イノセント・デイズ 読了

!ネタバレあり!





早見和真著「イノセント・デイズ」を読了した。
希死念慮の強い主人公・田中幸乃が冤罪を
利用し死刑を望む物語。

幸乃の周りの人々の過去が明かされることにより
幸乃の生い立ち、幸乃への印象・思い出が語られ
徐々に幸乃の輪郭が浮き彫りになる構成だ。

物語は幸乃の冤罪を信じ死刑判決を取り消そうと
紛争する者。
死刑執行までの期間を出来るだけ伸ばそうとする者。

幸乃を助けようとする者が多くいるが
私は彼らがなぜ邪魔をするのか分からなかった。

幸乃はただただ死刑で死にたいと
願っているのに。


この主人公 田中幸乃をみていると
中学時代の同級生を思い出す。

彼女の肌は雪のように白くなめらかで
控え目な印象を与える目元だが
色素の薄い瞳が大きくてアンバランスに思えた。

すらりと伸びた細い手足、声はか細く
気弱そうな彼女を下に見るものは
少なくなかった。

だけど私はその容姿に反して
強い意志のようなものを
彼女から感じていた。

態度には出さないが、
心の中で彼女は決して
自分自身を見下していない。
卑下しない。

もしくは、他人にも自分にさえも
興味が無かったのかもしれない。
彼女を思って言う言葉も、
彼女を傷つけようとする言葉も
彼女の前では意味をなさなかったからだ。

どことなく田中幸乃に似ているのだ。

作品に触れている中で、自分の思い出に
投影できたとき、私はその作品を
楽しんでいると言えるのだと思う。


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