=オーバーナイト金利=TONA=トナ)を指す。一般には馴染みが薄いが、金融機関同士が担保なしで現金を融通しあう市場(=コール市場)における金利である。

長期政策金利
10年物国債利回り(2022年12月の黒田さんが0.5%まで容認しますのやつ)

預金金利
所謂マイナス金利政策(マイナス金利つき量的・質的金融緩和)の対象となったのはこの金利。市中銀行に国民が預ける金利ではなく、市中銀行が中央銀行に預ける時の金利。
上述した通り、短期金利や長期金利は常に変動する(市場における需給で決定される)ものであり、日銀が「はい、今日から1%ね」などとできる物ではない。

直接指定できない金利を日銀はどのように引き上げるのか?

例えば長期金利の操作方法は以下様である。
国債の利回りは各瞬間の国債価格と同時に定まる(この理由は債券の概念そのものに密接に関係するのでここでは割愛する)ので、利回りを上げるために実際に日銀が取る手段としては「国債価格を下げる」つまり「保有している国債を大量に金融機関に売却する」などがある。
まず市場の需給があって、そこに日銀が介入する形なので限度は存在するし、海外などの投機筋との戦いになることも往々にしてある。また、日銀が方向性を示唆することで参加者の心理の方面から需給を操作することもできる(これをシグナリング効果という)。要人による国会や記者会見での発言で為替・先物価格が動くのはこれに該当する。

一方で、預金金利は日銀が決める。例えば、現在のいわゆるマイナス金利政策(2024年3月現在継続中だが、数ヶ月以内に廃止されるとの向きが多い)は2016年1月から始まった緩和策で日銀当座預金の利息を-1%に引き下げることを指し、市中銀行の日銀への預金の一部に適用されます。

日銀が政策金利を上げたらどうなるのか?

日銀が政策金利を上げると、結果的に市中銀行の預金金利や貸出金利、住宅ローンなど、資金の貸借が発生するすべての現場における利子も上昇する。
その理由として、ここでは日銀の預金金利を例にとって説明する。
政策金利(日銀の預金金利)が引き上げられると、市中銀行は中央銀行から資金を借りにくくなり、キャッシュフローが悪くなると考えられる。そこで、顧客からの預金金利を引き上げることで自行に預金してもらうインセンティブを作り、資金繰りを円滑にする。同様に貸出金利も上昇し、結果的に世の中の金利がすべて上昇するというわけである。

TONAや10年国債の利回りの目標の引き上げも最終的に同様の効果をもたらす。


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