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ロードバイク : チューブラータイヤをテストする

以前,noteに下の記事を書きました.

 乗り心地がとても快適なチューブラータイヤですが,出先でのパンクが不安で手を出せない方も多いのではないかと思います.このnoteでは出先でのチューブラータイヤの交換が簡単にできることを書きました.
google検索にヒットするようで,アクセス数も多いです.
 私が特に主張したいことは,

(1) 出先でパンクをしても,スペアをセメントで貼り,すぐに乗っても実用強度は保たれる.
→ つまり,サイクリング中に外でセメントの強度が高まるまで待ったり,必ずしもチューブラーテープを使う必要はない.

(2) チューブラータイヤはリムセメントで接着しなくても外れにくい.
→ 例えば,自宅から30km地点でパンクをしたとして,セメントを扱うのが面倒であれば,交換後貼らずにそのまま自宅まで乗って帰ったり,あるいは最寄りのショップまで走ることができる.

の2点です.
レース用途ではなく,あくまで20-30km/h程度で走行するツーリングやトレーニングの最中にパンクした時のことを想定しての話です.
 なお,チューブラータイヤに関してこのような邪道な乗り方の解説をしているサイトは他で見たことがありません (笑)

1.チューブラーホイールにタイヤを接着させずに乗ってみるテスト

 
 なぜ (1)や(2) のようなことを主張するのかというと,昔からの経験です.
ロードトレーニングやツーリングでは,使い古しのチューブラーにあらかじめセメントを塗ったものをスペアとして持ち歩いたりしていたわけですが,結局パンクをしないまま時間が経ってしまうことがよくありました.

 ところがパンクはいつも忘れた頃にやってきます.
 出先でパンクに遭遇したとき,折り畳んであったスペアを広げてみたらセメントが乾いて固まってしまっている.仕方なく,粘着力がほとんど失われたタイヤをそのまま取り付けて空気を入れ,恐る恐るサイクリングを続行してみるが,タイヤは意外と外れずに普通に乗れてしまう...
そんなことが,よくあったのです.

 しかし,なにぶん自分が最近路上でタイヤ交換をしたのはもう20年以上前の話  (なぜなら,私が愛用してきた Vittoria CORSA CX は耐パンク性能が極めて高くパンク知らずで,これまで全てのタイヤを完全に磨り減るまで使えてしまったから).
そこで今回,上記の (2)のことを改めて確かめようと思った次第です.


 今回試すホイールはこちらのCampagnolo NUCLEON
タイヤはCORSA CXから新品のVittoria STRADA (21-28)に履き替えました.
リムセメントは塗っていません.タイヤをリムにはめて空気を入れただけの状態です.
 空気圧はいつもと同じ7気圧です.セメントは塗っていませんが,タイヤを横から両手の親指で強く押しても,タイヤがリムにガッチリとハマっていて外れる気配はありません.


やってきたのは,職場の駐車場
時刻は夜10時,車はほとんどありません.
駐車場は縦長形状
50mのストレートと半径7mのコーナーからなる,1周約140mのコースを周回します.テストにはLOOK595を使用しました.

テスト1:直線で15km/hまで加速し,コーナー手前でブレーキを掛けて10km/hまで減速してUターン → これを5周する.
結果:普通に乗れた(外れない)

テスト2:直線で20km/hまで加速し,コーナー手前でブレーキを掛けて15km/hまで減速してUターン → これを10周する.
結果:普通に乗れた(外れない)
タイヤが接着されていない場合,ブレーキングするとリムに対してタイヤが滑るはずだが,バルブは傾いていません.

バルブの傾きは確認されない


テスト3:直線で30km/hまで加速し,コーナー手前でブレーキを掛けて20km/hまで減速してUターン → これを10周する.
結果:普通に乗れた(外れない)
バルブの傾きも変化ありませんでした.

この後,さらに25km/hで15周しましたが,タイヤは最後まで外れることなく,普通に乗れてしまいました.

Garmin Connectの走行記録
本日の走行距離:5.9km



2.チューブラータイヤの貼り付け


 上のテストから,チューブラータイヤはリムに接着されていなくても「外れにくい」ことがわかりますが,通常は当然,接着して乗ります.
ここでは私がいつも行なっているチューブラータイヤの貼り方をご紹介したいと思います.

STEP-1:リムから古いタイヤを剥がす.
Pana Cementなら素手で剥がせます.剥がしにくいセメントの場合はクリンチャータイヤ用のタイヤレバーを使えば良いです.


STEP-2振れ取り台にホイールをセットする
 タイヤ貼りの作業は振れ取り台必須です.セメントが垂れることがあるので,下に新聞紙を敷きます.
 ネット検索をすると折りたたみ式のメンテナンススタンドでセメントの塗布をしている例もあります.その場合,リアは問題ありませんがフロントが外れやすいので注意が必要です.振れ取り台であればしっかりと固定ができます.
 ロードバイク のフレームを逆さにして,ホイールを取り付けて塗る方法もありますが,セメントがフレームに垂れて付着すると取れにくいので,やめたほうがよいです.
 いまでは笑い話ですが,私は中学生のとき,自室の畳の上で何も敷かずにホイールを左手に持ち,右手でセメントを塗ろうとして大変な事態になった思い出があります,絶対に真似しないでくださいね.


STEP-3:ホイールを回転させながら歯ブラシを当てて,乾燥して取れる部分の古いセメントを軽く落とす

リムにはベッドがしっかりと残っています.
新品のリムの場合はこのベッド作りから行う必要があります.
やり方は下記リンクの有識者の方がとてもわかりやすく説明をしてくれているので,そちらを参照してください.


20年間塗り重ねられた厚いベッド(サボっているだけ)
もはやニップル穴がどこかわからない状態になっている
ショップの人にこんなホイールを見られたら怒られそうだ(笑)

 上の写真は私のホイールのベッドです.
このホイールを使い始めてから20年以上経ちますが,一度もクリーニングをしたことがありません(上記のサイト「セメントベッドの作り方」にはベッド作りは5年〜10年に一度って書いてあるけど,さすがに20年使い続ける人はいないかもしれませんね,なお,これは私が面倒くさがりでサボっているだけです,笑)

 このリムもそろそろベッドを作り直した方がよさそうですが,いまは手元にクリーナーが無いので,今回はこのままタイヤを取り付けることにします.クリーニングとベッドの作り直しは,また今度ということで


STEP-4リムにリムセメント(Pana Cement) を塗る.
塗る量は上の写真のように全周に渡って均等に光沢がでるくらいです.

 昔の手組みホイールの時代は振れが出ることが多かったので,ニップルにセメントが付着するとニップルが固定されてしまって,振れ取りがやりずらくなるので,ニップル穴は避けて塗っていました.
 しかし現在の完組ホイールは(少なくとも私がいま使っているカンパのNUCLEONについては)とても頑丈で全くフレが出ないので,ニップルへのセメント付着は気にすることなく,全体に塗り広げています.


STEP-5
タイヤ側にもリムセメントを塗る.
STEP-4の後 ○○分乾燥… と説明しているサイトなどもありますけど,私はとくに乾燥待ちなどはしません.STEP-5に5分くらい要するので,その間にはSTEP-4のリム側のセメントのネバネバ度がほどよい感じになっており,すぐにタイヤを取り付けても差し支えないと考えます.

STEP-6リムにタイヤをはめる. 
振れ取り台を使用している場合は,そのままバルブ側からはめたのち,クイックレバーを解除してホイールを取り外してから反対側をはめていきます.
簡易スタンドを使用している場合には,スタンドから取り外して木の板の上などで貼ります.
タイヤをはめる際,きついタイヤだと手が汚れやすいです.慣れていないとタイヤをはめる際にリムからはみ出たセメントが服や靴下につきやすいので要注意.手なら洗えば落ちますが,衣類についたセメントは取れません.

STEP-7空気を2気圧程度入れたのち,ホイールを回転させながらタイヤのセンターを観察し,調整する.


STEP-8:7気圧まで入れて,タイヤとリムを密着させる.

 多くのサイトでは,このあと十分に接着されるまで「24時間放置」と説明しています.
 しかし,上のテストで示したように,そもそもセメントが無くてもタイヤは外れにくいので,急いでいるときなどには,そのまま接着後にすぐに乗っても差し支えないというのが私の考えです
(繰り返しますが,レースではなくてツーリングやトレーニング用途であればの話です).


3.チューブラーホイールで作るベッドとは何か?


 上の方でホイールのベッドと書きましたけど,そもそも"ベッド"とは何か?  ちゃんとした定義や説明はマニュアル本やネット上では見たことがありません.そこで自分がなんとなく理解している "ベッド" というものを説明したいと思います.
(人によって定義の違いがあったり,または自分の理解が間違っているかもしれませんが...)

 新品のリムの場合,ツルツルのリムの表面にセメントが均等に塗られます(上図の左).このとき,リムがしっかりと脱脂されていないとセメントがリムにたいして馴染みにくいことや,最初はタイヤとリムの間に隙間もできやすいことなどから,タイヤを力いっぱい引っ張るとセメントが丸ごとタイヤ側にくっついたまま,ガバっと剥がれてしまうことがあります.
 タイヤを何度か張り替えていると,リム側に残るセメントとタイヤ側に残るセメントがあるため,リム表面がすこしずつ厚くなるとともに凸凹になってきます(上図の右).この状態の方がタイヤが隙間なくリムに密着して接着力が強くなるので,チューブラータイヤを使用する上では好ましい...という考え方になります.
 このような,劣化しておらず柔軟性のある凸凹を伴う厚みをもったリム表面のセメント部のことを「ベッド」と呼びます
 だから,ベッドは最初から完成するものではなく,ホイールを使い込んでいるうちに少しずつ出来上がってくるものです.

 ブログを見ているとタイヤを貼る度に一旦リムをピカピカにクリーニングして,毎回最初から作り始めている人もいるようですが,その必要はありません.というか,それはむしろ間違ったやり方ということになります.
(潔癖症でどうしても毎回リムを綺麗にしたいというなら理解できますが)

 ただし,上図の左の新品リムの状態と右のベッドのある使い込んだリムの状態で,タイヤの接着力にどれくらいの差があるのか? 
そのことに関する科学的なデータは一度も見たことがありません.
セメントは重ね塗りすることで強度が増すことが古くからサイクリスト達の間で経験則として知られていて,それが「ベッドを作る」と表現されてきたのかもしれません.

4.まとめ


 このnoteではチューブラータイヤはセメントを塗らなくても外れにくく,低速であればそのまま乗ることができることを示しました.
もちろん普段からこんな乗り方をするのは絶対に推奨されません.
しかし,サイクリングでは思わぬトラブルに遭遇することがあります.
そんなときに,予備知識として頭の片隅にでも覚えておくと役立つ時があるかもしれません.
 
 そもそもチューブラータイヤはリムから外れにくく,セメントを塗ればさらに強度が向上します.だから,パンクの際にはスペアにセメントを塗って装着後,すぐに乗っても差し支えないというのが私の考えです (なんども繰り返しますが,レースではなく,サイクリングでの話ですからね).


終わり



2023年11月21日追記

チューブラーについて誤解が多いなぁ と感じたこと

このnoteをまとめた後で検索をして気がついたのだが,
チューブラーはタイヤを張り替えるたびにリムをクリーニングしなければならない」と誤解しているサイトがとても多いことがわかった.
個人ブログだけでなくて,ショップでもです
それ,正反対なので注意しましょう.
せっかく作ったベッドをクリーニングしてはいけません

La routeの安井氏でさえ,タイヤの扱い方に関してやや間違った理解をしているようだ.彼はテープユーザーらしいから,知らなかっただけかもしれないが…

タイヤを張り替えるたびにリムをクリーニングなんて,
昔は誰もやっていなかったし (そんな手間が掛かって面倒臭いことやるわけない(笑)),聞いたこともない.
セメントは上塗りして,そのままポン付けが正しいです.
これって,自分的には常識的すぎることだったのですが…
時代の変化を感じるなぁ

というわけで,このnoteの続きを書きました.
もしよろしければご覧ください 

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