”家族のために”、家事をしない。ママ休が伝えたい新しいアイデンティティ
こんにちは!「ママの休食」を運営する株式会社MYPLATE代表のしきです。これまではママの休食の中のひとで執筆していたのですが、私自身発信していきたいと思っていたテーマがいくつかあったので、今年から個人noteも頑張ろう、という気持ちで“しきnote”を再開することにしました。
そして、そんな私がいつか触れたいと思っていた大きなテーマが一つあります。それは、「家事のスマート化」についてです。
この言葉は、私たちのチームスローガン“家族の時間を減らすことなく仕事と家庭が両立できる「スマートでヘルシーなワークライフ」の実現”にもつながる重要なテーマです。
かつては、家事や子育てを専業とする女性の割合が多く、専業主婦は女性たちのあこがれでした。ですが今では、日本の高度経済成長を支えていた「男は仕事、女は家庭」という性別役割分業の規範は変化しつつあります。
今回は、夫婦間の労働に着目しながら、私自身が感じている世の中に対する課題や疑問、そしてその課題解決のために必要だと思うことについてお話したいと思います。今回は、家事の担い手となることの多い女性を例にとりお話ししますが、これは女性だけでなく家族に向けたメッセージです。男性にも読んでいただけたら嬉しいです。
共働き世帯の性別役割分業のあり方
なぜわたしが「家事のスマート化」について触れたいと思ってきたのか。これは、私自身が今後「起業家として」「女性として」「母親として」、自己アイデンティティを確立していく上で、必要不可欠な要素であると確信しているからです。
みなさんもご存知のように、共働き世帯は年々増加傾向にあり、雇用者世帯の約6割を占めています(出典:内閣府 - 男女共同参画白書(概要版) 平成30年版)。女性の社会進出とともに総所得に占める夫婦間の所得割合の格差は小さくなりつつあります。では、夫婦間の性別役割分業は具体的にどう変わったのでしょうか?
国際社会調査プログラム(ISSP)の「家族と性役割に関する意識調査(2012年)」によると、調査に参加した33ヶ国中、日本男性の家事分担率は18.3%とダントツの最下位であったと報告されています。つまり、共働き世帯が増えても、女性側の家事の負担は減っていないのです。
どうしてこんなにも日本男性の家事参加率は低いのか。OECD(経済協力開発機構)が2020年にまとめた生活時間の国際比較データによると、男性の有償労働時間はOECD平均は317分であるのに対し、日本男性平均は452分と非常に長くなっています。「日本男性は仕事の時間が長いから家事に割く時間がそもそもない」という物理的な問題が一つの要因となっているのかもしれません。
では、男性の労働時間が短くなれば家事参加率は上がるのか?というと、そう単純な話ではないのがこのテーマの難しいところです。日本ではいまだ「男は仕事、女は家庭」と いう性別役割分業の規範が根強く残っており、共働き夫婦(あるいは家族)のあり方、つまりアイデンティティの観点からも役割分業について考える必要があるのです。
家事はちゃんとしなければならないのか
これまで主に女性が担ってきた「家事」「育児」の役割は無償労働に位置付けられ、その社会的価値すらも十分に評価されてきたとは言い難い状況にあります。それでも、家事・育児を担う女性の多くは、それらを「ちゃんとこなそう」、むしろ「ちゃんとしなければならない」とさえ思ってしまう現状があります。
それはなぜなのか。
たとえば、凝った手作りごはんを作る家庭は「ちゃんと家事してる」になり、手作りしない家庭は「ちゃんと家事してない」という印象になっていませんか?もっというと、「ちゃんと家事や育児をこなしている女性=いい母親」という評価になっていませんか?
日本では、家事や育児が丁寧であればあるほど礼賛される文化があります。そのため、多くの女性にとって「家事や育児をちゃんとする」というのは、妻としての、母としてのアイデンティティの確立なのです(=家庭という小さな社会で得られる自己肯定感の一つ)。
手作りの家庭料理=ヘルシー、という神話
「ちゃんと家事」の代表格である炊事には、世の中の大きな誤解があります。
家庭料理の方がヘルシー、体によい、と考える人は多いですが、外食や中食よりも家庭料理の方が健康的であるという科学的根拠はありません。たしかに、外食は塩分が多くなりがちで、野菜が不足しやすい傾向があります。
しかし、たとえ家庭料理であっても、塩分や栄養バランスに配慮した食材選びや調理をしなければ同じこと。外食でも家庭料理でも、健康づくりという意味で大事になるのは「食べ方」や「選び方」なのです。
管理栄養士である私でも、栄養バランスに配慮しながら残り食材を上手に使い、複数の品を飽きのこない味付けにするのは一苦労です。
一方で、外食や中食でも、ヘルシーな食事をするための選択肢はかなり増えています。「栄養」を仕事にする私でさえ、外食や中食を上手く活用する方が家事の手間が省けて、栄養バランスのあれこれに悩む必要もないので、意識労働の節約になっていいのでは?と思うほどです。
炊事を担うということは、家族の健康を担うということ。だからこそ、その担い手となることの多い女性には、手作り家庭料理に固執することなく、外食や中食・外注などを含む幅広い選択肢の中で、自分自身にとっても家族にとっても、よりヘルシーな(健康的な)選択をしてほしいと願っています。そしてその賢い選択――あらゆる選択肢を使いこなすこと――「いい母親」の象徴となるように、家事のあり方そのものを変えていきたい。「ママの休食」というサービスを通して、そんな世界を実現したい、と私は思っています。
スマートでヘルシーなワークライフの実現へ
バブル崩壊を機に、家事や子育てを専業とする女性よりも、仕事と兼業している女性は増えています。しかし、家事や育児、そして仕事の両立は決して容易いことではありません。だからこそ大事なのは、無償労働にしても有償労働にしても、「生産性を高め、自由でゆとりのある時間を増やし、その時間を家族や自身のために還元する」ことです。
無償・有償含め、夫婦間の労働は何のために存在しているのか。それは紛れもなく、家族のためであり、自分自身のためです。無理をして家族や自分と向き合う時間が失われてしまっては、本末転倒です。
最後になりますが、私たちのプロダクト/サービスは、家事や育児の生産性を高める手段として大きく貢献できると思っています。今回は、家事参加率が女性に偏っているという日本の現状を踏まえてお話ししましたが、男性が家事を担う場合も同様に、「如何に生産性を上げて家族の時間を増やすか」という命題は変わらないと思っています。
サービスを開始してまだ半年ほどですが、「スマートでヘルシーなワークライフの実現」の一端を担うことができるよう、これからもより一層成長していきます。スマートでヘルシーなワークライフの実現は、私たちのアイデンティティです。