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『幼☆妖★体験記』   第三話        墓場の肝試し

 小学生の中学年ごろにもなると、女の子は‘‘ませて”、男の子は調子に乗り出します。昔では、この代名詞とも言える行事が「スカートめくり」

 女子の中には下にスパッツなどを掃いて「残念でしたぁ~」と、わざと捲らせる強者もいて、それはそれで楽しくも、そして互いに成長の証でもあります。


 女性の中には「絶対に許せない行為だ」と感じられる方もいらっしゃるかと。

 一番にダメだと思う部分は女子であれ何であれ、イヤがり、嫌われ、それでも止めないずっと幼いままの男子や、それと同じく成長しないことにあると思います。逆に、更に危険なのは大人が介入し何でも「殆どゼロ」にしてしまおうとすることで、成長を止めてしまうことかもしれません。


 「強くなろうとすること」は非常に大切で、その邪魔をしているともっと非常事態の場で硬直してしまい、何も出来ずに思考停止、最大の後悔をすることになります。

 レベル上げをせずにボスに挑むRPGのように、パーティーが全滅必須フラグ。


 渦を巻く「蚊取り線香」で何度も軽火傷をすることで、火が熱いと学びます。ちょっとしたケンカで、どの程度の力加減が最適かを知り、勝つには物理的な破壊だけではなく心を挫くことを知らない者が、行きすぎた暴力で他者の命すら奪う事になるやもしれません。


 今の子の多くはそれらの「程度」を知らない、分からない子が多く、ついやりすぎてしまう傾向があるようですね。心も体もいい意味で非力なうちに学ぶことこそ、良い大人になるかもですよ。


 私たちの子供の頃も、子供なりにやりすぎてしまったことがいくつかあります。今ではいい戒めとなり、教訓となって私の心に残っていました。


 小学生時代に住んでいた場所の近くに、凄く大きな「霊園」があります。それはとても広い敷地で、どの市でもあるような「緑地公園」程の面積がある霊園です。

 私は今の様にホラーやオカルト、怖い話が大好きな子でしたので、毎年のこの「肝試し」のイベントも当然の様に大好きでした。


 遊園地には必ずあったお化け屋敷。よく母にせがんで入っていました。しかし、子供達だけでそのような所へ行くことも何もできません。なので、いつものメンバーのいつもの場所、近くのなにも無い公園の道沿いにて、自分達だけで云わば「バァ!!」と、物影から出て来てただの「脅かし合い」で楽しんでいました。


 そんな正に「子供だまし」なイベントにどんどんと飽きてきた私たちは、必然的に提案が出ます。


「なぁ、あっこの霊園でやらね?」


 一同は沈黙を返す。確かに多くの子が飽きてはいたが、それは流石にホラー上級者だった私たちでも禁句です。私も固唾を飲むことしか出来なかった記憶がありますね。

 実はその前に、近くの小さいお墓場でやったことがあったのです。その時は管理の人にすぐ捕まり、何も出来ずに終わりました。
(当然、いけないことです。夜、子供だけで出歩くことも危ないですし、お墓場は遊び場では御座いません。真っ暗で足元も悪く、怪我をすることも多いですから良い子は真似しないでね)


 提案をしたA君は色々と知恵が働く子で、冒頭に言いましたひたすら広い「霊園」であればバレることはないだろう、とのこと。みんな虚勢を張って、口には出しませんが尻込みしながら誰も「止めようよ」とは言いませんでした。


 あ、一人だけ

「俺・・・ちょっと帰らんとあかんわぁ」

 と言って、完全にビビって帰った子が一名いた気がします。

 するとB子ちゃんが

「絶対、怖がってるやん」

 そんなことを帰った子が居た時に言ったのか去った後に言ったのか、そのどちらか。


 残った人数は五、六人はいたと思います。そのみんなが尻込みしているなぁという理由は、全員が移動に自転車を漕ぐ速度がいつも以上に遅かったからです。

 A君だけが

「早く!お前ら!」

 と、急かしてました。一番後続の二人は、どうやって帰るかを相談しながらも、いい案は浮かばなかったようです。


 現場に到着すると、想像以上に真っ暗で明かりが無ければもう何も見えませんでした。二名が懐中電灯を持ってきていたので、二チームに分かれて・・・と思いきや、またまたA君は余計なことを言い出します。


「え?一人づつやろ??」

 またもや全員が、今度は絶句する。


 懐中電灯に照らされる墓石は、今でいう3Dマッピングかのように背後の闇から少し煌めく御影石(花崗岩)が浮き出しているように見え、その存在を強調していました。ひょっこりと定番な白装束の幽霊が、今にも覗いてきそうな雰囲気しかありません。


 全員で順番を決めるジャンケンが始まります。過去にない本気のジャンケンです。


 A君が目標を定め、そこに消しゴムか何かを設置してそれを取りに行き、次の子が置きに行くというシンプルなものですが、理にかなっている方法でした。


 因みにA君は三人兄弟の末っ子で上に兄が二人もいて、色んな遊び方を兄から学んでくるというチーターなのです。


「「ジャン・ケン・ホイ!!」」


 一発で一番手が決まります。その子はC君。道中、一番帰りたがっていた後続の一人で、弱虫なくせに意地っ張りな子でした。

 A君は懐中電灯の一つを渡し、さっさと置いてきた物を取ってくるように指示します。


 残った子達でその後の順番をまたジャンケンしていき、私は確か真ん中ぐらいでホッとしてたような気がする。


 因みにこの順番ジャンケンですが、実は最後が地獄なのです。最後の者はまた恒例のようにみんなで隠れるという、とっておきの肝試しを食らう運命であり、このイベントの大局面。新参者なら洗礼と化していました。


 ・・・すると、いつまでも一人目の子が帰ってきません。三十分・・・は待った記憶ですが、子供の体内時計です。きっと十五分ぐらいだったかもしれません。しかし、早ければ五分、遅くても十分で行って帰ってこれる距離だったと思います。みんな動揺し、A君ともう一人の子が残った懐中電灯を持って迎えに行く。


「「おーーーい!」」


 私と残ったもう一人は、外灯がある道路沿いをウロウロし声をかけます。


 するとその道の先に懐中電灯を持った人がこっちにくるのですが、私たちは近寄ることも声を掛けることも出来ませんでした。だって、もしかして、何者かも分かりませんから・・・・・・


「お前ら、何してんねや?」

 この霊園の管理人か誰かのようでした。私はとっさに

「あ・・・あの、この道を抜けようとして、友達がどっか行って、探してて・・・・・・」

 肝試しをしていた、とは言えずに迷子ということは伝え
「分かった。おっちゃんが探しといたるから、お前らはさっさと帰り。もう夜もいい時間やからな」


 いい訳が通じたのかどうか分かりませんが、とにかく私たち二人は言われた通りに帰宅し、後を管理人らしきおっちゃんとA君たち二人に託しました。


 翌日。


 A君とC君の二人にあの後どうなったかを聞いたのですが、二人とも口を閉ざして何も言わないのです。


 いったい、何があったのでしょう・・・・・・




追伸

 中学に入ったぐらいに何気に聞いたのですが、C君は途中で懐中電灯の電池が切れたのか壊れたのかで、照明が無くなり身動きが取れず、その場でギャン泣きしていたそうです。

 A君は管理人に捕まり、親にこっぴどく叱られたのでした。

 夜の墓場では、調子に乗らない。絶対に。それが教訓・・・・・・


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