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#3. 今現在のコンサルタントの成長は、〇〇のための成長だと思う

1. はじめに

前回は、若手コンサルタントである私の目線から、業界内部で起きている変化について説明を試みました。その中で、今回書こうと思っているコンサルタントの成長と関連が深い要点を抜き出すと、次の3点に集約されるかと思います。

■クライアントがコンサルタントに依頼する案件は、業界内でのクライアントの位置づけによって変わる(No.1 or 2か、それ以下か)

■純粋な戦略案件の絶対数は減っており、かつ、難易度が上がっているため若手コンサルタントが関与できる余地が少なくなっている

■一方、業務改善、システム導入等をはじめとする実行支援案件の割合が上がっており、スコープやアプローチがある程度定まっているこれらの案件を若手コンサルタントが担うようになっている

このような業界動向がある中で、世間一般に言われるように、コンサルティングファームは早く成長できる環境なのでしょうか。コンサルティングファームは、若いうちから色々と経験させてもらい、成長できる環境が整っている印象を持っている方が多いかと思います。

私自身はどちらかと言えば、この「成長できる環境」の恩恵を十分に受けた立場ではあります。ですが、昨今の業界動向や実際の若手コンサルタントの取り組む案件の内容を見るにつけ、何をもって成長とするのかをしっかりと吟味する必要が生じているように思います。

そこで今回の記事は、コンサルタントの成長について細かく論じていきたいと思います。題名の〇〇は、記事の終盤で明らかにします。

追記:思いがけず長くなりました。結論を急ぐ方は後半部分(4,5節あたりからお読みください)

2. コンサルタントとしての成長を語る前に考えて欲しい3つのこと

冒頭にも書きましたが、就職活動や転職活動の記事でたびたび登場するフレーズとして、次のようなものが挙げられると思います。

・コンサルタントは、若いうちから裁量がある
・コンサルタントは、クライアントからの高い要求に応えるため、早い速度で成長できる
・プロジェクトワークがベースとなるため、短いサイクルで色々なことが経験できる

これらの要素から、戦略/経営コンサルタントは早く成長できる、というのが特に新卒/中途未経験の間で共有されています。働いた実感としては概ね正しいのですが、この言説の危ういところは、あやふやなイメージのままに成長という言葉を用いているところです。

これら一連の記事は、コンサルティングファームに興味のある新卒/中途未経験の方を主な対象にして書いていますが、そんな読者の方々はどんな成長を期待して、コンサルティングファームの門戸を叩こうとしているのでしょうか。

過去にコンサルティングファームに興味を持った友人や、OB訪問の機会で話した学生さんの志望動機を基に、コンサルティングファームに入ることで実現できる「成長」のイメージについて、4つに分類してみました。(ちなみに、OB訪問は在籍4年間で80人余りと話しました。すべて簡単な報告書を書いて、人事部に提出していますので、ある程度まとまったストックとなっています)

a). どういう成長かは分からないが、とにかく厳しい環境に揉まれることで、鍛えられると思っている(現時点で特にやりたいことはない)

b). 思い入れのある特定の領域(業界やサービス)が現時点ではないが、いろんな業界・領域のコンサルに携わることで、自分の取り組むテーマを決めていきたい

c). 将来的に起業することを念頭に置いているが、事業を通して解決したい課題が思い浮かばないため、経営課題を見つけ、解決することを仕事としているコンサルでまずはどのような課題があるかを見たい

d). 現職の業界に対して思うことがあるが、組織の内部にいるとなかなか変わらない。現職の業界をむしろクライアントにして、課題解決に尽力する側に回ってみたい

もちろん、完全にa)やd)だけといった感じでなく、理由は複数あると思います。また転職エージェントからは、コンサル経験があるとあなたの市場価値が高まりますよ、といった誘い文句でコンサルティングファームに何となく興味を持った人もいるかと思います。

ちなみに、高学校歴者ほどa)が多く、学生時代の活動がユニークな方はb)やc)、第二新卒ではなく中途採用で実際に入社された方はd)が多い印象です。志望理由や成長そのものについて、ケチを付けようという気は特にありません。ですが、これから受けようとする際に、次の3つのことがきちんと言語化できるのか、チェックしてみて欲しいとは思っています。

以下の分類に、a)~d)を付しました。全部チェックして欲しいですが、特に注力して欲しいということで印をつけています。

2-1) 戦略/経営コンサルタントの若手がどのような立場で、どのような働きを期待されているのかを理解できているか?(a,b,c)

働いてみないと分からないという声が聞こえてきそうですが、私が就職活動をしている頃に比べれば、かなり情報開示が進んでいるかと思います。大手ファームであれば、年次の高いコンサルタントが書籍を出しているケースもありますし、昨今ではOB/OG訪問やLinkedInを使って現役社員とコンタクトを取ることも比較的容易となっています。

たしかに、秘匿情報であるクライアント名は入ってみないと分かりません。ですがどのファームも概ねヒエラルキー構造となっており、職階毎の役割は概ね同じです。

求人情報を見る際、どの職階で何を期待されているのかを理解することで、どのような成長環境があるのか、あるいはないのかを把握することに繋がります。それらの前提をインプットしていただいた上で、後半の記事を読んで頂ければと思います。

2-2) 5年後、10年後にどのような状態でありたいかを、暫定的に定められているか?(a,b,d)

コンサルティングファームに限らず、就活/転職活動全般に言えることですが、クライアントの中長期的な成長戦略を考えるサポート役を務めるコンサルタントにこそ、自分自身の成長戦略も考えて欲しいと思っています。多くの方が、この点で「医者の不養生」(コンサルタントは一般に、企業のお医者さんと形容されることが多いので)です。

もちろん、不確実性の高い世の中において、5年後、10年後がどうなっているかを見通すことは難しいです。ですが、闇雲に目の前の仕事を頑張るだけで、自分にとって好ましい状態を作り出せるかと言えば、それもNOだと思います。

コンサルティングファームに入った後、どのような強みを持ったコンサルタントになっていたいのか。あるいは、これから経験するプロジェクトをきっかけに、どの方面に向かってキャリアを進めていきたいのか、をぼんやりとでも思い描くことが、あやふやな「成長」を期待して失望することを防ぐことに繋がるのかと思います。

2-3) (特に中途の方の場合)コンサルティングファーム以外の選択肢を検証しているか?(c,d)

先ほどのコンサルティングファームに期待する成長の中で

d). 現職の業界に対して思うことがあるが、組織の内部にいるとなかなか変わらない。現職の業界をむしろクライアントにして、課題解決に尽力する側に回ってみたい

というのが大方の中途採用組に当てはまるかと思います。このような方の多くが、ご自身のいる業界課題を体感されており、またある程度言語化した上で、コンサルティングファームに臨もうとしていると想像します。

ここでもう一息と思うのが、課題発見・解決は何もコンサルティングファームの専売特許ではないということです。私自身、転職活動をしている過程で元コンサル出身者が立ち上げた特定領域の業務課題解決を志す企業に出合いました。残酷な事実ですが、ご自身で抱かれている業界課題の大半は、特別なものでもなんでもなく、少し経験を積んだり関わったりしていく中で、思いつくものだったりします。

そして現に、元業界人・元業界コンサル経験者によって解決されようとしているのです。多くがベンチャー企業であるため、給与その他の待遇面では大手コンサルより見劣りすることは事実です。ですが、そのような高い志を抱いているのであれば、選択肢としてこれらのベンチャー企業を入れる方が賢明なのだと思います。

3. 改めて成長とは?-OSとApplication、そしてバックキャスト

3-1. はじめにOSとApplication

ビジネスパーソンとしての成長を考える場合、極小単位まで単純化すると成長の意味は大きく二つなのだと思います。

1) できないことが、できるようになる
2) 今まで見えてなかったことが、見えるようになる

そして、コンサルティングファームにおける成長は、下記内容と言って概ね間違いではないでしょう。

1) コンサルタントが共通で持っておくべきスキルやマインドセットに当たる部分。パソコンで言えばOSに当たる箇所です。具体的には、Microsoftの一連のソフト(Excel/PPT/Word)を自在に活用する力やコンサルティングファームで身につくとされている仮説思考等だと思います。

2) 前述の通りでクライアントワークを進めていく中で見えてきた業界内の課題そのものを体感したり、それら課題解決のために採るべき手順や方法(人心掌握術なども含む)を考え実践していく中で、わかってくること。OSとの対比でApplicationとしておきます。

図示するとこんなところでしょうか。

確かに今までの大手戦略/経営コンサルティングファームにいれば、このようなスキルセットは一通り身に着けられると思います。ただ、これらはこの水準まで達すればOKといった明確な基準はなく、働いている限りずっと磨き続けるものでもあります。また、改めてこのOSとApplicationを見ると、特段コンサルティングファームだけでしか身に着けられないものでもないでしょう。

とすると、これらを身に着けたいからコンサルティングファームというのは、少し飛躍が過ぎるように感じられます。

3-2. 成長を考える一つの手段であるバックキャスト

そこで改めて問いたいのが、この記事の読者であるあなた自身が

①何を目指しているのか
②目指す目標に照らして、現在どこにいるのか
③現在地点から目指す状態にたどり着くまでに何をしなければならないか

をきちんと言語化できているかです。これら3つが曖昧なままだと、目的なき成長に留まります。そして、近年大量に製造されているコモディティ化したコンサルタントになるのが関の山です。

図の右上にある「ありたい姿」が①何を目指しているのか、左下の「現状」が②の目指す目標に照らして、現在どこにいるのか、そしてそのための階段が③に該当します。よく見るバックキャストの図ですが、注目して頂きたいのはむしろ縦横の軸、とりわけ縦軸です。

横軸を投資する時間、そして縦軸を「自分が定義する」成長としています。ここまで散々もったいぶってコンサルティングファームにいることで期待出来る成長を書かずに進めてきました。というのも、一般的にコンサルティングファームに入ると習得できるとされるベーシックなものは、もはや語るべきことがないと思っているからです。それらについては「コンサルタントが~」と冠した書籍が出されているので、各自確認いただければそれでお仕舞です。

※例えば上記書籍を1~2時間眺めるだけで、習得できるかどうかは別にしても、おおよそのスキルセットは把握できます。機会があれば、別の記事で私自身が習得できたと感じる部分は書き出してみようと思っています。

自分の目標や目的に合わせて、コンサルティングファームを使い倒すという心持でいないと、成長も何もないのだと思っています。そして、どのような成長をしたいかによって、在籍すべき期限のようなものがあるように思っています。次節ではこのことについて簡単に書いてみようと思います。(ここから先は、著者のイメージですので特に何らかの検証があったわけではありません。その点をご留意頂いた上で、読み進めて下さい)

4. 目標に合わせた在籍期限という考え方

人生100年時代と言われ、定年も延長傾向にあり、ジョブ型採用が脚光を浴びる昨今。特に新卒入社の人たちは、就社というイメージではなく、ファーストキャリアという観点で企業を見定めている印象を受けます。ファーストキャリアということは、当然セカンド、サードと移動することを予め想定しているものと思われますが、では、ファーストはどういう位置づけで、セカンド以降にどのように花開かせていくのかに関して、解像度を高く思考出来ている人は多くないと思います。

※予め断っておくと、完全に計画的なキャリアを歩める人は極めて少ない、もしくはそれでは面白くない、と私自身も思っています。このあたり、クラムボルツ博士の「計画的偶発性(Planned Happenstance)」を参照されると良いかと思います。

このような昨今のトレンドを踏まえると、ファーストキャリアとしてのコンサルタント、もしくは中途未経験の方のセカンドキャリアとしてのコンサルタントとはどのようなものになってくるのか。代表的と思われる(暫定)目標に沿って3つ見ていきたいと思います。

4-1. (漠然としているが)ビジネスパーソンとしての実力を高めたい

大前提として、クライアントはコンサルタントの成長には何の興味もありません。期待するのは質の高い成果物のみですが、この質の高い成果物を要求される点で、相応のプレッシャーを受け続けながら仕事をしていくことになります。

費やした時間ではなく、成果物で評価されることの副産物として、コンサルタント個人の業務効率や思考のキレが上がり易くなることは間違いないです。つまり、思考時間を延ばすために、作業時間を減らす努力が日常業務の中で為されており、毎日が試行錯誤の連続であるからです。

ただし、ここで注意して頂きたいのが、前の記事で説明したコンサル案件の難易度の二極化です。運よく若手も議論に参加できるような案件に入れれば、情報収集や資料作成のみならず、仮説を立てて検証する訓練を、責任があまり重くない若手の内から経験できます。ですが、デジタル化(DX推進)絡みの大型案件に入った場合、戦略系/総合系ファームの区別にあまり関係なく、細分化されたプロジェクト単位での実行支援を担当することになります。

戦略から実行までと言われれば聞こえはいいですが、話を聞いていると(また、私自身の経験に照らしても)多くは何でも屋です。もう少し揶揄した表現をすると、高級文房具/高級派遣として仕事を振られる可能性が高いです。

具体的には、会議室予約や日程調整等をひたすら行うPMO、クライアントが社内意思決定に使う会議資料の作成代行、システムベンダーのうちどこのシステムを導入するかを決めるための比較表の作成、和英・英和の翻訳等です。

キャリアの最初期においては、それでも他の大企業に比べれば中身のある仕事が出来ているような錯覚を覚えます。しかし、若手時代に数々の苦労を経験して、爆速で成長してきた伝説級のコンサルタントたちに比べれば、ずいぶん裁量は小さくなってきてしまっているのが現状です。

私の場合は、3年目までは比較的程よいレベルの案件に携わることができたので、順当に実力を高めていくことができました。ですが4年目は、キャリアの中で最も知的な刺激が少なく、淡々と目の前のことをこなす作業屋としての案件に入ることが多かったため、転職先が決まるまでは鬱屈としていました。(しかし、プロフェッショナルである以上、仕事の選り好みは出来ないため、最低限の成果物を出さなければならず、苦しい日々でした)

少し話題が逸れましたが、何となく成長したいといった漠然とした人の場合、在籍期限は長くとも2年程度だと思います。初めは、時短スキルを身に着けたり、先輩社員の頭の使い方を見ながら学ぶことが多いと思いますが、日々研鑽をしていけばすぐに順応します。つまり、あまり目的意識がないままに入ると、成長の果実はすぐに採り終えてしまうのです。

仕事をしながら目標が見つかる、というのも確かに一理あります。ですが、ファームに入った直後は、環境適応のために時間の多くが割かれてしまい、また業務時間も比較的長くなってしまうために、腰を据えて第二第三のキャリアを考える余裕がないのが関の山です。

4-2. 起業のネタを見つけたり、思い入れのある業界を見つけたい

学生時代に起業する人の多くが、BtoCのビジネスを着想することになると思います。そこで成功してそのまま会社を回し続ける人もいますが、全体としてはほんの一握りでしょう。

その点、コンサルティングファームが扱う経営上の課題の多くは、BtoBの製品・サービス提供、もしくは大企業の業務オペレーションそのものに当たります。常に起業のネタを探す姿勢で日々のコンサルティングワークに励んでいれば、社内でのディスカッションやクライアントとのやり取り、あるいは業界分析を深くしていく中で思いがけない経営課題が見つかるかも知れません。

※著者の講演を聴く機会もありました。もし、起業のネタを探すためにコンサルティングファームに入るのであれば、こちらを一読の上で臨まれると良いかと思います。

また、戦略/総合系ファームのいずれにしても、初めのうちは業界を固定せずにプロジェクトワークをすることが多いです。短サイクルで様々なプロジェクトに関与していくうちに、自分の向き不向き、関心の高低に気が付いていくはずです。

では在籍期限はどれくらいかと言えば、3~5年ではないかと思います。根拠は、在籍年数が5年付近になるとマネジャー相当になり始めるため、アソシエイト/スタッフ層の教育やマネジメント等が業務に加わってくるからです。100%クライアントワークに没頭できる期間は思ったよりも長くなく、あまり悠長に仕事をしていると、当初目的を見失ってしまうことが予想されます。

また、思い入れのある業界の事業会社への転職を見据える場合、マネジャー相当まで上がると、転職時の年収が下がることが多いです。そのため、提示された額を目の前に、志を貫くことが難しくなっていきます。(そもそも、それくらいで揺らぐ志であれば、志ではないという厳しい見方もあると思いますが、人間長く生きると価値観が変わるようです)

4-3. 経営課題解決のプロになりたい

経営課題解決のプロになりたい場合は、基本的には縁のあったコンサルティングファームでキャリアアップをするという思考になるかと思います。ただ、昨今のプロジェクトの大規模化/長期化、案件難易度の二極化、といった現状を踏まえると、漠然とコンサルティングファームだけで経験を積んでも、真にクライアントの経営を変革する実力は身に着かないのではないかとも思っています。

元々学生時代にプログラミングや機械学習に触れている人は別として、多くのコンサルタントのIT/デジタル領域での専門性は高くありません。また、クライアントのニーズが実行支援や社会実装、DX推進である以上、外部から関与をするという立場での関わり方には限界が見えてきます。

冨山和彦氏が率いる経営共創基盤のように、業務変革を高らかに掲げ、経営の泥臭い部分も含めてすべてに関わるスタンスを採っているプロ集団を別とすれば、サラリーマン化が進んだ昨今の大手戦略/総合系ファームでの経験のみでは、真に経営課題解決のプロになるのは難しいでしょう。

※DXではなく、日本企業にはCX(Corporate Transformation)が必要と説く本書は、なんちゃってDX推進に関与してるすべてのビジネスパーソンにとって耳の痛い話に溢れています。

この場合、在籍期限は入ったファームの現状によるかと思います。もし、本気で業務変革を行える環境に身を置けているのであれば、そのプロジェクトでの経験がそのまま今後のキャリアの糧になるかと思います。しかし、仕事を進めていく過程で意味を見出せない、上手くいく気がしないが意思決定だけは勝手に進んでいってしまっている、と少しでも感じるのであれば、それは「なんちゃってDX」案件の類(たぐい)である可能性が高いです。

そのような状況に陥った場合、ご自身で案件を獲りに行くか、思い切ってベンチャー企業へ転職したり起業をすることで、リアルな経営体験を積むことの方が結果として中身のある仕事ができるような気がします。とりわけ、昨今は人工知能の技術を活用した新規事業の創発や業務改革の支援を担う特化型コンサルティングファーム(多くがベンチャー)が設立されつつあるため、そのような環境で自分自身の専門性を高めることが、目的に適うキャリアアップになるかと思います。

5. 現在のコンサルティングファームで期待できる成長は、〇〇のための成長である

ここまで長々と説明してきましたが、そろそろ結論に入りたいと思います。コンサルティングファームに入ろうと思う方がまずすべきは、自分にとっての成長をしっかりと定義して、その成長に適う場所がコンサルティングファームであるかを吟味することです。

そして、仮に吟味の結果がコンサルティングファームである場合、その後の人生の構想を暫定的でも構わないので定めておくことが肝要です。

ここまでは何の変哲もない結論ですが、私がこの記事を通して最も強調したいことは次の点です。

現在のコンサルティングファームに若手・未経験で入っても、戦略/経営コンサルタントになるための成長機会しか提供されない、ということです。

何を当たり前のことを、と思われる方もいるかもしれません。ですが、コンサルティングファームを志す人の一定数が、ポスト・コンサルのキャリアを見据えていることを鑑みれば、少しこの発言の意味合いが変わってくるはずです。

今、現役で多方面で活躍されていえる元コンサルタントがファーム時代に経験したことと、これから今のコンサルティングファームに入って経験できることには大きな落差があると思っています。

昨今の若手・未経験コンサルタントが関与する案件は、大規模プロジェクトの中の一つのモジュール(パーツのようなもの)です。そして、そのモジュール内でやることは、予めマネジャー相当とクライアントの間で概ね合意されています。前提から疑うことは期待されていません。粛々と、計画に沿って作業を進めていくことを是とする案件に入ることになります。

その際、最も優秀な若手コンサルタントというのは、クライアントのどんな要望にも応える高級文房具/高級派遣です。(マネジャー以上になると、もう少し上流部分に関与するため、仮説の構築やクライアントを鼓舞するような役割が加わっていきます)

そのため、逆説的ではありますが、長期的なスパンで今のクライアントニーズに合ったコンサルティングに興味があり、それを生業としていきたい人こそが、コンサルティングファームの門戸を叩くべきなのだと思います。

他に明確な目標がある場合、コンサルティングファームの在籍経験は、ぱっと見の経歴に箔があるように見える程度に留まり、遠回りとなることの方が多いのではないでしょうか。

6. 次回の内容予告

今回は「成長」という切り口で、コンサルティングファームで得られる経験について記述していきました。と言っても、スキルや経験を細かく記述するというよりは、コンサルティングファームに入るか否かの意思決定を下すための判断材料の提供というニュアンスの方が強かったと感じられた方の方が多かったと思います。

次回は、働き方そのものに焦点を置いて、もう少し実態を深堀していければと思います。私の体験はもちろんですが、各ファームにいる友人・先輩・後輩の話も交えて、情報提供する予定です。


大学院での一番の学びは「立ち止まる勇気」。変化の多い世の中だからこそ、変わらぬものを見通せる透徹さを身に着けたいものです。気付きの多い記事が書けるよう頑張ります。