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新人

最近、ビストロのバイトを始めた。
今年は成長が目に見えて分かる1年とするぞ。
そう誓ったわたしは、まだ知らない世界に足を踏み入れる必要があると思った。

そこで、大人の趣味の象徴ともいえるワインの1つや2つ、違いが分かるようになれば格好が付くだろうと若干、中二病ともいえる理由で始めたのだ。

わたしのバイト先は、個人営業の小さなお店である。全部で20席ほどで、テーブル席が14つとカウンター席が6つ。

聞くところによると、このお店は今年で10年目だそうだ。
小さなお店とはいえ、飲食店の10年の生存率は10%程度と言われている為、なかなかの腕前なのだろう。

迎えたバイト初日、客は1人も来なかったので殆どオリエンテーションに充てられた。
赤ワイン、白ワイン、スパークリングワイン、ワインカクテル。
大衆居酒屋にしか慣れていない私は、さっぱり味の違いがわからない。銘柄も聞きなれないカタカナの並びに、得意だった語呂合わせも通用しないのだ。

一通り、オリエンテーションを終えると今日は暇なのでと定刻より早く上がらせてもらった。

そう、これこれ。
私が面接の時にこのお店に即決した理由は、
暇な日は早く上がらせてくれるスタイルというところだ。
私はせっかちなので、やることがないのにダラダラと時間に縛られたくない。
お金を稼ぎに来ることが第一の目的なら話は
別だが、私はそうではないため大変助かる方針なのである。

そして既に5日ほど出勤している
段々と動線もわかってきて、邪魔にならない程度には働けている。

ただ、一つ気になっていることがある。
それは出勤人数だ。

基本的に、適正なスタッフの配置数は「席数÷10」と考えられているらしい。なのでこのお店の場合2人いればまわせることになる。

だがそんな小さな店に、シェフ1人、バイト2人の3人出勤が基本スタイルなようだ。

その為、いらん横移動が多い。
真ん中の人、1歩で料理をスライドしてきてる。いるか?そこのポジションとなっている。
でも今はその真ん中の人の手が空いているお陰で色々聞けて助かっているところはある。

まだ、5回ほどだが1番混んでいたときで、
7〜8席埋まっていたくらいなので、まだこのお店の「忙しい」を体験できていない。

基本的には暇なので、店内の黒板を見ながらぶつぶつとワインの銘柄を覚えている。

カベルネ・ソーヴィニヨン
これは結構好きな響きだ。

それにしても大変ゆったり時間の流れる店である。BGMで流しているBeatlesのlet it beが0.5倍速に感じる。

わたしは今日もエプロンを纏って新人をしにいくのだ。

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