見出し画像

YELLOW ⑧

 ​​​​​その時 僕はもう木の根元、

 あの大きな木の下にはいなかった。


 所々に

 歳月を感じさせる灰色の染みのできた、

 白い天井が見える。


 僕が横たわっていたのは、


 朝露に覆われた

 みずみずしい草原の上ではなく、


 堅く粗末なベッドの上だった。


 古びた

 白いカーテンからは、


 明るみ始めた外の

 やわらかな光が射し込み、


 小さな部屋を

 そっと控えめに照らし出していた。


 湿り気を帯び、

 枕は冷たい。


 目元からは 今も途切れなく

 涙が流れ続けていた。


 ゆっくり ゆっくりと

 あふれ出る涙が、


 永久に

 乾くことはなさそうだ。


 こんなに長く泣いたことが、

 これまでにあっただろうか?


 いったいどうして

 僕は泣いているんだろう?


 そう思ったとき、


 僕のすぐ隣りで

 誰かの声がした。




 ​​​​​マンリョウの丘を訪れてくださり、  本当にありがとうございます。  私たち一人ひとりの、心の中の草原が、  やさしい風によって、  結びつき、つながってゆくことを、  心から願っています。