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#004 『いけない』…忙しがっている時にミステリーを読んでいけない。

珂の髪の毛は風で掻き上げられ、ひたいも耳の上も、ぜんぶ太陽に照らされていた。隣を走る山内の汗ばんだ顔も、真っ白に光っている。それを見ていると、さっき言いたかった言葉をやっと思い出した。
「平和っていうか」
山内も太陽に鼻先を向けて声を飛ばす。
「ね、平和っていうか」

『いけない』道尾秀介 著
「終章 街の平和を信じてはいけない」より


怪しすぎる街…  蝦蟇倉市(がまくらし)を舞台として複数の殺人事件が起こる。
全部で4章に分けられ、章の最後にはそれぞれ1枚の「写真」が表れる。
読者はその「写真」からのメッセージを受けとってさらに謎に思いを馳せる。

普段ミステリー小説を読まない自分だったけど、読書会Lectioに参加するようになってから、ミステリーを楽しむことができるようなっている。読書趣味の世界に新しい部屋が増えたような感じがして嬉しい。

ミステリーは、ミスリードさせられないように踏ん張りながら、同時にミスリードさせられてしまうことに快感があるんだなと思う。

読みながら挿絵の地図を見て位置関係を確認したり、登場人物の語りを疑ったり。
すごい頭を使う。気がついたらヘトヘトになるほど熱中している自分がいる。


仕事を片付けましょう。心配ごとを整理して身軽になりましょう。
そして休日に静かな場所に身を置きましょう。
コーヒーを淹れて甘いお菓子を用意したら完璧です。

あとはミステリー小説の世界にどっぷり浸かるだけです。
忙しがっている時にミステリーを読んでいけない。



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