INTJと接客業、そこから転じてマキャベリズム

 以前にどこかで記述したかもしれないが、私は接客業に従事している。
 おおよそINTJと相容れ無さそうな職業だと思った貴方。正解だ。私ですら正直接客業は向いていないと毎日思って生きている。
 じゃあなんでそんな場所に居るのか。いやまあ行く宛が無いからと言えばそれはそうなのだが、向いていないと言いつつ働いていて楽しい瞬間があるからだ。
 どんなときに喜びを感じるか。それはお客様の笑顔とか、仲間とのチームワークとか、そんなもんじゃない。そんなもんはむしろ鳥肌が立つ回答である。おためごかしの美辞麗句ならつまらないジョークだと流せるが、本気でこんなこと言う人居るのだろうか。居たら申し訳ない。
 接客業で喜びを感じる瞬間。それは他人を意のままに操ることが出来たときである。

 例えば立て続けに来店があり、オーダーが立て込んでいるとする。そんなときはパッパと役割を割り振って、次に何をすべきか端的に伝え、とっとと終わらせてしまうに限る。勿論自分でも動く。自分で動く人間の元に人が集うのだろうと考えているし、大部分自分で動いた方が速いからだ。そうして自らの思い描いた通りに人を動かし、タスクたる業務を終わらせる。中々一段落しないこともあるが、そのようにして乗り切ったときは大変清々しい気持ちで一杯になる。
 もう一つ。気難しい客が来店する。大抵丁寧に接客しつつスムーズに事が運べば満足して帰ってくれる。何事も無く帰ってくれたときは、一息つくと同時に謎の優越感で満たされる。
 というように、私が最大限の喜びを感じるのは、困難な局面を自分の采配や実力で乗り越えられたときである。勿論、そこには共に働く仲間の力もあり、自分一人では成し遂げられないことだ。だからといって、自分の力が全く寄与していないとも思えない。後者の例はともかく、前者は私が居なければあと5分は時間がかかっただろうなと思うことは何度もある。実力不足とかではなく、皆優しすぎるのだ、指示が。
 勿論他にも楽しいポイントはある。常連さんと会話したり、他愛もない話で仲間の一面を見ることが出来たりするときも楽しいと思う。私だって慣れた人とであれば、むしろコミュニケーションをとりたいと思うこともあるのだ。まあ、自分から知りたいと思ったときだけで、向こうから来られたら高確率で拒絶するのだが。難儀なものである。

 こうしてINTJによる接客の記事を書こうとして、私は一体どこに喜びを見出しているんだろうと考えた結果、冒頭のようになったのだが、ここで一つ思い出したことがある。
 以前ダークトライアドテストというものをした。ダークトライアドとはナルシシズム、マキャベリアニズム、サイコパシーの三つの特性を指す。平たく言ってしまえばよく人格破綻者と言われる人が持っていることが多い特性のことだ。
 言い過ぎだと思ったそこの貴方。検索窓に「ダークトライアド」と入れて調べてみて頂きたい。私より酷いことを書いている記事がわんさか出てくる。社会的に邪悪とか、即縁を切るべきとか。失礼な話である。
 インターネット上のテストだからそこまで精度が高いとは思っていないし、かなり極端な選択をした自覚があるからあまり信じてはいないが、私はマキャベリアニズムの項目が平均よりかなり高かった。というか、今またやってみたら96%高いことにされた。どういうことだ?
 ナルシシズム、サイコパシーに関しては存じている人も多いと思うが、マキャベリアニズムについてはあまり知られていないのではないかと思う。もしかしたら私が知らなかっただけで常識かもしれないが。
 マキャベリアニズムとは、元は『君主論』で論じられたような、国家の利益のためならいかなる権謀術数も許されるという考え方のことである。そこから転じて、目的のために手段を選ばない様を表す場合にも使われるようになった。要は、自分の目的のためなら他者を踏みにじろうが利用しようが構わないという特性のことらしい。
 じゃあ私もそうなのかと言われれば、流石にそこまではいかない。先も述べたようにやや極端な選択肢を選んだという前提もあるし、正直他人を操るエネルギーが私には存在しない。基本的に省エネルギーで生きているのだ。思いはしても行動には移さない。
 だからそんなに深刻に受け止めず、そういう見方もあるかくらいで留めておいたのだが、ここで冒頭の一文を読み返してみて欲しい。
 他人を意のままに操ることが出来たときに喜びを感じる。
 ……やはり適性があるのだろうか。何とも言えない気持ちになるが、正直なところINTJ全員この気質があるのでは? と思う。
 とにかく効率を重視するし、道徳や倫理観、協調性は後付けのもののことが多いINTJにとって、目的のために手段を選ばない、なんてことは当たり前すぎて鼻で笑うレベルではないだろうか。「何が悪い?」と心底疑問に思わないだろうか。
 まあ正直な話私がそう思っているだけなのだが、実際のところどうなのか伺ってみたい。特に「自分はINTJだけどそんなこと思ったことない」という方が居れば、是非お話をお聞きしたいものだ。


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