フィンランドのクマを撮る その2〜撮影編〜
前回書いてから1ヶ月時間が空いてしまったけど、撮影編も書いていきたいと思う。その1を見ていない人はそちらから。
無事ベースロッジへと辿り着き、すぐに荷物をまとめて撮影に向かう。
本体であれば1日準備する期間を設けていたのだけど、ロッジのオーナーが、今グリズリーも出てるし、小屋も空いてるから使っていいよ。準備したら外で待っててと言われて、準備を整えて待つ。
ロッジから10分か15分くらいか、比較的近くに撮影地があり、オーナーの車に乗せてもらい小屋の近くまで向かう。
ちなみにここはロシアの国境からわずか700メートルほどしか離れていないため、道を間違えると大変なことになるらしい。
そのため素人がここで運転するのはなかなか難しい。
曲がり角を何度も曲がりながら撮影地へ着く。そこから車を降りてしばらく歩くと滞在する撮影小屋が見えてくる。他には何もない。
人一人が入れるであろう小さな小さな小屋だ。
北欧の森は背丈が高い草がないため、非常に森が開けている。
ヘルシンキから道中何百キロもレンタカーで走り、ここまで来ているのだけど、実際森の中に入ってみると本当に広い。
100メートルかあるいはそれ以上か、木がたくさん生えているのも関わらずその視界の広さには驚いた。
確かにこれなら撮影はしやすい。 こう言ったことも海外に行かなければ経験できないし、それが僕が海外へ行く理由の一つだ。
小屋の中はこんな感じだ。必要最低限のものしかなく、トイレはただのバケツだ。 床に寝袋があるので寝れるようにはなっているのだが、いつ誰が使ったか分からない寝袋だし、結構カビ臭い。
綺麗好きな人にはなかなか厳しいかもしれない。
奥に立てかけている鞄は食料が入っている鞄だ。
ベースロッジに戻ることはできるものの基本的に1日のうち大半はここで過ごすことになるので、飲水や食料は必須になる。
灯りは基本的に蝋燭だけで過ごす。 まぁ北極圏に近いところなので夜もあまり暗くはならないから、基本的には灯りはあまり必要ない。
ただ小屋の中は少し暗いので作業する時は明かりがあったほうが良い。
結構寒いし、中々グリズリーに出会えない時は寝袋に包まって外の様子をチラチラみる。 ずっとファインダーを覗いていると流石に集中力が持たないので体を休めながらバランスを取って撮影を行う。
体力を使いすぎるといいシーンに撮り逃すからそこは注意している。
当然撮影を始めてもすぐには出会えない。
何時間も何時間もずっと耐えながら外の様子を見る。しかしそこはさすが北欧といったところか、日本とは比べ物にならない頻度でグリズリーと出会える。
もちろん何時間も待つのだが、逆に言えばたった何時間か待てば必ず会えてしまう頻度の個体数がそこにいるのだ。これは日本では考えられない。
いろんなシーンに出会えて、特にこの親子グマたちと出会えた時は本当によかった。素晴らしい作品を作ることができた。
小屋は背景に合わせて至る所にあり、1日毎に変えることができる。 1週間ほどの撮影だったので、森→荒野→森→荒野と交互に小屋を変えた。というのもグリズリーたちも日々森の中を動き回っており、荒野(広い場所)へ出かける時も多いそうなので、それを追ってそちらの近くの小屋へ移るということを繰り返した。
こちらが荒野の小屋だ。写真には映っていないが、この小屋の前は300メートルほど視界が開けている。
大変だったのが、睡眠がろくにできないことだ。
先ほど休み休みで体力を消耗しないようにといったのだが、当然熟睡はできない。(グリズリーの鳴き声がうるさいのと、いつシャッターチャンスが来るかわからないからだ)
そのため1週間撮影中はろくに寝ることができず、常に睡魔との戦いだった。
しかしラッキーなことは起きた。
それがグリズリーよりレアな野生の狼を撮影できたことだ。
遠くから白い動く何かが見える。熊か?いや、ヘラジカか?違う。。オオカミだ!
僕はこの瞬間が最も記憶に残ったかもしれない。
シャッターを切る瞬間に泣くことなんてあっただろうか。思わず涙が出た。
僅か1分だけの出会いだったが、本当に。。本当に感動した。
この世界で野生のオオカミと一瞬でも目を合わせることができたその事実が僕に取って忘れられない出来事となった。
ちなみにこれは僕の持論なのだが、あまりに自然を追求しすぎると撮影がままならなくなる。例えば全くクマがいないような場所で何日も何日も粘っても撮れる可能性があるが、時間がかかりすぎる。
そうなると膨大な時間を消費するわりには作品的に大した絵にはならない。
もちろん経験という意味では非常に素晴らしいが、その辺はある程度線引きをして考える必要がある。
僕は言葉で語るより「写真で語りたい」。
それこそが写真家だと思うからだ。
まだまだ書きたい事は色々あるが、いいフィンランドの撮影旅となった。
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